DTC(Direct To Consumer:ネット直販)モデルの問題点が明らかになってきた。オンラインでの成長は無限ではない。顧客たちは直接商品を試して比較したいのだ。そこで、新興アスレチックブランドのアララ(Alala)は、リテールパートナーとの協働という選択を行ってきたという。
デニース・リー氏がアスレチックブランド、アララ(Alala)を立ち上げたとき、エキノックス(Equinox)、カーボン38(Carbon38)、バンディア(Bandier)など外部でコレクション発売しつつ、自社のウェブサイトも開設した。
この5年間、アララの商品は、そのリテーラーたちのリストに掲載されている。立ち上げ時のパートナーのほかに、ショップボップ(Shopbop)、ノードストローム(Nordstrom)、リボルブ(Revolve)、地元のブティック、そしてバリーズ・プートキャンプ(Barry’s Bootcamp)やフライウィール(Flywheel)などのフィットネスジムやスタジオでも、同ブランドは販売されるようになった。同ブランドはオンラインとオフラインパートナーを組み合わせており、Alala.comでも購入は可能だ。また、ショップ・イン・ショップやコンセッション方式ではない、従来のホールセールチャネルを通じたリテーラーへの販売も行っている。リー氏によると、同ブランドの売上は直販が50%、リテーラー販売が50%ということだ。それが収益を上げているのかどうかについては、語ってもらえなかった。
「非常に新しいブランドにとっての戦略とは、ほかのDTC(Direct To Consumer:ネット直販)ブランドがどのように戦略を考えているかということは関係がないことに気づいた。しかし、ホールセールを活用することは我々にとってブランド認知度を高めるという重要な役割を果たし、商品に対するフィードバックの意義あるバロメーターになっている。こういった露出は、このカテゴリーが成長するにつれて、注目される新しいアスリージャー・ブランドのトップブランドとしての足がかりをもたらしてくれた」と、リー氏はいう。
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それはまさに、リテールへの回帰ということだ。
リテールへの回帰
DTCの時代では、エバーレーン(Everlane)、グロッシアー(Glossier)、オールバーズ(Allbirds)といったブランドにとって、ホールセールは禁句になった。同様にモデル化された何十ものブランドが、オンラインに参入して、リテールによる値上げを回避する機会ととらえ、そこで節約されたお金を商品生産やほかの顧客向けの価値提供に効果的につぎ込んでいる。しかし、そのモデルの問題点が次第に明らかになってきた。オンラインでの成長は無限ではない。顧客たちは直接商品を試して比較したい。そして、中間業者を省くことで節約された予算は、商品生産ではなく高くつく顧客獲得コストに振り替えなければならないことがしばしば起こっている。ほとんどのブランドにとって、リテールパートナーに頼らずに高額なローンチコストを調達するための解決策が、ベンチャーキャピタル(VC)だ。
しかし、VCとの提携は新しいブランドとっていつも魅力的であるとは限らない。自身のブランドを立ち上げるまでに、シーワンダー(C.Wonder)のクリストファー・バーチ氏、そしてアルマーニ・エクスチェンジ(Armani Exchange)と一緒に仕事をしていたリー氏は、VCとコンシューマーリテールの組み合わせがうまくいくとは感じられなかったため、VC資本を避ける決断を意図的に行ったと述べた。代わりにアララは、少なくともブランド導入時には、アスレジャー・ウェアのような比較的新しいカテゴリーをナビゲートする方法を見つけ出すために、リテールパートナーと一緒にコレクションの販売を開始した。
「バイヤーとその顧客たちからのフィードバックを得ることは、ブランドを構築するうえで興味深く極めて重要なことだ。我々が行うことに広がりを与えてくれた」と、リー氏は語る。人々に商品を試着してもらいたい。すでに全国的規模があるので、顧客をウェブサイトに誘導する手配をするよりも、彼らが行く場所で、彼らにアクセスできる。使い古された手段だとしても、ホールセールには多くの利点がある」。
EC市場は飽和状態
デジタルブランドは依然として顧客データ、そして顧客とつながりを持つことに焦点を当てているが、アライバルズ(The Arrivals)、ネイティブ・デオドラント(Native Deodorant)、ハリーズ(Harry’s)などのブランドも、従来のリテールパートナーたちが結局は、ビジネスモデルにおいて重要な役割を果たすかもしれないことを認めている。規模と露出に関して、小規模ブランドは高いリテールおよびマーケティングコストの負担を軽減することが可能だ。
「ブランドにとってダイレクト販売の純粋性は失われてしまった」と、リテール分析会社、ルーズ・スレッズ(Loose Threads)の創設者リッチー・シーゲル氏はいう。「オンライン市場は飽和状態だ。しかし、だからといって、これらのブランドがやみくもにホールセールを目指すということではない」。
リー氏はリテールパートナーたちとコミュニケーションを深めることで、ホールセールのマイナス面に対処しているという。デジタルブランドはまだ新しいので、その関係にもっと余裕を持っている。たとえば、全店舗にわたるプロモーションから除外するように要求することがよくある。ある商品に過剰な在庫がある場合、アララはその在庫を売りやすいクラシックヨガパンツのような「主力」商品に取り換え、売れ残った在庫を買い戻すことはしていない。アドワーズをめぐる競争や、リテーラーの従業員を通じたブランドのストーリーの伝達など、その他の懸念事項については、それはトレードオフだと、リー氏は述べる。より多くの製品を新しい顧客に届けることと引き換えに、ブランドはもっと多くの人々に自社サイトでブランドストーリーを伝える機会を設けるだろう。
そのほかのメリット
サードパーティー店舗での販売は保険にもなる。アララサイトに入荷する前に、新しいコレクションはすべて小売店で約2〜3週間販売される。これにより、同ブランドは購入者からのフィードバックを聞き、自社で売り出す前に初期の販売動向を知ることが可能だ。全体的に見て、リテールとの関係により、ブランド創設者としての彼女自身のスキルが磨かれていると、リー氏は述べている。
「円滑に業務を進めることが求められる。なぜなら、商品を時間通りに納品することに依存している外部のクライアントがいるからだ。それは、偉大な能力であり、それによって商品が売れる」と、リー氏はいう。「このセットは2カ月ほど遅れていて、今度発送します、というようなことを伝える選択肢はアララにはない。規律、統制が必要であり、それはどのブランドにも価値があるものだ」。