- シルク・ド・ソレイユが公式インフルエンサーネットワークを展開し、所属アーティストを使ってブランデッドコンテンツの制作を開始。
- インフルエンサーマーケティングが成熟期を迎えるなかで広告主に提案しており、アーティストのフォロワー数やエンゲージメント率に基づく柔軟な価格設定を行っている。
- パンデミックの影響で壊滅的な打撃を受けたものの、新たな収入源を模索するとともに、ブランドパートナーに新しい機会を提供することを期待している。
インフルエンサーマーケティングはすでに多くのマーケターの戦略に不可欠な要素となっている。こうした広告費の一部を獲得し、広範なアーティストネットワークを収益化につなげようと、シルク・ド・ソレイユ・エンターテインメントグループ(Cirque du Soleil Entertainment Group)は10月、公式インフルエンサーネットワークの展開を開始した。
約40年の歴史をもつ同エンターテインメントグループの新たな試みは、1500人以上のアーティスト(全員のソーシャルメディアフォロワー数の合計は3500万人を超える)に対して、ブランドが報酬を支払ってソーシャルファーストコンテンツを制作することを可能にするものだ。なお、アーティストに対する支払額や、シルク・ド・ソレイユ側の取り分がどの程度になるのかは明らかにされていない。
「我々は、個々のアーティストが抱えるエンゲージメントとフォロワーを活用して、唯一無二のものを創造できる」と、シルク・ド・ソレイユのグローバルブランドおよびソーシャル担当責任者であるクリストファー・バウワー氏は説明する。さらに同エンターテインメントグループは、「我々は新たなタイプの製品を構築し、さまざまな要素や、さまざまなもののコレクションの一部としてブランドパートナーに提供することで、ブランドスポンサーシップへの発展が期待できる」と語った。
逆境からの挑戦
DIGIDAYリサーチによれば、今年第1四半期、エージェンシーの76%はマーケティング予算の少なくともごく小さな割合をインフルエンサーマーケティングに配分している。世界規模で見ると、広告主が今年インフルエンサーマーケティングに投資する額は308億1000万ドル(約4兆6220億円)に達すると予測される。
パンデミックにより壊滅的な打撃を受けたシルク・ド・ソレイユがこれに参入し、新たな収入源を獲得しようと考えるのは自然な流れだ。同グループはわずか48時間のうちに売上が10億ドル(約1500億円)からゼロとなり、2020年に破産申告の手続を行っている。
バウワー氏によると、シルク・ド・ソレイユは現在、航空会社のエア・カナダ(Air Canada)や飲料メーカーのリキッド・デス(Liquid Death)をはじめとする数十社にインフルエンサーマーケティングの提案を行っているという。提案先のブランドの多くは、すでに同グループのアーティストをコンテンツに起用していると、同氏は補足する。たとえばエア・カナダは、シルク・ド・ソレイユのビッグ・トップ・ショーおよびアリーナ・ショーの公式航空会社としてパートナーシップを結んでおり、シルク・ド・ソレイユのアーティストはエア・カナダの動画コンテンツ制作に携わっている。
価格はスライド制であり、フォロワー数、エンゲージメント率、およびコンテンツ内でアーティストが何をするかによって決まる。したがって、広告主はマイクロインフルエンサーに対しては数百ドル、よりフォロワー数が多くエンゲージメント率が高いアーティストに対しては数千ドルを支払うことになるだろう。契約は短期も長期も可能であり、アーティストは通常の報酬に加え、契約金の一定の割合を受け取るようだ。
「我々は非常にオープンに考えており、さまざまなタイプのブランドに広く機会を提供したい」とバウワー氏は述べ、B2B広告主も視野に入れていることに言及した。「価格については一定の流動性を維持し、ブランド側のニーズに対応するとともに、最終的には我々のアーティストにとっても、活動を支えるエキサイティングな機会となるようにしたい」。
ネットワークにはステージに立つアーティストだけでなく裏方のクリエイティブスタッフも参加でき、またフルタイムの社員に加えて、同グループと6カ月以上にわたる契約を結んでいるアーティストに参加資格がある。また、契約に競業禁止の条件は含まれておらず、アーティストが企業からの直接の接触を通じてインフルエンサーマーケティングを行うことも自由であると、バウワー氏は説明する。[続きを読む]
- シルク・ド・ソレイユが公式インフルエンサーネットワークを展開し、所属アーティストを使ってブランデッドコンテンツの制作を開始。
- インフルエンサーマーケティングが成熟期を迎えるなかで広告主に提案しており、アーティストのフォロワー数やエンゲージメント率に基づく柔軟な価格設定を行っている。
- パンデミックの影響で壊滅的な打撃を受けたものの、新たな収入源を模索するとともに、ブランドパートナーに新しい機会を提供することを期待している。
インフルエンサーマーケティングはすでに多くのマーケターの戦略に不可欠な要素となっている。こうした広告費の一部を獲得し、広範なアーティストネットワークを収益化につなげようと、シルク・ド・ソレイユ・エンターテインメントグループ(Cirque du Soleil Entertainment Group)は10月、公式インフルエンサーネットワークの展開を開始した。
約40年の歴史をもつ同エンターテインメントグループの新たな試みは、1500人以上のアーティスト(全員のソーシャルメディアフォロワー数の合計は3500万人を超える)に対して、ブランドが報酬を支払ってソーシャルファーストコンテンツを制作することを可能にするものだ。なお、アーティストに対する支払額や、シルク・ド・ソレイユ側の取り分がどの程度になるのかは明らかにされていない。
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「我々は、個々のアーティストが抱えるエンゲージメントとフォロワーを活用して、唯一無二のものを創造できる」と、シルク・ド・ソレイユのグローバルブランドおよびソーシャル担当責任者であるクリストファー・バウワー氏は説明する。さらに同エンターテインメントグループは、「我々は新たなタイプの製品を構築し、さまざまな要素や、さまざまなもののコレクションの一部としてブランドパートナーに提供することで、ブランドスポンサーシップへの発展が期待できる」と語った。
逆境からの挑戦
DIGIDAYリサーチによれば、今年第1四半期、エージェンシーの76%はマーケティング予算の少なくともごく小さな割合をインフルエンサーマーケティングに配分している。世界規模で見ると、広告主が今年インフルエンサーマーケティングに投資する額は308億1000万ドル(約4兆6220億円)に達すると予測される。
パンデミックにより壊滅的な打撃を受けたシルク・ド・ソレイユがこれに参入し、新たな収入源を獲得しようと考えるのは自然な流れだ。同グループはわずか48時間のうちに売上が10億ドル(約1500億円)からゼロとなり、2020年に破産申告の手続を行っている。
バウワー氏によると、シルク・ド・ソレイユは現在、航空会社のエア・カナダ(Air Canada)や飲料メーカーのリキッド・デス(Liquid Death)をはじめとする数十社にインフルエンサーマーケティングの提案を行っているという。提案先のブランドの多くは、すでに同グループのアーティストをコンテンツに起用していると、同氏は補足する。たとえばエア・カナダは、シルク・ド・ソレイユのビッグ・トップ・ショーおよびアリーナ・ショーの公式航空会社としてパートナーシップを結んでおり、シルク・ド・ソレイユのアーティストはエア・カナダの動画コンテンツ制作に携わっている。
価格はスライド制であり、フォロワー数、エンゲージメント率、およびコンテンツ内でアーティストが何をするかによって決まる。したがって、広告主はマイクロインフルエンサーに対しては数百ドル、よりフォロワー数が多くエンゲージメント率が高いアーティストに対しては数千ドルを支払うことになるだろう。契約は短期も長期も可能であり、アーティストは通常の報酬に加え、契約金の一定の割合を受け取るようだ。
「我々は非常にオープンに考えており、さまざまなタイプのブランドに広く機会を提供したい」とバウワー氏は述べ、B2B広告主も視野に入れていることに言及した。「価格については一定の流動性を維持し、ブランド側のニーズに対応するとともに、最終的には我々のアーティストにとっても、活動を支えるエキサイティングな機会となるようにしたい」。
ネットワークにはステージに立つアーティストだけでなく裏方のクリエイティブスタッフも参加でき、またフルタイムの社員に加えて、同グループと6カ月以上にわたる契約を結んでいるアーティストに参加資格がある。また、契約に競業禁止の条件は含まれておらず、アーティストが企業からの直接の接触を通じてインフルエンサーマーケティングを行うことも自由であると、バウワー氏は説明する。
インフルエンサーは身近にもいる
インフルエンサーマーケティングは成熟期を迎えており、この分野に注目するマーケターはますます増えている。マーケターはインフルエンサーとのあいだで指定広告会社の契約を結び、クリエイターをクリエイティブディレクターとして採用し、パートナーシップを結ぶ前にインフルエンサーやクリエイターの適性を入念に精査するようになっている。
シルク・ド・ソレイユに似た試みとして、一部の小売企業はすでに2020年から、社員にTikTokインフルエンサーになるよう促している。ただし、こちらの目的はブランド契約やスポンサードコンテンツ契約ではなく、採用活動のテコ入れだ。今年に入ってからは、チポトレ(Chipotle)やジェットブルー(JetBlue)といったブランドも同様の動きを見せている。
「ソーシャルメディアで影響力がある社員をすでにたくさん抱えているなら、製品やブランドのマーケティングを行ってリーチを拡大するのに絶好の条件が揃っているということだ」と、デジタルエージェンシーのニューエンジェン(New Engen)のインフルエンサーマーケティング部門であるエーコーン・インフルエンス(Acorn Influence)で製品およびイノベーション担当バイスプレジデントを務めるケリー・ダイ氏は言う。
単なるライブエンターテインメント企業からの脱却
ここ数年、スタッフをインフルエンサーマーケティング戦略に取り込む動きが、採用活動に加え、シルク・ド・ソレイユのようなブランド契約の観点からも活性化している。だが、こうした取り組みを外部エージェンシーとの提携ではなくインハウスで実施するには、ブランドはインフルエンサーコンテンツの監督、締切の管理、クリエイティブブリーフなど、インフルエンサーマーケティングの過程にあるさまざまな業務に携わる必要がある。
これらはブランドにとって大きな負担になるおそれがあり、とりわけ広告主がスピード、スケール、ボリュームを求めており、当該インフルエンサーの活動の場とは別のソーシャルメディアプラットフォームや、屋外広告、CTVスポット広告としてコンテンツを転用することを望む場合には煩雑(はんざつ)になりかねない。
「運用コストはかさむが、結局のところ、これもマーケティングだ」と、ダイ氏は言う。「ブランドは名前を前面に出さなくてはならない。インフルエンサーとどのように協働することが、ブランドとスポンサーにとってもっとも有意義であるのかを理解することが、とりわけニッチコミュニティの場合は重要になる」。
計画が順調に進めば、シルク・ド・ソレイユは新たな安定収入源を獲得し、大きく飛躍できるかもしれない。「我々のブランドパートナーにも新たな機会を提供したい。シルク・ド・ソレイユは単なるライブエンターテインメント企業ではなく、ブランデッドコンテンツ企業でもあり、ブランデッドコンテンツクリエーターにもなり得るのだと、再認識してもらう機会になるはずだ」と、バウワー氏は述べた。
[原文:Why Cirque du Soleil is creating its own influencer network]
Kimeko McCoy(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:島田涼平)