自社ECのマーケットプレイス化、アパレル企業でトレンドに

ファッション企業がオンラインマーケットプレイスに投資している。それにより、同プラットフォームで商品を販売する小規模ブランドの流通網を拡大する一方で、自社の収益の改善もはかっている。

いままさに、ブランドがSpotify(スポティファイ)プレイリストを公開し、カスタマーグループがソーシャルプラットフォームに形成されている。そんななか、マーケットプレイスが彼らに提供するのは、利己的ではない、信頼性が感じられるやり方で、コミュニティのニーズに応え、コミュニティとつながるための新たな手段だ。

「自社の事業を見直すブランドが増えている。『インベントリー(在庫)ではなく、オーディエンスこそが当社のビジネスだ』といったようなものだ」と、フェリックス・キャピタル(Felix Capital)の創業者でマネージングパートナーのフレデリック・コート氏は語る。同社はラグジュアリーマーケットプレイスのファーフェッチ(Farfetch)や、マーケットプレイスソリューションプロバイダーのミラクル(Mirakl)に投資を行っている。「彼らがそのプロダクトを所有しているかどうかではない。多少なりとも利鞘を稼いでいるかどうかでもない。いま大切なのは『当社は顧客にとって意味のあるものを売ることができるか?』だ」。

インベントリーの余白を埋める

コンテンポラリーファッションブランドのジョイー(Joie)とエキップモン(Equipment)、カレントエリオット(Current/Elliott)からなるコレクテッド・グループ(The Collected Group)で最高経営責任者と最高クリエイティブ責任者を兼任するジェームズ・ミラー氏は、同社のeコマースサイトのひとつでマーケットプレイスをローンチする準備を進めていると話す。ターゲットとするオーディエンスは同じだが、同社インベントリーの余白を埋めるブランドがフィーチャーされる。コレクテッド・グループは主にアパレルにフォーカスしているため、たとえばアクセサリーブランドなどが同マーケットプレイスに入る予定だという。このマーケットプレイスがサポートするのは、流通の多様化をめざすと同時に、コレクテッド・グループのサイトを同社顧客にとってのワンストップショップにしてくれる若いブランドだ。

ファッション小売業界全体で、マーケットプレイスの発足・拡大がトレンドになりつつある。マーケットプレイスはいま、従来型の小売に依存し、置き去りにされているブランドにとって魅力的な選択肢となっている。

英国のオンラインファッション小売企業、エイソス(Asos)は今年4月、80のブランドを導入し、800のビンテージストアやインディーレーベルの13万スタイルの商品が販売されている自社のエイソス・マーケットプレイス(Asos Marketplace)を拡大した。2019年4月から100%の増加となる。これらのブランドのなかには、通常はロンドンのトゥルーマン・マーケッツ(Truman Markets)を介して販売を行うビンテージ専門店もあった。エイソスは現在、自社プラットフォームの新規・既存ブランドに対し、20ポンド(約2750円)の月額料金を一時的に免除している。その一方で同社は、すべての販売に対して20%の手数料を徴収しているという。

エイソス・マーケットプレイスのほかにも、先日ローンチしたFacebookショップ(Facebook Shops)イエス(The Yes)がある。いずれも梱包・発送の責任はブランドパートナーが負っている。

ドロップシッピングモデル

複数のブランド創業者が、ドロップシッピングパートナーとしてマーケットプレイスや小売企業のサイト(彼らの多くが名前をあげたのがノードストローム[Nordstrom]だった)へ参入する計画を進めていると、筆者に語ってくれた。どちらのモデルも、卸売モデルを介した販売でブランド認知を提供する一方で、注文を受けた商品をデパートに引き渡すというリスク(たとえば、売れ残ってしまった場合、後日返品される可能性がある)を取り除いてくれる。そしてもちろん、注文のキャンセルというリスクもある。

ジェーン・ウィンチェスター・ジュエリー(Jane Winchester Jewelry)の創業者、ジェーン・ウィンチェスター・パラディ氏は、2017年後半のブランド立ち上げ以降、オンラインプレゼンスの獲得を主な目的として、タッカーナック(Tuckernuck)をはじめとするさまざまな小売パートナーとドロップシッピングを行ってきたと話す。

「小規模ブランドとしては、できるかぎりインベントリーを自分たちで管理できたほうがいい」と、ウィンチェスター・パラディ氏は語る。「(ドロップシッピングモデルには)非常に満足している。今後ももっとやっていきたい」。

オーストラリアのアクセサリーブランド、ベルロイ(Bellroy)の共同創業者で最高執行責任者のリナ・カラブリア氏は4月、ドロップシッピングモデルによるNordstrom.comでの販売について、ノードストロームと話し合いを行っていると語った。「当社は世界各地の小売企業とドロップシッピングを行っている。その機会があれば喜んで受け入れるつもりだ」と、同氏は語った。「すべてのインベントリーをできるかぎり、きちんと管理すること。当社はそれを望んでいる」。

その一方で、ファッションビジネスの創業者のなかには、ドロップシッピングパートナーシップやマーケットプレイスに付随するブランド認知は割に合わないと話す人物もいる。「苦労した挙句にマージンを捨てる行為で、我々の理に適っているとは思えない」と、匿名を条件に語ってくれた。

世界のeコマース総売上の58%

ドロップシッピングとマーケットプレイスの大きな違いは、顧客の見方にある。マーケットプレイスを介して注文する場合、顧客は通常「~が発送します」などのコールアウトにより、マーケットプレイスではなく、その企業から商品を買おうとしていることを知らされる。買い物中でなければ、内側のラッピングと箱の両方に販売元企業のブランディングが施された荷物を受け取る時に、それを知る。一方、ノードストロームによるドロップシッピングの場合、フィーチャーされるのは小売企業のブランディングだ。どちらのモデルでも、ブランド側で販売した商品の梱包・発送を行わなければならない。

いうまでもなく、マーケットプレイスは何も目新しいものではない。デジタル・コマース360(Digital Commerce 360)が行った分析によれば、2019年のマーケットプレイス上位100の売上は、世界のeコマースの総売上の58%を占めたという。Amazonやアリババ(阿里巴巴)、ザランド(Zalando)を含むこのグループは、世界のマーケットプレイス売上の約95%を構成している。

ファッション企業に向けたマーケットプレイスモデルを、コート氏は委託パートナーシップになぞらえた。ホスト企業にとって、インハウスでつくられる商品を販売することと、ほかのブランドの商品をアフィリエイトリンクを介して販売することのあいだに金銭的メリットがあると、同氏はいう。

企業に対するミラクルのピッチ

マーケットプレイスソリューションプロバイダー大手のミラクルは、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)やギャラリー・ラファイエット(Galeries Lafayette)をはじめとするファッション系クライアントを抱えている。同社は1月、2019年に前年比77%の売上成長を達成、自社のマーケットプレイスを介して15億ドル(約1637億円)相当の商品を販売したと発表した。4月には同社クライアントのGMVは前年比300%の成長となった。ミラクルは2019年に、49の新規クライアントを獲得し、ベイン・キャピタル・ベンチャーズ(Bain Capital Ventures)がリードする7000万ドル(約76億4000万円)のシリーズCラウンドを完了した。

マーケットプレイスを立ち上げることにより、企業は商品提供を素早く拡大し、ワンストップオンラインショップになり、より多くのデータを集めて、顧客がほかにどんな商品を求めているのかを把握できるようになる。これが企業に対するミラクルのピッチだ。

すでに顧客がそのセンスとキュレーションに、共感・信頼できると確信していることを考えると、ブランドがマーケットプレイスをローンチすることは理にかなっていると、コート氏は結論づける。

「そのブランドがスニーカーで知られていないなら、自社の衣類に合う他社のスニーカーをキュレートすればいいのではないか」と、コート氏は語る。そして、顧客にとっては、彼らが買おうとしている商品がそのブランドの店舗から届くのか、ほかのブランドの店舗や倉庫から届くのか、といったことはどうでもいいと付け加える。「重要なのは、彼ら顧客の(サイト)体験に一貫性があるかどうかだ」。

デパートがそこをめざすのは当然

マーケットプレイスをホストする側はインベントリーを抱えていない。そのため、彼らが仕入れ、保管できるものにサービスを制限する必要はない。また彼らは、新しい商品やカテゴリーをオーディエンスに紹介することに付随する金銭的リスクも回避している。したがって、実店舗を取り巻く現在の課題はもちろん、ブランドが持つ消費者との関係やリーチを考えると、高級デパートがそこをめざすのは当然のことだと、コート氏は語った。

Jill Manoff (原文 / 訳:ガリレオ)