WhatsApp(ワッツアップ)はプライバシー規約を緩め、電話番号などユーザー情報の一部をFacebookと共有することを決定した。Facebookは2014年にWhatsAppを買収している。
今回の決定は、多くのコアユーザーたちには裏切り行為として写っているようだ。というのも、WhatsAppのファウンダーたちは、Facebookに買収されても厳重なプライバシー保護という点に影響は出ないと約束していたからだ。
WhatsApp(ワッツアップ)はプライバシー規約を緩め、電話番号などユーザー情報の一部をFacebookと共有することを決定した。Facebookは2014年にWhatsAppを買収している。
今回の決定は、多くのコアユーザーたちには裏切り行為として写っているようだ。というのも、WhatsAppのファウンダーたちは、Facebookに買収されても厳重なプライバシー保護という点に影響は出ないと約束していたからだ。
WhatsAppの10億人のユーザーたちがこのニュースに眉をひそめている一方で、マーケターたちはビジネスの匂いを嗅ぎつけている。ブランドはWhatsAppを通して、ユーザーにレシートを送ったり、宅配物のアップデートや緊急時の情報、飛行機の離着陸の遅れなどを連絡できるようになると考えているという。
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新しくユーザー情報を入手できることは、ブランドにとって非常に魅力的である。しかし、最初にWhatsAppのユーザー情報を利用するブランドには、ユーザーたちからの否定的な反応が返ってくるかもしれない、とも予想されている。それが、どれほど大きいリスクなのか、慎重に測る必要がある。
「アプリの死」
サービスブランドは、顧客の質問に回答するため、すでにWhatsAppを利用している。オランダのABNアムロ(ABN AMRO)銀行は、毎週平均して3000件のメッセージをWhatsApp経由で受け取ってきた。ソーシャルメディアマネージャーであるジェロエン・ヴァン・デヴェン氏によると、チャンネルの宣伝は、ほとんど行っていないという。「(WhatsAppは)ようやく公式にオープンなものにするべきときが来たと、気づいたようだ」と、彼は語る。
ヴァン・デヴェン氏によると、WhatsAppの現行のスパムポリシーでは、ブランドが大量にメッセージを送信することは難しいという。しかし、もしこれが変更されれば、WhatsAppをFacebookやTwitterと同じように、重要なカスタマーサービスのチャンネルとして活用できるようになると、彼は考えている。
保険会社ダイレクトライングループ(Direct Line Group)のデジタルソーシャルエンゲージメントの責任者であるラルーカ・エフォード氏は、来年のプランミーティングにおいてWhatsApp上のカスタマーサービスが、すでに議題にあがっていると語った。
ソーシャル@オグルビィ(Social@Ogilvy)のマネージングパートナーであるトーマス・クランプトン氏は、WeChat(微信)やLineのように全般的なオペレーションシステムに進化するポテンシャルをWhatsAppは擁しているという。それが実現すれば、タクシーを呼んだり、フライトの荷物をチェックインしたりといったサービスを、アプリ内で提供できるようになる。
「人々はそれを歓迎するだろう。そして、モバイルメッセンジャーがアプリを駆逐していくはずだ。WhatsAppは、『アプリの死』を宣告したんだ」と、彼は言う。
クランプトン氏のクライアントは、すでにボットやアプリ内のサービスに取り組んでいる。彼のエージェンシーはルームボット(the Roombot)というFacebookメッセンジャー用のボットを作った。これはスタッフが利用可能な部屋やランチメニュー、そしてWi-Fiのパスワードを見つけるのを助けるものだ。ローンチから1カ月が経ち、いまでは1日に300回ほどの利用回数を記録している。
「気持ち悪い」ブランドは失敗する
チャット形式で商売を行えるという、WhatsAppのポテンシャルにマーケターたちは興奮しているが、失敗するブランドも当然出てくるだろう。ユーザー情報を活用したサービスでは、「気持ち悪い」とユーザーに思われてしまうと終わりなのだ。
エッセンス(Essence)のパートナーシップとエマージングメディア部門の責任者であるリアム・プーク氏は、WhatsAppは個人的なプラットフォームとして人々は捉えており、ブランドからのメッセージをユーザーは期待していないと指摘する。プーク氏が例として挙げたのが、通信会社O2が行ったテキストメッセージを通じて第三者がメッセージを送るというプロジェクトだ。このプロジェクトは上手くはいかなかった。「人々は(第三者からのメッセージが)スパムメールだと思った。ユーザーには嫌がられたのだ」と、彼は言う。
デジタスLBi(DgitasLBi)のメディア戦略責任者であるラース・グレン氏も、Facebookと共有することになっているユーザー情報に危惧を感じている。クライアントとどうやってデータを利用するかあれこれ探る前に、WhatsAppのデータがどんな意味を持っているか、エージェンシーは正確に理解しなくてはいけないという。電話番号といったユーザー情報を使うことは、「気持ち悪さ」のレベルでは、かなり高いものだとグレン氏は説明する。「もし間違ったやり方でデータを使ってしまうと、ブランドにとっては相当な痛手を被る可能性もある」。電話番号の流出はマーケターにとって、まさしく悪夢なのだ。
また、サービスのオプトアウト、という側面でも懸念がある。広告業界で使われるデバイス用のIDは通常変えられるようになってきた。ユーザーがトラッキングされたくない場合はIDを変えられるようになっているのだ。しかし、自分の電話番号は、そう易易とは変えられない。
「(WhatsAppは)データのプライバシーを重要視しているという印象を与えておきながら、電話帳の詳細を共有しようとしている。バックラッシュ(跳ね返り)が起きるだろう」と、彼は語った。
Grace Caffyn(原文 / 訳:塚本 紺)
Photo by Sam Azgor(Creative Commons)