ここ最近、多くのQSR(quick-service restaurant:ファストフード企業などを示す業界用語)企業が、リワード(特典)プログラムを立ち上げている。そこに新たに加わったのが、バーガーキング(Burger King)だ。
ここ最近、多くのQSR(quick-service restaurant:ファストフード企業などを示す業界用語)企業が、リワードプログラムを立ち上げている。ここに新たに加わったのが、バーガーキング(Burger King)だ。
ハンバーガーチェーンのバーガーキングは2月上旬、ロサンゼルス、ニューヨーク、マイアミなどの都市でロイヤル・パークス(Royal Perks)というリワードプログラムを試験運用すると発表した。
これは、1ドル(約105円)使うごとに10クラウン(バーガーキングにおけるポイント)獲得できるポイントプログラムで、クラウンがたまると全メニューから好きな商品と交換できる。このプログラムには新規顧客獲得のための要素もあり、たとえばバーガーキングのアプリから会員登録するだけで、400クラウンが獲得できる。
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一方、ライバルのマクドナルド(McDonald’s)も2月に入り、アプリ内リワードプログラムの開始を発表。ホワイト・キャッスル(White Castle)も、4月までの期間限定キャンペーン、クレイバー・ネーション(Craver Nation)プログラムの一環として、デジタル注文を対象としたリワード付与を試験的に進めており、試験運用の開始後、同社のアプリダウンロード数は前年比215%増加した。これらの企業は、コロナ禍初期に大きな損失を受けたが、リワードプログラムを用いることで顧客エンゲージメントを増強し、巻き返しを考えているようだ。
顧客の要望を考慮した内容
バーガーキングは今回、リワードプログラムの立ち上げに関して、顧客の要望を一層考慮したという。同社のデジタル、およびロイヤルティ担当 バイスプレジデントのホイットニー・グレッツ氏はQSRマガジン(QSR Magazine)の取材に対し、「以前から、サービスを利用するたびに、ポイントが得られるようにして欲しいという声が上がっていた」と述べている。同氏は、バーガーキングのポイントシステムを、航空会社におけるマイルの仕組みになぞらえて説明している。
eメールとSMSマーケティングのプラットフォームを展開する、クラビヨ(Klaviyo)のパフォーマンスマーケティングディレクター、ジョー・マッカーシー氏は、QSR企業にとって、リワードプログラムはリピート購入を促し、有益な顧客データを集める手段だと話す。
また「企業側は、リワードプログラムを通じ、食べるという体験をゲーム化できるだけでなく、顧客理解を深めることができる」。マッカーシー氏はクラビヨのデータを引用し、リワードプログラムを利用している顧客は、これを利用しない顧客より67%多い金額を使うと説明している。
競争激化の顕れ
バーガーキングの発表は、パンデミック中、QSR業界の競争が激化していることの表れでもある。
同社の親会社、レストラン・ブランズ・インターナショナル(Restaurant Brands International)は直近の決算発表で、既存店売上高が7%減少したと報告している。プレーサー・ドット・エーアイ(Placer.ai)のデータによれば、バーガーキングの実店舗の客足は一時期、数カ月にわたって回復が続いていた。しかし、感染者数が急増に転じた2020年10月、再び打撃を受けている。2020年夏の数カ月、客足は前年並みに戻ったが、2021年1月、前年比約32.2%の減少を記録したという。
また、マッカーシー氏によれば、バーガーキングのリワードプログラムは、ほかのファストフードチェーンや、コーヒーチェーンが推し進めている予約注文やデジタル注文の促進施策と似た要素を持っているという。アプリの利用継続を促すこの戦術は、スターバックス(Starbucks)などのチェーンから拡大したものだ。チポトレ・メキシカン・グリル(Chipotle Mexican Grill)とダンキン(Dunkin’)も、それぞれのモバイルアプリでリワードプログラムを運営している。
これが結果に結び付く例も見られている。近年テクノロジーに多額を投じているチポトレは直近の四半期、デジタル売上高が前年比で177.2%増加した。デジタル注文は7億8140万ドル(約826億円)に達し、売上全体の半分を占めた。
顧客との直接的な橋渡し
顧客体験エージェンシー、ヒーロー・デジタル(Hero Digital)の共同創業者、オーウェン・フリボルド氏によると、ロイヤルティプログラムは企業と顧客の直接的な橋渡しになり、パンデミック中、デリバリーサービスへの依存を高めている企業は特に恩恵を受けると述べている。顧客は、お気に入りの飲食店とデジタルで交流することをこれまで以上に期待しているのだ。
ただこの分野では、直接的な競合ではないが、ウーバーイーツ(Uber Eats)、ドアダッシュ(DoorDash)といったサードパーティのアプリが幅を利かせている。だからこそバーガーキングのような大企業が新たなプログラムをつくり、中間業者を介さずに顧客を獲得しようとしているのだ。フリボルド氏は、リワードプログラムはドライブスルーや店舗受け取りを利用する顧客にとって、大きなインセンティブになると語った。
また、マッカーシー氏によれば、こうしたリワードプログラムは決して新しいものではなく、アプリベースのリワードプログラムはかつてサブウェイ(Subway)が提供していたスタンプカードのデジタル版のような役割を果たしているという。「結局のところ、ブランディング施策の延長線上にあるものだ」。
[原文:Why Burger King is launching a rewards program]
GABRIELA BARKHO(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:村上莞)