アメリカンイーグル(American Eagle)はこの春、ロブロックス(Roblox)を通じてメタバースでZ世代の関心を奪い合う多くのブランドの仲間入りをする。ロールプレイングゲーム「ライブトピア(Livetopia) […]
アメリカンイーグル(American Eagle)はこの春、ロブロックス(Roblox)を通じてメタバースでZ世代の関心を奪い合う多くのブランドの仲間入りをする。ロールプレイングゲーム「ライブトピア(Livetopia)」のプレイヤーは、ゲーム内の「AEメンバーズ・オールウェイズ・クラブ(AE Members Always Club)」に立ち寄り、自分のアバターにアメリカンイーグルの春の新作を着せられるようになる。
このメタバースマーケティングをいち早く取り入れる動きは、Snapchatを通じたAR(拡張現実)の導入や、NFT(非代替性トークン)の発表、ゲーム「NBA 2K」内の店舗など、Z世代のゲーマーやハイテク好きにアピールする同社の最近の取り組みに続くものだと、アメリカンイーグルのCMOを務めるクレイグ・ブロマーズ氏は説明する。今年はメタバース内のクラブのほか、Snapchatのスナップコード(Snapcode)を使った実店舗での没入型体験、Twitch(ツイッチ)との提携など、こうした取り組みをさらに強化する予定だ。
アメリカンイーグルは、エージェンシーのヴェイナーメディア(VaynerMedia)や社内マーケティングチームの力を借りて、より実験的なデジタルマーケティングを追求することで、「革新的で最先端」というブランド認知をZ世代の消費者に定着させることを目指していると、ブロマーズ氏はいう。「ロブロックスやTwitchでの試みが、ターゲット層であるZ世代のマインドシェア獲得に役立つことを期待している」。
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YouTubeへの早期参入との共通点
とはいえ、ARやメタバースへの取り組みを強化することは、単にブランド認知のためだけではない。ブロマーズ氏によると、同社のこれまでのARやゲームへの取り組みは、2021年に500万ドル(約5億9000万円)のアパレル販売売上を生み出し、うち200万ドル(約2億3600万円)は、SnapchatとのARを用いたホリデーポップアップがもたらした。「売上を押し上げてくれた」とブロマーズ氏は話す。「けっしてブランド認知だけではなかった」
ブロマーズ氏が具体的な金額を明かさなかったため、同社がメタバースマーケティングの取り組みに具体的にいくら費やしているかは不明だ。しかし、ブランドのターゲット層がZ世代であること、広告予算の100%がデジタルに投じられ、約10%がイノベーション分野とブロマーズ氏が呼ぶものに充てられていることを考えると、取るに足らない額ではないだろう。カンター(Kantar)によると、アメリカンイーグルは2021年に2760万ドル(約32億6000万円)を広告に費やしており、2020年の580万ドル(約6億8500万円)から大幅に増えている。ただし、ソーシャル関連支出はカンターの調査対象外であるため、ソーシャルメディア費はこの数字には含まれていない。
アメリカンイーグルがZ世代の注目を集める方法としてメタバースに移行しているのは理にかなった動きだと、ワンダーマン・トンプソン・インテリジェンス(Wunderman Thompson Intelligence)のエディターを務めるエミリー・サフィアン・ディマーズ氏はいう。「メタバースではファッションやアパレルブランドによる活動が盛んだ」と同氏は指摘し、「アバターに服を着せ」られるようにすることでデジタルと実世界をつなぐことが可能なため、ブランドが参入するのに適していると評する。
YouTubeで名を広めたメディア企業ウォッチモジョ(WatchMojo)のCEO、アシュカン・カーバスフルーシャン氏は、メタバースへの早期参入にYouTubeへの早期参入との共通点を見る。「企業のCMOは、コロナ禍がメタバースへの移行を加速させるのに伴い、自分の子どもたちがロブロックスで遊んでいるのを見るようになった」とカーバスフルーシャン氏はいう。「いま彼らは、確実に早期参入しておきたいと考えている」。
Web3とメタバースへの投資の意味
アメリカンイーグルは、この春の取り組みでメタバースマーケティングに参入しようとしているだけではない。社内エージェンシーにはメタバースマーケティングに取り組む人材が10人ほどおり、さらに1月には、そのチームにメタバースマーケティングのディレクターを加えている。
メカニズム(Mekanism)の最高ソーシャル責任者兼パートナーのブレンダン・ガーン氏は、「新興プラットフォームでは、そこが飽和状態になる前にアーリーアダプターがオーディエンスを構築することができる」と述べ、「より確立されたプラットフォームで成長することは、時間が経つにつれ困難になる。そのような場所にはすでにヒエラルキーが存在し、はい上がることはまず不可能だ」と指摘する。
ガーン氏はさらにこう述べた。「Web2からWeb3へと移行する世界では、マーケターはもはやビュー数に資金を投じることはできない。お金を払って『コミュニティ』を育てることは不可能になる。ハードルが低い今のうちに、時間と労力をかけてWeb3とメタバースを理解しておくことは、今後数十年にわたり利益をもたらす価値ある投資だ」。
[原文:Why American Eagle is looking to be an early adopter in metaverse-based marketing and sales]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:長田真)