全米で外出が大幅に減るなか、当然ながら屋外広告の需要低下は著しい。実際、屋外広告は3月以降、40%も需要が減少したと報告されている。しかし一方、地元のカスタマーにリーチしたいD2Cブランドらにとってのビジネスチャンスが生まれつつある。
全米で外出が大幅に減るなか、当然ながら屋外広告の需要低下は著しい。実際、屋外広告は3月以降、40%も需要が減少したと報告されている。しかし一方、地元のカスタマーにリーチしたいブランドにとってのビジネスチャンスが生まれつつある。
現時点で多くのブランドは、いまも地下鉄をはじめとする地下に設置された広告枠は利用していない。しかし最近、パンデミックはじまった際に屋外広告を停止していたスタートアップのなかには、都市部で潜在的なカスタマーをターゲットに屋外広告をメインに活用する企業が見られる。ユナイテッドソーダズ(United Sodas)やリベルスクーターズ(Revel Scooters)といったブランドは、何ヵ月もまともに外出できていない潜在顧客に注目しているのだ。
ソーダを扱うスタートアップブランド、ユナイテッドソーダズは8月にかけ、ニューヨークの無料WiFiサービス「リンクNYC(LinkNYC)」のキオスクを、同社にとって初の屋外広告として活用している。米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテールの取材に対し、同社CEOのマリサ・ズパン氏は、昨年秋から本社のあるニューヨーク市を中心に屋外広告を展開することを検討していたと語っている。当初の計画では、地下鉄の車両や駅を活用する予定だったが、これは変更された。同社が製品を発売してから2ヵ月ほどが経つが、キャンペーンは人通りの多いニューヨーク市の地上にあるキオスクを中心に展開されている。
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変化が生じてきている
ユナイテッドソーダズの基本戦略は、コロナ禍においても変わらない。通勤風景が様変わりしたいまでも、「大都市では、伝統的な広告手法とミックスして展開するのが効果的だ」とズパン氏は語った。ベンダーとなるリンクNYCや運用を担当するインターセクション(Intersecion)もまた、これまでの手法に新たなアレンジを加えることに積極的だという。たとえば、公園や広場のような公共スペースに、通行人がチラシを持っていけるようにブースを設置するといった方法が検討されていた。さらにインターセクションは、コロナ禍の前後でインプレッションがどう変化したかを、週次のレポートで提供しており、ユナイテッドソーダズはこれを、現在進行中のキャンペーンの調整やコンバージョンの最適化に役立てている。
同社は、7月下旬からリンクNYCへ広告を展開しており、ズパン氏によれば主に歩行者が多いエリアやブロードウェイ、マディソンアベニューなどの大通りが中心だという。なお、広告が配置されるキオスクは「タイムズスクエアからブルックリンにいたるまでの地域になる」とのことだ。
また、1ヵ月前はスーパーなどを中心にした戦略も検討されていたが、消費者の行動パターンが変化したことで戦略を変更したという。というのも、閑散とした地域でも、まるでタイムズスクエアのように交通量が戻ってきているからだ。この地域の歩行者の数は、ウイルスがピークを迎えた4月の3万3000人に対し、6月には平均4万5000人にまで回復した。
これは、住民の多くはオンもオフも近隣で過ごすからにほかならない。現在、ニューヨークのレストランやバー、劇場といった屋内レジャーの大半については、アンドリュー・クオモ知事が営業再開の許可を出していない。しかし、外食産業の営業再開が近づきつつあるいま、変化が生じてきている。D2Cブランドの屋外広告キャンペーン支援を専門とするエージェンシー、クアン(Quan)のCEOを務めるブライアン・ラパポート氏は「どう対処すべきかを常に考えてきた」という。同社はこれまで、アウェイ(Away)やキャスパー(Casper)といった有名なD2Cブランドも担当してきた。クアンは現在、ブランドと共にリベルスクーターズと似た戦略に取り組んでいるという。
新たなビジネスチャンス
ラパポート氏はキャンペーン予算は明らかにしなかったものの、いまこそ割安になっている屋外マーケティング戦略を試す機会だと強調する。クアンはまず、9月第1週までの試験運用を予定しており、それを通じて新たな通勤の傾向とコンバージョン率を把握するという。
これは、いまのニューヨークが営業再開の傾向にあるとはいえ、どれほどのオフィスワーカーが職場に復帰しているか不透明なためだ。「本格的に資金を投じる前に、パフォーマンスを確認しなければならない」と、ユナイテッドソーダズのズパン氏は語る。
またズパン氏は、ユナイテッドソーダズにとって地元のオーディエンスへのリーチを試みることは、デジタルへの柔軟な対応と同様に重要だとする。地下鉄の広告のように、特定地域や層に向けた新宣伝媒体を単に展開するだけでなく、日々変化する動向にあわせて「なるべくたくさんの要素を調整できるように心がけている」と同氏は語る。これは、1時間ごとの天気やニュース、近場のレストランといったデータすら活用するということだ。たとえば雨のときは、ユナイテッドソーダズの特定の味の売れ行きが好調になるためだ。
クアンのD2Cのクライアントのあいだでは、新興ブランドに限らず「地上」での宣伝をビジネスチャンスと捉え、戦略に組み入れるケースが増えているという。また、パンデミックによって屋外広告を取りやめたクアンのD2Cクライアントのなかには、再び展開したいと考えているブランドも多数いると、ラパポート氏は語る。
[原文:Why beverage startup United Sodas is testing out a new out-of-home strategy]
GABRIELA BARKHO(翻訳:SI Japan、編集:Kan Murakami)