手頃な価格のスキンケアブランドのワイルドキャットがブランドリニューアルを行った2021年9月時、CBD(カンナビジオール)はヒーロー成分として登場。しかし2度目となる今回のローンチでは、この成分は完全に消え去り、製品の価格帯もそれぞれ4ドルから6ドル(約455円〜680円)ほど下がった。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
2021年9月、手頃な価格のスキンケアブランドのワイルドキャット(WLDKAT)がブランドのリニューアルを行った。同ブランドがCBD(カンナビジオール)をヒーロー成分として最初にローンチしたのはパンデミックが始まった頃だった。2度目となる今回のローンチでは、この成分は完全に消え去り、製品の価格帯もそれぞれ4ドルから6ドル(約455円〜680円)ほど下がった。ブランド刷新にあたり、アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)でも販売を行うが、WLDKATによれば、これはブランドの移行に関係なく起こっただろうという。
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2018年に農業法案(Farm Bill)が通過したとき、多くの人がこれをCBD配合製品が次々と生まれる兆しと受け止めた。どの美容ライターに聞いても、2018年から2019年にはCBD配合製品に関する宣伝でメールの受信箱はおもしろいほどいっぱいだったと教えてくれるはずだ。スキンケアにも入っていたし、ほとんどあらゆるものにCBDが入っていた。だが予想されていたような変化は実現していない。つまり、CBDを含む製品を販売する際、事業を困難にするような制約がいまだに数えきれないほど存在するのだ。わずか4年後の現在、起業家たちは考え方を一変させている。
合法化されてもCBDはまだ商業面で規制が多い
「複数のチャネルで販売できない。海外に発送できない。アフターペイ(Afterpay)、PayPal、Apple Pay、クラーナ(Klarna)が使えない(いずれもCBDをサポートしていない)。ウェブサイトで支払いを処理するたびに多く支払うことになる。来る日も来る日も、これがとにかく障害となっている。スタートアップ企業として、ビジネスを起動に乗せることすらむずかしい」と話すのは、WLDKATの創設者でCEOのエイミー・ズズネギ氏だ。「スキンケアにはすばらしい成分だし、関節に炎症がある場合に摂取するとよい成分だと本当に思っている。だが、連邦政府では合法化されているにもかかわらず、業界の商業面ではまだまったく追いついていない」。
その結果、WLDKATでは顧客がしばしば混乱していることに気づいた。CBDはユーザーをハイにするのかどうか、という質問がブランドに定期的に寄せられるようになったと、ズズネギ氏は言う(答えはノーだ)。そして彼女いわく、小売業者は、いまだにこの成分は信じられないほど顧客の評価が分かれていると思っている。
CBD配合製品はひとつあれば十分
インフルエンサーでザ・フィーリスト(The Feelist)の共同設立者のシア・マリー氏も同様の懸念を表明している。ザ・フィーリストは2020年8月にクリーム2種類とバスソルトを含む、3点のCBD配合ボディケア製品を発売した。これらの製品はまだ存在するものの、同ブランドはその後、CBD配合の美容製品のマーケティングと販売に関する懸念を理由に、CBDを含まないスキンケア製品に重点を置くよう方向転換した。それでも依然として同ブランドのベストセラーは、500ミリグラムの幅広いスペクトルのCBDが含まれたフェイシャルオイル、モーストウォンテッド(Most Wanted)である。幸いなことに、ただひとつのフェイシャルケア製品にCBDが入っていることが、ブランドの成功を妨げる事態にはなっていないと、マリー氏は言う。
マリー氏いわく、そのオイルは「人々の肌を変えた。ビフォーアフターや顧客の声は非常にパワフルなものだった」。そこで、ブランドではフェイシャルスキンケアにさらに力を入れることにした。このことが思いがけない結果を生む。「CBDを何重にも肌の上に塗る必要はない」ことがわかったからだ。つまり、ただひとつのフェイシャルオイルに配合したCBDをフィーチャーするだけでも、その成分のメリットは十分に得られるということだ。そのため、マリー氏はCBDを含まないトータルパッケージ・ユースプロテクティング・セラム(Total Package Youth Protecting Serum)といった製品のローンチについて心配していない。「トナーにもセラムにも、クリームにもCBDが必要だと言う人がいるなら、それはただの詐欺だ」。
重要なプラットフォームで広告を受け付けてもらえない
ズズネギ氏もマリー氏も、自分たちはCBDブランドになるというつもりは決してなかったと言うが、どちらもCBDが事業の障害になるとは予想していなかった。たとえば、ショッピファイ(Shopify)でCBDを販売することに関する制限によって、eコマースへの投資をさらに増やさざるを得なくなった。「通常のショッピファイのサイトを持つのとくらべて、おそらく10倍、あるいは100倍のコストがかかる」。
また、有料広告も課題となっている。マリー氏は次のように言う。「おそらく今、私たちにとって最大のハードルとなっているのが、ソーシャルメディア、Facebook、インスタグラム、Googleなど、あらゆる種類の有料広告だ。どこもCBDの広告は受け付けていない。まさに悪夢の真っ只中にいるようだ。スキンケア業界では極端な広告なしで成功することはできない。競争が非常に激しいのだ。だから、製品にCBDを配合しているブランドが、世界でもっとも重要なプラットフォームでその製品を宣伝できなければ、ほかのみんなから遅れをとり、自分以外の全員が成長していくのを指をくわえて眺めることになる。ほかの人たちがやっていることが自分にはできないのだ」。
同ブランドでは、マリー氏と共同設立者のアレクサンドラ・ヴリーランド氏が本当に気に入っている新たなCBD配合のフォーミュラが完成しているが、「状況があまりに困難なため、業界内で何が起こるかを見極めるまで」リリースを見送ることを選択した。しかし「私たちはまだCBDをあきらめてはいない。今もそれに取り組んでいる」とマリー氏は述べている。
[原文:Why beauty brands are backing away from CBD]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)