大手消費財ブランドのクロロックス(Clorox)が、D2Cスタートアップが活用してきた戦略を推進している。同社は昨年、D2Cのサプリブランド、オブジェクティブ・ウェルネス(Objective Wellness)をローンチ。現在、同ブランドにおいてクロロックスは、スタートアップとの提携を積極的に進めている。
大手消費財ブランドのクロロックス(Clorox)が、D2Cスタートアップ活用の戦略を推進している。
同社は昨年、D2Cのサプリブランド、オブジェクティブ・ウェルネス(Objective Wellness、以下オブジェクティブ)をローンチ。同ブランドは、最小限の包装とオンラインマーケティング戦略を特徴としており、現在、ほかのスタートアップ企業との提携を積極的に進めている。
11月第4週、オブジェクティブは、グラビティブランケット(Gravity blanket)で有名な、グラビティ・プロダクツ(Gravity Products)とのコラボレーションプロダクトを発表した。両ブランドはそれぞれのWebサイトで、ビューティー・スリープ・キット(Beauty Sleep Kits:美しくなれる睡眠キット)を発表した。同キットには、グラビティの重みをもたせた睡眠促進マスク、オブジェクティブの心を落ち着かせるチョコレート、そして共同ブランドでの販売となる、ドリーム・スキン・ナイト・セーラム(Dream Skin Night Serum)が含まれている。
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クロロックスは今回の提携に先駆けて、オブジェクティブをはじめとする新ブランドの立ち上げだけでなく、社内でD2C部門を構築している。コロナ禍でも収益増を達成しているクロロックスだが、現在、購入商品から収集したデータを効果的に活用して、さらにユーザーと密な関係を構築しようと取り組んでいる。
オブジェクティブにとって、D2Cスタートアップとの提携は、新しいマーケティング試作を試す機会にもなる。同ブランドの親会社クロロックスは、今夏に行われたFacebookの広告ボイコット運動に参加した企業のひとつだ。クロロックスのCMOは、アドウィーク(Adweek)に対し、オブジェクティブをはじめとするブランドのFacebookおよびインスタグラムへの広告出稿を年末まで凍結すると公表している。
試作を試す機会
クロロックスのD2C担当バイスプレジデント、ビビアン・チャン氏は、米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)の取材に対し「ブランド提携は当初から我々が公言してきた取り組みだ」と語る。実際オブジェクティブは、これまでも数回グラビティと連携してプロジェクトを実施している。昨年のクリスマスシーズンに、両ブランドは共同でプロダクトのプレゼント企画を開催。さらに2月、グラビティがニューヨークのバークレイズ・センター(Barclays Center)で、スヌーズルーム(snooze room)というポップアップを出店した際は、オブジェクティブのプロダクトも同時に展開している。
このように、オブジェクティブがグラビティとの提携にとりわけ熱心な理由について、チャン氏は「グラビティは新しいことを試すのに積極的だからだ。我々はこれまでも、さまざまな取り組みを実施してきた」と述べている。一方、グラビティのCEO、マイク・グリーロ氏はモダンリテールに対し、「毛布やアイマスクだけでなく、さまざまな健康関連のプロダクトを打ち出していきたいと考えており、その点においてオブジェクティブは素晴らしいパートナーだ」と語る。
なお、チャン氏は「オブジェクティブとグラビティのコラボレーションは、ビューティー・スリープ・キットの売れ行きにもよるが、来年の上旬ごろまでは続くのではないか」と語る。現在、ドリーム・スキン・ナイト・セーラムはオブジェクティブが製造しており、グラビティはそれを「通常の卸売価格よりも割安に仕入れている」と同氏は明かす。なおチャン氏は、今回のコラボレーションでは、インフルエンサーをメインにマーケティング施策を構築していると語る。具体的には、両ブランドがこれまで提携してきたインフルエンサーを起用し、メールでのプロモーションやギフトガイドにプロダクトを掲載するといった取り組みも視野に入れているという。
コラボに積極的なスタートアップ
コラボレーションを通じたマーケティング施策は、D2Cスタートアップのあいだで頻繁に採用されてきた。これまでも、マジック・スプーン(Magic Spoon)とチョバニ(Chobani)が実施したような他社プロダクトのプレゼント企画や、グロッシアー(Glossier)と犬の玩具ブランド、バーク(Bark)のコラボレーションのように、共同プロダクトの展開などが行われてきた。
こうしたコラボレーションは、自社とカスタマー層が似つつも、直接的な競合相手ではない企業同士で進められる場合が多い。それによって、新規顧客の開拓といった新たな可能性に繋がるからだ。
こうしたスタートアップの動きに、大手消費財ブランドであるクロロックスも触発されたのかもしれない。
D2C戦略を強化する消費財ブランドたち
同社はコロナ禍で需要を大きく伸ばしたブランドのひとつだ。同社の名を冠したクリーニング関連のプロダクトや、パーソナルケアブランドのバーツビーズ(Burt’s Bees)、そしてビタミン剤ブランドのネイチャーズバイタリティ(Natural Vitality)などが好調で、前年比で27%の収益増を達成している。しかしそんななかでも、クロロックスやペプシコ(PepsiCo)といった消費財分野のコングロマリットは、D2Cブランドや新たなeコマースサイトのさらなる強化に関心を寄せている。たとえばペプシコは、オンラインの売上が好調なことを受け、コロナ禍中に新たにふたつのeコマースサイトを立ち上げている。
クロロックスのD2C部門で、バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるジャクソン・ジェヤナヤガム氏は、同部門が「オブジェクティブの立ち上げ支援だけでなく、独自のeコマースサイトの構築と、カスタマーデータ活用の改善に寄与するような開発を進めてきた」と、以前モダンリテールに語っている。
数多くの消費財スタートアップと提携しているフィンテック企業、サークルアップ(CircleUp)の共同経営者、アディティ・ダッシュ氏はモダンリテールに対し「消費財分野の大手ブランドは、カスタマーと直接関係を築くことを非常に強く望んでいる」と指摘。同氏は、D2Cブランドの立ち上げにより消費財企業は、「カスタマーが実際に何を購入しているのか見えるようになる。一方、フォーカスグループでは、カスタマーが何を購入しようと考えているか、使おうと考えているかというところまでしか分からない」と語る。
FB、IGへの広告出稿再開時期はまだ不明
チャン氏によると、オブジェクティブはグラビティとのコラボレーション以前から、インフルエンサーとの提携を模索してきたという。クロロックスは、Facebookやインスタグラムでの広告停止後、特にYouTubeでインフルエンサーを積極的に活用してきた。Facebookやインスタグラムでの広告費が浮いたことで、オブジェクティブは検索やディスプレイ広告への投資を強めたのだ。
なお、同氏はオブジェクティブとクロロックスが、Facebookやインスタグラムでの広告展開を再開する時期について明言していない。現在、同社のCMOやステークホルダーがFacebookに対し、「Facebookやインスタグラムへの広告出稿を再開するにあたり、確認したい事項について説明を聞いている」という。
チャン氏はオブジェクティブが今後掲げていく重要分野として「食品」および「女性の健康」というふたつを挙げ、それをもとにさらなるコラボレーションを検討していくと述べている。「共同で開発できるプロダクトはないか模索していきたい」とチャン氏は語り、次のように述べた。「オープンにこういった話し合いを続け、どこへ進むべきかを見極めることが重要だ」。
[原文:Why Clorox’s DTC brand Objective is partnering with Gravity Blankets]
ANNA HENSEL(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)