オンライン 家具のD2Cブランドであるサバイ・デザイン(Sabai Design)の共同創業者、ファンティラ・ファタラプラシット氏とケイトリン・エレン氏は、2年前に同ブランドを立ち上げたとき、家具のアイデアを、インスタグラムでクラウドソーシングすることを決めた。
オンライン家具ブランドであるサバイ・デザイン(Sabai Design)の共同創業者、ファンティラ・ファタラプラシット氏とケイトリン・エレン氏は、2年前に同ブランドを立ち上げたとき、家具のアイデアを、インスタグラムでクラウドソーシングすることを決めた。
サバイの最初のコレクションは、ソファとセクションソファで構成されていた。2020年9月、このコレクションを正式にローンチする前、ふたりはインスタグラムに目を向けた。その理由は、オーディエンスを増やすためだけでなく、最初の家具コレクションをデザインする過程で、顧客のフィードバックを得るためだったという。
ファタラプラシット氏とエレン氏が注目したのは、インスタグラムのストーリーズに備わっているアンケート機能だ。これを使い、ふたりはデザインについて、約5000人のフォロワーに意見を求めたという。なお、具体的にふたりがフィードバックを求めたポイントは、アームの太さや脚のスタイル、布地といった特徴についてだ。こうした手順を踏んだことで、同社は設立間もない会社が、初期に犯してしまいがちな製造ミスを避けることができたという。またふたりは、もしあらゆる判断を創立者ふたりの個人的な好みに基づいて下していたら、そうしたミスを犯していただろうと述べた。
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サバイが実施したアンケート調査は、コアな顧客から即座にフィードバックを得るのに効果的な手段であった。これは、創業者たちがプロダクトデザインや宣伝メッセージを洗練させるのに、非常に役立ったのだという。ファタラプラシット氏は、「インスタグラムのアンケート調査を行っているのは、ブランドをローンチした際のリスクを、最小限に抑えることが可能だと考えたからだ」と述べる。「多くの消費者が自分の意見を述べたがっている。彼らの熱量を参考にしないのは、チャンスを逃すことと同じだ」。また、続けて同氏はこうした手法を、アイデアをクラウドソーシングする「もっとも簡単な手法だ」と形容する。
なくてはならないツール
彼らの商品は、295ドル(約3万円)のオットマン(足乗せ用ソファ)から、1395ドル(約15万円)のセクションソファまで多岐にわたる。12月第1週、同社は先行予約期間を終了し、一般向けにeコマースの展開をはじめた。
これまで同社は、過去12カ月にわたりソーシャルメディア上で顧客ベースを成長させてきた。具体的な取り組みとしては、インフルエンサーとの提携やオーガニックなマーケティング・キャンペーンなどだ。そのおかげで、10月の時点で同社のインスタグラムアカウントのフォロワーは、前年比800%も増加したという。ただし、売上高は公表されていない。
インスタグラムは彼らにとって、顧客データを集めるためになくてはならないツールとなっている。最初の発売前アンケート調査が実施されたのは5月。なお、その内容はソファの色に関するものだったという。その後、チームは色をさらに絞り込むために第2弾のアンケート調査を実施。インスタグラムユーザーに人気があった色は、先行予約の売り上げ結果とも対応していた。たとえば、シーフォーム(海の泡)色のプロダクトは、先行予約販売収益の25.49%を占め、アンケート調査でもっとも人気があった色だ。一方、マスタード色は23.53%、ダスティ・ローズ(灰色がかかったバラ)色は21.57%だったという。その後、同社はこれら3つの人気色を積極的に展開すると同時に、回答者の71%が気に入らないと答えたラベンダー色のような、不人気な色を排除した。
もちろん限界もある
一方、顧客の意見を考慮することは、限界もあるとふたりは認めている。「デザインというのは、しばしば意見が分かれることがあるからだ」とエレン氏は述べる。ソファのデザインであれば、多くの場合回答は同じような内容になるが、ラウンジチェアのような複雑なプロダクトの場合、回答をいつまでも収集しながら製造していくのは難しい。
「コミュニティからの意見や提案は重要だが、製造工程における制約も考慮する必要がある」と、エレン氏は述べる。たとえば、無毒性の生地や無化学処理、接着剤を使用しないことを約束すると、防汚性を持つ家具を作ることが不可能になる。
しかし、一連のアンケート調査を実施したことは、彼らのブランドが目指す持続可能性の実現というミッションを、はやい段階で体現するのにも役立った。「アンケート調査で、ある子を持つ女性顧客から、プロダクトの素材が持っていたり、処理過程で発生する毒性についての問い合わせが多くあった。こうしたポイントは正直なところ、問合せがあるまでそこまで考慮していなかった」と、ファタラプラシット氏は述べた。
小売分析プラットフォームを展開する、ファースト・インサイト(First Insight)のCEO兼創設者、グレッグ・ペトロ氏は、多くの小売企業にとって、コミュニティの声に耳を傾けることは、新サービスを立ち上げる上で重要だと述べる。「製品の企画から製造までの期間が長く、一つひとつの在庫あたりの投資が大きい家具業界において、コミュニティは大きな価値がある」。
最適な実験場
またペトロ氏は、インスタグラムの膨大なユーザーベースの活用は、彼らから貴重なインスピレーションを引き出すための賢い戦術でもあると語る。Facebookは、今年展開をはじめた3Dデザイン用のツールも含め、フォロワーとブランドが繋がるための新しいツールを次々とローンチしている。ペトロ氏によると、インスタグラムを利用することで、ブランドは「設計・開発プロセスに対する顧客からのフィードバックをこれまで以上に迅速に得る」ことができるという。これにより企業は、「詳細な設計とサンプル製造に時間や資金を投入する前に」パフォーマンスの低いデザイン要素を特定し、排除することができる。
絶えずさまざまな情報が流通するいまの時代、ブランド各社は重要な情報とノイズをしっかり分離しなければならないと、ペトロ氏は強調する。多くのブランドが、顧客に関する情報を簡単に収集する新しい方法を見つけようとしている。たとえば、H&Mのようなリテーラーたちは、ますます製品のアイデアや新製品のリリースのため、インスタグラムフォロワーからの意見を取り込んでいる。
「インスタグラムは、人々の好みを大規模にテストするのに最適な場所だ」とエレン氏は結論づける。実際、サバイは今年中にローンチする新しい椅子の色についても、フォロワーたちにフィードバックを求めたばかりだ。
「コミュニティの協力を得たおかげで、最初のソファのデザインは大きく成功した」と、エレン氏は述べる。「いまでは、デザインに対する好意的な評価しか存在しない、我々は顧客のセンスを心から信じている」。
[原文:Why DTC furniture brand Sabai uses Instagram stories for product development]
GABRIELA BARKHO(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)