Amazon がラグジュアリーファッションに参入したにもかかわらず、同社のプラットフォームの買い物客は依然としてカジュアルウェアに集中している。シミラーウェブ(Similarweb)のデータによると、このオンラインマーケットプレイスで最大手ブランドのいくつかは、ベーシックやアクティブウェアに特化している。
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Amazonがラグジュアリーファッションに参入したにもかかわらず、同社のプラットフォームの買い物客は依然としてカジュアルウェアに集中している。
シミラーウェブ(Similarweb)のデータによると、このオンラインマーケットプレイスで最大手ブランドのいくつかは、ベーシックやアクティブウェアに特化している。第1位はヘインズ(Hanes)で、2021年の11月までの時点で5億4830万ドル(約625億円)の収益を上げ、4000万点近くの商品を販売した。2位はAmazonのプライベートブランドのアマゾンエッセンシャルズ(Amazon Essentials)で、収益は4億6730万ドル(約533億円)、販売商品数は2331万点だ。上位5つにはアディダス(Adidas)(4億5940万ドル[約524億円]、1189万点)、フルーツオブザルーム(Fruit of the Loom)(3億200万ドル[約344億円]、1954万点)、ギルダン(Gildan)(2億2290万ドル[約254億円]、1458万点)が名を連ねている。
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コロナ禍でカジュアルウェアが爆発的に成長
専門家たちは、Amazonにおけるカジュアルウェアの独占状態が、2つの要素に起因すると主張している。
Amazonにおいては特に、カジュアルウェアのブランドがビジュアルにより重視し、このeコマース巨大企業とパートナーシップを結び、プライム(Prime)による優先配送と簡単な返品の恩恵を受けることで、そのエコシステムに多大な投資を行っている。最近では、パンデミックのなかで、より多くの人々がロックダウンやハイブリッドワークにおいて快適な衣服を買い求めたことから、このカテゴリー全体が爆発的に成長した。プリマーク(Primark)、メイシーズ(Macy’s)、フットロッカー(Foot Locker)に至るまで、さまざまな小売業者がこの1年間の成功について発表している。
同時に、Amazonのデザイナーファッションへのてこ入れも、2020年に立ち上げた招待制のラグジュアリーストアに見られるように、より独占的な体験へと移行した。このストアには現在、オスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar de la Renta)、ムーレ(Mouret)、ラ・ペルラ(La Perla)、アルチュザラ(Altuzarra)、クレ・ド・ポー(Clé de Peau)、エリー・サアブ(Ellie Saab)など、十数ブランドが含まれている。これらのトレンドを合わせると、Amazonでは当分、カジュアルウェアが主役であり続けることになりそうだ。
ラグジュアリーファッションを分離
Amazonファッションでラグジュアリー商品のベンダーマネージャーを務め、現在はeコマースコンサルタントであるエレイン・クォン氏は、「Amazonはカジュアルウェアの方が、2000ドル(約22万8000円)のオスカー・デ・ラ・レンタのドレスよりも、自社プラットフォームで簡単に売れることを知っている」と述べている。
クォン氏によると、Amazonは2015年にハイエンドファッションに手を出そうと試みたあと、実用的なプラットフォームという強みに立ち返るという戦略的決断を行った。同氏は当時、ラグジュアリーアパレルの世界とのつながりを強化するため、同社のニューヨーク・ファッション・ウィーク(New York Fashion Week)へのスポンサーシップに取り組んでいた。そこから6年以上が経過し、同社は少数の高級衣料品ブランドを招待制のラグジュアリーストアに囲い込んだ。クォン氏は、このモデルが、すでに出品者が非常に多い同社のプラットフォームで商品を見つけることがより困難になり、成長を阻害する要因になると以前から勧告していた。
ラグジュアリーファッションを同社の別の巨大マーケットプレイスから切り離すというこの戦略的な移行は、それらの知名度の高い企業が、ブランディングや排他的な外観をより的確にコントロールできるようにするための方法と見られていた。一方で、カジュアルウェアのブランドはAmazonが運用を開始した汎用のツールを活用し、同プラットフォームでさらに成長し続けた。
実際のところ、Amazonは長年にわたってカジュアルウェアをベストセラーとして掲げていた。2018年、購入前に試用できるプライムワードローブ(Prime Wardrobe)サービスを開始したのと同じ年に、同社はアスレジャーアパレルがホリデーシーズンにおける大ヒットだったと発表した。同社は、自社のカジュアルウェアのプライベートブランドであるアマゾンエッセンシャルズ、デイリーリチュアル(Daily Ritual)、グッドスレッズ(Goodthreads)の商品が、マーケットプレイスやプライムワードローブを通じて大きな注目を集めたと強調した。
マーケットプレイスとしての機能の進化
オーガニックコットンのTシャツと下着に特化したAmazonのサードパーティーブランド、オーガニックシグネチャー(Organic Signatures)の創設者兼CEOであるオーレン・キング氏は、Amazonが徐々に、プラットフォーム上で出品者に自社のストーリーを語るための余地を提供するようになったと述べている。オーガニックシグネチャーの昨年の売上高は80万ドル(約9120万円)で、その大部分はAmazonでの売上だ。
同氏は次のように述べている。「自社ブランドと自社について説明するための場所が増えた。6つの画像と、さらに多くのグラフィックや動画をカルーセル形式で表示できるようになった。これは、これまで使用してきたテキスト中心の説明よりもはるかに良いものだ」。
Amazonのプライベートブランドの元販売者で、eコマース小売業者向けのブティック代理店ブラックラベルアドバイザー(Black Label Advisor)の創設者であるジョン・エルダー氏によると、Amazonでさらに長期にわたり販売を行ってきたカジュアルウェアのブランドも、複数パックで販売されることが多い商品の見せ方が上手になっているという。
同氏は次のように述べている。「出品者が現在使用できるツールや機能は、ほんの2年前のものとはまったく異なっている。サイズ表や動画機能など、購入の意思決定を助けるための、実証的なビジュアルマーケティングが数多く行われている」。
巨大プラットフォームであることの強み
ほかの業者も、Amazonとの結びつきを強めている。Amazonの最大の出品者であるヘインズは2020年、同社の子会社であるチャンピオン(Champion)のアクティブウェア全般について、eコマースの巨大企業であるAmazonとの独占的パートナーシップを締結した。
同社は10月2日までの12カ月間の売上高は68億ドル(約7750億円)をわずかに上回る純売上を計上し、これは前年比で13.8%増加している。このため、シミラーウェブ発表による、2021年11月までの1年間にAmazonで生み出された5億4830万ドル(約625億円)の収益は、同社のビジネス全体でも大きな割合を占める。
クォン氏は次のように述べている。「Amazonは、各ブランドにとってトップ3の収益チャネルになり得る。的確に実行すれば、自社ビジネスを次の段階に引き上げることができる」。
[原文:Amazon Briefing: Why casualwear is still dominant on Amazon ]
Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)