創業100年を迎えた米ホームセンターチェーン、エース・ハードウェアは同社の言う大規模戦略「PR活性化」の一環として、メディアミックスにインフルエンサーマーケティングを加え、DIY好きと住宅初購入者に、なかでも同層のミレニアル世代への働きかけに注力した。マーケティング部門VPジェフ・グッディング氏に話を聞いた。
2021年前半、創業100年を迎えた米ホームセンターチェーン、エース・ハードウェア(Ace Hardware)は同社の言う大規模戦略、「PRアクティベーション(活性化)」の一環として、メディアミックスにインフルエンサーマーケティングを加え、DIY(ドゥイットユアセルフ)好きと住宅初購入者に、なかでも同層のミレニアル世代への働きかけに注力した。
同社は広告エージェンシーOKRPと提携し、この1年を通じてPRアクティベーションを展開した。人々がいつか(Someday/サムデイ)取りかかろうと思っている家周りのもろもろに取り組むための新たな休日「サムデイ(SomeDay)」の提案、感謝祭(Thanksgiving/サンクスギビング)に絡めた料理動画「サンクスグリリング(Thanksgrilling)」の配信、休日中のDIYを推奨/応援するミュージックビデオ風動画「ホリ・DIY(Holi-DIY)」はその代表例だ。同社のこうした販促活動がターゲットオーディエンスへのリーチや若年層オーディエンスとのブランド親和性の向上にどう役立っているのか。その全体像を掴むべく、米DIGIDAYはエース・ハードウェアのマーケティング部門VPジェフ・グッディング氏に話を聞いた。
なお、読みやすさを考慮し、発言には編集を加えてある。
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――エースは今、より若い消費者ベースへの働きかけに努めているのか?
端的に答えれば、イエスだ。弊社はすべてのDIY好き(DIY-ers)および住宅所有者への働きかけに努めている。弊社の価値提案は、簡単に言えば、「我々は皆さんの役に立つ所です。地球上でもっとも役に立つハードウェア店です」というものであり、それはつまり、あらゆるオーディエンスの役に立つことを意味する。ただし、ミレニアルオーディエンス――弊社ではグロース(成長)オーディエンスと呼んでいるのだが――は現在、初めて住宅を購入する年齢に達しつつあり、だからこそその新たな層に訴えかけたいと思っている。彼らにエースへのブランド親和性を持ってもらいたい。
――具体的には何を?
弊社のマーケティングミックスはそもそもDIY好きをターゲットにしたものだ。TVからデジタル、サーチからソーシャルまで、我々が行っていることはすべてそうしたオーディエンスへのリーチを目的としている。ただ、2021年はサムデイプログラムといったPRアクティベーションも新たに展開した。厳密に言えば、それはそうしたオーディエンスにリーチするものではないが、そこにはいわば新たな特典もある。OKRPとの提携を通じて、住宅所有者および新規住宅購入者の関心を引く、既存の枠を打破するPRアクティベーションを創出できている。
――2021年すでに、そのいくつかは実施している。その結果、ミレニアル世代と新規住宅購入者のエース店舗来店数は伸びているのか?
PRはすべてのDIY好きに、すべての住宅所有者に、とりわけ若年オーディエンスにリーチする大きな機械の歯車のひとつでしかない。ただ先ほども言ったとおり、我々としては若年層を取り込み、弊社へのブランド親和性を持ってもらいたい。あなたの質問は彼らを店舗で目にしているか、だったね? 答えはイエスだ。そしてそれは、我々の努力の賜物だと自負している。それらPRアクティベーションは弊社にとって新たな試みだが、これまでのところ結果は上々であり、今後も続けていくつもりだ。2022年度の構想にもすでに取り組んでいる。
――その努力の一環として、貴社は2021年前半、TikTokに傾倒しました。その投資を今後も増やしていく?
TikTokは弊社が始めたばかりの新たな試みであり、したがって社としての答えはまだ出ていない。実際、TikTokユーザーに占める住宅購入者の割合も我々は知らない。いずれにせよ、我々がリーチしたいターゲットオーディエンスにリーチおよびエンゲージする最適な方法の発見については、つねにオープンな姿勢でいたい。
OKRPとの提携では、攻めの姿勢を全面に出して常識打破に努めている。PRを上手く利用し、そうした活性手段を利用して、これまでの枠を打ち破り、弊社だけの力では戦えない相手にパンチを繰り出し、DIY好き全体の、なかでもとりわけ、我々にとってのグロース(成長)オーディエンスであるミレニアル世代の注目を引こう、という姿勢だ。
――インフルエンサーへの傾倒は今後も継続する?
我々のマーケティングミックスにおいてインフルエンサーは比較的新しい存在だ。いまはまだ、試しながら学んでいる状態と言える。2022年に入っても、その姿勢は変わらないと思う。どの程度傾倒するかはあくまで展開するアイデア次第だ――インフルエンサーが不可欠なものもあれば、そうでないものもある。
――最新のPRアクティベーションはインフルエンサーを起用したミュージックビデオ風の動画ですが、その販促としてペイドメディアに資金を投じている?
あのオンラインホリデービデオの販促には、かなりの額を投じた。もともとそうする予定だったわけではない。共通のアイデアを元にインフルエンサーたちに独自の動画を作らせる、ホリデー用の活性化戦略だけのつもりだった。ただ、あまりにも出来が良いから、もっと多くの人に見てもらえるようにと、多額を投じることにした(編註:具体的な額は明かされなかった)。とはいえ、あれはあくまでも付加的なものであり、あのために何かを犠牲にはしていない。
――ほかに何か伝えておきたいことは?
我々は消費者に向けてマーケティングしているだけではない。弊社には5000人の店舗オーナーもいる。エースの店舗展開はフランチャイズではない。いわば共同経営だ。エースの店舗を持っている人は、つまり、我が社の一部を持っている。言い換えれば、弊社マーケティングチームには5000人のボス(上司)がいる、マーチャンダイジングチームにも5000人のボス(上司)がいる、ということになる。そうした小売業者とのマーケティングと彼らへの目/気配りは、消費者に対するマーケティングと同等に重要だ。
Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)