ジェマ・ン氏とダニエル・ン氏は、第一子が生まれる前はよく旅行していた。しかしその後、赤ちゃんを連れて、そしてたくさんの赤ちゃん用品を持って旅行することの大変さを知ることになった。2人はサンフランシスコからハワイへの飛行機に乗りながらおむつ用かばんのなかをあさっていたときに、親向けの新しい旅行ブランドとして、ノーレセプションクラブ(No Reception Club)を思いついた。
「我々の結論は、ここに未開拓の大きな市場があり、しかも多くの問題点があって、その多くは対策されていないということだ。業界にこれまで存在しなかった新しいものを市場に送り出すことができるだろうと感じた」とダニエル氏は述べている。
両氏はファッションやeコマースのバックグラウンドがあったため、多用途なおむつ用かばんをデザインし、2021年夏にクラウドファンディングサイトのキックスターター(Kickstarter)で6万3000ドル(約907万円)を集めた。このバッグは、いくつものポケットがあり、バッグをベビーカーに取り付けるクリップや、パスポートを入れるジッパー付きの隠しポケットなどの機能を備えたジェンダーレスなコンパートメント型バックパックだ。このザ・ゲートウェイ・バッグ(The Getaway Bag)は、2年間で4回も品切れになり、今はグローバル市場への進出を準備している。
親としての体験からD2Cブランドを設立するに至った起業家はン夫妻だけではない。もっとも人気があるベビー用品新興企業のいくつかは、新米の親として、商品のアイデアを思い付いた人々によって設立され、資金調達や市場シェアの獲得においてももっとも成功しつつある。また、多くの新興D2C企業は、ハッスルカルチャーやぜいたくなライフスタイルを社風としてきた。しかし、親である何人かの創業者は、ベビー分野において、より良い育児手当や、在宅勤務の自由など、家族に取って優しい方針を重視する企業文化の変革の最前線にいる。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです
ジェマ・ン氏とダニエル・ン氏は、第一子が生まれる前はよく旅行していた。しかしその後、赤ちゃんを連れて、そしてたくさんの赤ちゃん用品を持って旅行することの大変さを知ることになった。2人はサンフランシスコからハワイへの飛行機に乗りながらおむつ用かばんのなかをあさっていたときに、親向けの新しい旅行ブランドとして、ノーレセプションクラブ(No Reception Club)を思いついた。
「我々の結論は、ここに未開拓の大きな市場があり、しかも多くの問題点があって、その多くは対策されていないということだ。業界にこれまで存在しなかった新しいものを市場に送り出すことができるだろうと感じた」とダニエル氏は述べている。
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両氏はファッションやeコマースのバックグラウンドがあったため、多用途なおむつ用かばんをデザインし、2021年夏にクラウドファンディングサイトのキックスターター(Kickstarter)で6万3000ドル(約907万円)を集めた。このバッグは、いくつものポケットがあり、バッグをベビーカーに取り付けるクリップや、パスポートを入れるジッパー付きの隠しポケットなどの機能を備えたジェンダーレスなコンパートメント型バックパックだ。このザ・ゲートウェイ・バッグ(The Getaway Bag)は、2年間で4回も品切れになり、今はグローバル市場への進出を準備している。
親としての体験からD2Cブランドを設立するに至った起業家はン夫妻だけではない。もっとも人気があるベビー用品新興企業のいくつかは、新米の親として、商品のアイデアを思い付いた人々によって設立され、資金調達や市場シェアの獲得においてももっとも成功しつつある。また、多くの新興D2C企業は、ハッスルカルチャーやぜいたくなライフスタイルを社風としてきた。しかし、親である何人かの創業者は、ベビー分野において、より良い育児手当や、在宅勤務の自由など、家族に取って優しい方針を重視する企業文化の変革の最前線にいる。
顧客との仲間意識
ベビー用品ブランドのラロ(Lalo)は、「育児中の大人向けに」審美的に優れた商品を作り上げようと考えた2人の父親によって創設された。同社はこの夏、1010万ドル(約14億5000万円)のシリーズAを調達し、10月には新商品のローンチを控えている。CEOのナタリー・ゴードン氏は、親たちが同じ場所でいくつもの店舗やサービスに登録する手間を省くためのプラットフォームとして、2011年にベビー用レジストリサービスのベビーリスト(Babylist)を設立した。同氏は、自分のジャーマンシェパードを散歩してくれる人のリストや、おむつ配達サービスの申し込みなどを一箇所に集めたいと思い、このアイデアを思い付いた。同社はそれ以降、コンテンツプラットフォームとマーケットプレイスに成長し、5000万ドル(約72億円)を調達した。
親である創業者としてもっとも有名なのは、女優から起業家に転身したオネスト・カンパニー(The Honest Company)のジェシカ・アルバだろう。同氏は、化学薬品が赤ちゃんの皮膚反応を引き起こすことを懸念し、エコ志向のベビーケアブランドを立ち上げた、同社はそれ以後にスキンケアなどのカテゴリーに事業を拡大したが、事業の中心はおむつやおしりふきで、大きな市場シェアを獲得している。第1四半期の収益は前年同期比23%増だった。
これらのブランドにおいて一貫しているのは、自社のマーケティングやブランドのストーリーにおいて、親と赤ちゃんのニーズにどう対処しているかという点だ。ン夫妻はブランドのソーシャルメディアのコンテンツや投稿をすべて管理しており、自宅からコンテンツを撮影・投稿して、彼ら自身の旅のヒントを共有することで、ブランドの顔としての役割も果たしている。有料広告は一切出さず、顧客がブランドを知る最大の方法は口コミだという。
「我々は1歳と4歳の子を育てているので、育児真っ最中だ。顧客とこのレベルで共感することで、仲間意識や絆が生まれる」とジェマ・ン氏は述べる。
ホワイトスペースを見つける
セアラ・ハーディ氏は粉ミルクの新興企業ボビー(Bobbie)の共同創業者でCOOを務めている。共同創業者のローラ・モディ氏とは、以前勤めていた会社で一緒に勤務していたことで知り合い、さらにほぼ同時に第一子を出産した。親になったことで、ハーディ氏は職場の文化や赤ちゃんに粉ミルクで育てることへの感じ方が変わってきた。10人のうち8人の親は、赤ちゃんが0歳のうちに1回は粉ミルクを与えるが、粉ミルクの与え方について信頼できるリソースや情報を見つけるのは難しい。
「『私たちなんかが粉ミルクの会社をはじめられるの?』という気持ちと、『実際に経験してきた母親が一番適しているはずだ』という気持ちが両方あった」。
投資家もまた、この機会を見逃さなかった。ボビーはこの夏の時点で、シリーズCでの7000万ドルを含む1億4200万ドル(約204億円)のベンチャーキャピタルによる資金を調達し、ネイチャーズ・ワンを買収した。ボビーのこの買収は、2022年春の乳児用粉ミルク不足に対応するため、国内粉ミルクメーカーを成長させるという目標を後押しするものだ。
親が設立したベビー関連企業が台頭してきている一因は、女性主導の企業への投資が増加していることによるものだ。クランチベース(Crunchbase)によると、女性が設立したベビー関連企業のうち、18億ドル(約2600億円)の投資を集めた企業は最低243社あるとしている。
親であることは、ボビーの職場の文化と「密接に結びついている」とハーディ氏は述べる。同社の従業員の約3分の2が親で、90%が女性だ。
「プライベートと職場のふたつの世界をそれぞれ保つのは疲れることだ。だから、私たちはそれらを共に受け入れることにした」と同氏は述べている。
これにより、フレックスタイムを推奨する、完全リモートの企業が誕生した。同社は、12カ月の育児休暇制度があり、この制度に関心を抱くほかの企業向けに、「take our leave(休暇をとろう)」というプレイブックを作成した。従業員はパートタイムで仕事に復帰でき、給料は全額支払われる。
ベビー用レジストリサービスのベビーリストもリモート優先の会社で、福利厚生のひとつとして「ワークライフバランス」を掲げており、医療保険の全額支給、不妊治療および養子縁組に関する手当、すべての親について12週間の育児休暇を設けている。
こうした取り組みは、男性主体で限界まで働き、「兄弟愛的な雰囲気」さえも出している、従来のD2C新興企業の文化とは一線を画するものだ。さらに広く見れば、民間企業としても画期的だ。カイザーファミリー財団(Kaiser Family Foundation)によると、民間企業で有給の育児休暇の制度がある会社は4社に1社しかない。
親主体のマーケティング
ボビーでは、カスタマーサービス担当者が、従来の粉ミルクブランドとは「異なる方法で親にアピールする」方法について訓練を受けているとハーディ氏は述べる。
これはD2Cおむつブランドのコーテリ(Coterie)と似た形式のマーケティングで、その商品が赤ちゃんだけではなく、親の暮らしにどのような影響を与えるかについてもフォーカスする。コーテリは自社の高級感のある肌触りの紙おむつで赤ちゃんが夜ぐっすりと眠れると謳う一方、ボビーは哺乳瓶の育児について親を教育するのに役立つ無料の「粉ミルクハンドブック」をランディングページで提供している。
「もちろん、消費者は赤ちゃんだ。しかし結局のところ、自分で判断を下し家族にとって良いことができるように装備されサポートされるのは、親である」とハーディ氏は語った。
ノーレセプションクラブのダニエル・ン氏は、会社を立ち上げて競合他社を見回したとき、非の打ちどころのない格好をした子どもたちを、どこか変わった場所で撮影し、過度に演出された写真ばかりが使用されていることに落胆したと語る。
どの写真も非現実的だったのだ。
「なんというか、現実にこんな光景があり得るのか? と笑ってしまった。そして、これは誰のための広告なのか? つまり、実際に親のためになっているのだろうか? 答えはノーだ」と、ダニエル氏は語る。
ノーレセプションクラブはその代わりに、子どもと一緒に旅行するためのベストプラクティスを親に紹介することを目的としている。ン夫妻はインスタグラムのアカウントに自ら投稿し、自分たちの子ども用品を使って手荷物をパッキングする方法の例など、自宅から自分たちのデバイスでコンテンツを作成している。
また同社には、ノーレセプションクラブハウス(No Reception Clubhouse)というFacebookグループには4000人を超えるメンバーが加入しており、ブランドのファンが旅行のヒントをシェアしたり、おすすめを尋ねたりしている。ン夫妻は、将来発売される製品へのフィードバックを含め、製品に関する最新情報を投稿し、コンテンツの原動力となる質問に回答したりしている。
現在、2人の子供の親であるン夫妻は、さまざまな年齢の子どもを連れて旅行する方法や、旅行に持っていくべき必需品などについて、多くの意見を耳にしている。
「ボーッとしながら『何を話そうか?』と考えているわけにはいかない。実際に知識が欲しい親たちから質問が寄せられ、我々が『私たちはこうしている』という話をしている」とジェマ・ン氏は語っている。
[原文:Why baby care founders are leaning on their parenting journeys]
Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via No Reception Club