2022年11月、オープンAI(OpenAI)がChatGPTを導入して以来、マーケティング業界はジェネレーティブAIを広告の将来に欠かせない存在として歓迎しているかに見える。
だが実際、導入から間もなく1年となる現在もなお、ペプシ(Pepsi)やフリトレー(Frito-Lay)、レイジーボーイ(La-Z-Boy)といったメインストリームブランドは依然、ブランドセーフティや著作権、プライバシー問題を懸念し、この新テクノロジーの採択に二の足を踏んでいる模様だ。
AIツールは一般に、マーケティングをよりよく、より速く、より安いものにし、キャッチコピー作りやビジュアル/オーディオ制作といった仕事を迅速化するとして、もてはやされている。事実、広告エージェンシーの少なくとも71%はすでにジェネレーティブAIを採用していることが、最近のDIGIDAY+リサーチで明らかになった。しかしながら、その利用法については、マーケターのあいだでコンセンサスがいまだ得られていない模様であり、AI技術に慎重な姿勢で手を出すか、あるいはまったく出さないかの二極化が起きている。
ChatGPTはいまだに発生期という見方
「明らかに、我々にも試せることが、そしてその結果を目にし、そこから学べることがいくつかある」と、ペプシのCMOであるトッド・キャプラン氏は話す。「無論、このテクノロジーが非常に期待できるものであり、今後極めて重要な存在になっていくことは間違いないだろうが、いまは依然として、自身の価値を証明しているところであり、潜在力という点で言えば、いまだ発生期にある」。
親会社ペプシコ(PepsiCo)はAIの導入に動いていると言われており、「数百万」ドル(数億円)を投じて同テクノロジーを取り入れ、新製品やフレーバーの制作、売上の分析などに活用していくと、アクシオス(Axios)は予想している。同社のライバル、コカ・コーラ(Coca-Cola)も同様で、最近はプラティック・タカール氏をジェネレーティブAI部門シニアディレクターに任命した。しかし、飲料ブランドのペプシ自体はAIツールの評価が定まるまで、様子見の姿勢を取るつもりだと、キャプラン氏は話す。「つまり、AIによる前進に対する我々の見方という点において、大きな違いが生じる時点までは、ということだ」と、同氏は話す。
この態度は、同じくペプシコの一部門でスナック菓子ブランドのフリトレーも同様であり、フリトレー・ノース・アメリカ(Frito-Lay North America)およびクエーカー(Quaker)でクリエイティブ/デジタル部門VPを務めるクリス・ベリンジャー氏いわく、フリトレーはジェネレーティブAIに慎重に接しているという。「ジェネレーティブAIのなかに存在するありとあらゆる要素を、ありとあらゆる微妙な意味合いを把握したうえで、我々は極めて慎重な姿勢を取っている」。
躊躇は共通のテーマ
家具ブランドのレイジーボーイの場合、AIの採択は依然、AI搭載のリクライニングソファ、ザ・デクライナー(The Decliner)に留まっており、同社はこれを最近のマーケティングキャンペーンの一環として発表した。
新テクノロジーを巡っては、大手企業はしばしばリスク回避型とのレッテルを貼られるものであり、AIには事実、固有のリスクが伴う。何をAIとするかの線引きの曖昧さから、データおよび著作権問題に関する懸念に至るまで、未知数の部分が依然として非常に多いからだ。それゆえ、企業と購買者との繋がり強化や規模拡大の一助になると証明されるまで、AIの使用はよくても実験レベル止まりだと、キャプラン氏は話す。
2022年11月、オープンAI(OpenAI)がChatGPTを導入して以来、マーケティング業界はジェネレーティブAIを広告の将来に欠かせない存在として歓迎しているかに見える。
だが実際、導入から間もなく1年となる現在もなお、ペプシ(Pepsi)やフリトレー(Frito-Lay)、レイジーボーイ(La-Z-Boy)といったメインストリームブランドは依然、ブランドセーフティや著作権、プライバシー問題を懸念し、この新テクノロジーの採択に二の足を踏んでいる模様だ。
AIツールは一般に、マーケティングをよりよく、より速く、より安いものにし、キャッチコピー作りやビジュアル/オーディオ制作といった仕事を迅速化するとして、もてはやされている。事実、広告エージェンシーの少なくとも71%はすでにジェネレーティブAIを採用していることが、最近のDIGIDAY+リサーチで明らかになった。しかしながら、その利用法については、マーケターのあいだでコンセンサスがいまだ得られていない模様であり、AI技術に慎重な姿勢で手を出すか、あるいはまったく出さないかの二極化が起きている。
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ChatGPTはいまだに発生期という見方
「明らかに、我々にも試せることが、そしてその結果を目にし、そこから学べることがいくつかある」と、ペプシのCMOであるトッド・キャプラン氏は話す。「無論、このテクノロジーが非常に期待できるものであり、今後極めて重要な存在になっていくことは間違いないだろうが、いまは依然として、自身の価値を証明しているところであり、潜在力という点で言えば、いまだ発生期にある」。
親会社ペプシコ(PepsiCo)はAIの導入に動いていると言われており、「数百万」ドル(数億円)を投じて同テクノロジーを取り入れ、新製品やフレーバーの制作、売上の分析などに活用していくと、アクシオス(Axios)は予想している。同社のライバル、コカ・コーラ(Coca-Cola)も同様で、最近はプラティック・タカール氏をジェネレーティブAI部門シニアディレクターに任命した。しかし、飲料ブランドのペプシ自体はAIツールの評価が定まるまで、様子見の姿勢を取るつもりだと、キャプラン氏は話す。「つまり、AIによる前進に対する我々の見方という点において、大きな違いが生じる時点までは、ということだ」と、同氏は話す。
この態度は、同じくペプシコの一部門でスナック菓子ブランドのフリトレーも同様であり、フリトレー・ノース・アメリカ(Frito-Lay North America)およびクエーカー(Quaker)でクリエイティブ/デジタル部門VPを務めるクリス・ベリンジャー氏いわく、フリトレーはジェネレーティブAIに慎重に接しているという。「ジェネレーティブAIのなかに存在するありとあらゆる要素を、ありとあらゆる微妙な意味合いを把握したうえで、我々は極めて慎重な姿勢を取っている」。
躊躇は共通のテーマ
家具ブランドのレイジーボーイの場合、AIの採択は依然、AI搭載のリクライニングソファ、ザ・デクライナー(The Decliner)に留まっており、同社はこれを最近のマーケティングキャンペーンの一環として発表した。
新テクノロジーを巡っては、大手企業はしばしばリスク回避型とのレッテルを貼られるものであり、AIには事実、固有のリスクが伴う。何をAIとするかの線引きの曖昧さから、データおよび著作権問題に関する懸念に至るまで、未知数の部分が依然として非常に多いからだ。それゆえ、企業と購買者との繋がり強化や規模拡大の一助になると証明されるまで、AIの使用はよくても実験レベル止まりだと、キャプラン氏は話す。
「AIという言葉一つ取っても、そこにはさまざまな意味が付随するし、多くの人はそれを恐怖に感じる」と、デジタルエージェンシーのザ・ファーストムーヴメント(The1stMovement)の創業者およびCEOであるミン・チャン氏は指摘する。
業界がWeb3、あるいは次世代のインターネットと目されるものへの転換点に立つなか、躊躇は実際、共通のテーマだと思われる。いまのところ、ChatGPTや、ライバルであるメタ(Meta)のLlama 2(ラマ2)、イーロン・マスク氏の新AI会社、xAI(エックスエーアイ)といったAIツールはいずれも、いわゆるブラックボックスのなかにある。
つまり、AIシステムとその意思決定過程の仕組みについて、人類はいまだ理解できていない。結果、AIを褒めそやす声が高まる一方、マーケター勢のブランドセーフティを巡る懸念も同じく高まる、という事態が生じている。
周囲から大きく取り残される可能性
「AIツールがもてはやされているのは事実だが、投資に対する見返りが潜在的リスクに見合うと実証するケーススタディがごく少ないのも事実であり、その点には留意が必要だ」と、オーセンティック(Authentic)のCEOでAIキャンペーンツール、クイラー(Quiller)の創業者であるマイク・ネリス氏はeメールで指摘する。
「ただし、新進テクノロジーへの投資を躊躇しつづける大手ブランドは、気づいたら周囲から大きく取り残され、規模は小さいが、より志の高い、進んでリスクを冒すブランドとの競争を強いられている、という事態に陥りかねない」と、ネリス氏は続ける。
また、「AIには、ペプシといった巨大企業に備わる財政的/経営的優位性のない競合ブランド勢にしてみれば、競争の場を平等にしてくれる潜在力がある。逆に言えばそれは、そうしたテクノロジーへの様子見姿勢に付随するリスクにほかならない」と言い添えた。
すでにブラックボックスを開いている
とはいえ、多くのブランドはすでにAI苦悩状態を脱し、比較的早い時期にジェネレーティブAIのいわゆるテスト&ラーン段階に入っている。
たとえば、テックブランドのレノボ(Lenovo)は陰でAIを試し、「大きなブラックボックスではない」との確信を経て、AIツールおよび戦略の採択に向かっていると、同社のエクゼクティブリードでグローバルメディアCEOのリック・コーテヴィル氏は話す。同社はクリエイティブキャンペーンの最適化にAIの活用を考えているそうだが、具体的な詳細については語られなかった。
航空会社ジェットブルー(JetBlue)もまた、ターゲットマーケティング努力や顧客セグメンテーションの促進の一助としてAIを活用している。ただし、レノボと同じく、同社も未知数の部分については承知しており、この新たな波にあくまで慎重な姿勢で臨んでいると、同社のマーケティング、プロダクト、ロイヤルティ部門のトップであるジェイン・オブライエン氏は話す。「いまは皆でブラックボックスのなかをのぞき込み、これは一体何なのか、どこに向かうのか、と考えているところだ。そして、未来が見える水晶玉は我々の誰も持っていない」。
[原文:What’s stopping big brands like Pepsi and Frito-Lay from embracing AI?]
Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)