eスポーツ組織のフェイズ・クラン(FaZe Clan)が、新たなパートナーシップを発表した。これで5週連続だ。これは、最大規模を誇るチームでさえ、いまなお自社ブランドを新たなファンダムへ広げる必要があるということの証となる。それでなければ、フェイズ・クランのこれだけの成長はありえない。
eスポーツ組織のフェイズ・クラン(FaZe Clan)が、新たなパートナーシップを発表した。同団体がパートナーシップを発表するのは、これで5週連続。今回のパートナーシップの相手は、日本人現代アーティストの村上隆氏だ。これは、最大規模を誇るチームでさえ、いまなお自社ブランドを新たなファンダムへ広げる必要があるということの証となる。それでなければ、フェイズ・クランのこれだけの成長はありえない。
フェイズ・クランのマーケティング担当バイスプレジデント、ターブ・クーパーマン氏は「我々のオーディエンスと波長の合うものなら、それが何であれ、そこに加わりたいと思っている。それがパートナーシップでも、ほかの何かでも」と語る。「我々のオーディエンスに何ひとつメリットがない『単に金を得ること』に興味はない」。
Xbox 360との契約が示すもの
フェイズ・クランは今年5月、Xbox 360と契約を結んだ。この契約ほど、いまのフェイズ・クランの勢いを端的に物語るものはほかにないだろう。Xbox 360ブランドの11周年を記念して、両社はコブランディンググッズを発売した。
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フェイズ・クランとXbox 360の関係はこれだけにとどまらない。実はすでに、その枠を広げたコラボレーションが両社のあいだで進行している。その契約の対象には、Xboxが誇るビッグタイトル数本だけでなく、対面型イベントも含まれる予定だ。
「もはやフェイズ・クランの中心は小型契約ではない」と、クーパーマン氏は語る。「ターゲットは、ブランドのストーリーをしっかりと伝えてくれる、大局を見据えた契約だ。フェイズ・クランは金を払う価値があるものを追い求めているわけではない。そこにある相乗効果からメリットが得られる、強いブランドを追い求めているのだ」。
音楽マーケティングを参考に
契約が結ばれたことは驚きではない。何といっても、Xboxはゲーム界で最大級のブランドだ。だが、それは前例のないことだった。フェイズ・クランは、Xboxブランドにアクセスできた最初のeスポーツ団体なのだ。それがなぜなのかは理解に難くない。フェイズ・クランは、ほかのeスポーツ組織の多くとは一線を画しているからだ。eスポーツチーム、メディア企業、クリエイティブエージェンシー、D2Cビジネス、制作、そしてタレントマネージメント。これらすべてがひとつに融合されたのが、フェイズ・クランなのだ。Xboxはゲームファンダムの深みへと分け入っていくフェイズ・クランのルートであるが、それとは別の作用もある。
「フェイズ・クランがパートナーシップを締結し、異なるファンダムに参入するたびに、彼らは自分たちとパートナーの双方にとってのメリットは何なのかを考えている」と、ストラテジースタジオ、ボデイシャス(Bodacious)の創業者、ゾーイ・スキャマン氏は語る。
このやり方は、音楽マーケティングのプレイブックから拝借したものだ。たとえば、ラッパーのジェイ・Zは自身のレコードレーベル、ロック・ネイション(Roc Nation)を大企業とのパートナーシップを通じて立ち上げ、その収益を次のレベルへと発展させた。簡単に聞こえるが、フェイズ・クランが証明するように、成功させるのは容易ではない。
誠実な印象を持ってもらうため
そこには多くの労力が注ぎ込まれて、双方の認識が一致する体制が整えられている。通常の場合、ブランドは権限の一部をクーパーマン氏率いるチームに譲らなければならない。何が行われるにせよ、フェイズ・クランのファンに誠実な印象を持ってもらうためだ。少なくともXboxに関しては、このプロセスは契約が正式なものになる前から始まった。
「私の兄が、マイクロソフト(Microsoft)のパートナーシップを全面的に扱うエージェンシーの関係者と親しくしていたので、その人物と会って、どうすればパートナーシップを成功させられるかについて、いろいろなことを話し合った」と、クーパーマン氏は語る。「この最初の段階でも重要だったのは、フェイズ・クランの創設メンバーはXboxを通じて出会い、その後、ともにフェイズ・クランを立ち上げたということだった」。
このことから、フェイズ・クランがパートナーシップというものをどのように見ているのかがわかる。
そこには経営陣の熱意が注ぎ込まれるのが慣例となっている。このマイクロソフトとの契約においても、この企画の売り込みのサポート役を、創業者のひとりであるフェイズ・バンクス氏が買って出ている。この熱意はオーディエンスにも影響を及ぼす。「別のコンピューターブランドを選ぶこともできた。我々に対する関心は確実にある」と、クーパーマン氏は語る。「だが、我々はフェイズ・クランの『ストーリー』に忠実であり続けたかった。結局のところ、このビジネスはゲームコミュニティの信頼の上に成り立っているのだ」。
オーディエンスと近しい存在
ここ最近の契約では、このアプローチがいっそう明確になっている。
村上隆氏やスポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)との契約など、ここ最近のそれはつながりとともに多様性も示している。これらはどれも、フェイズ・クランのオーディエンスのパッションポイントを包含している。さらに重要なのは、これらのエリアが「手頃である」という点だ。フェイズ・クランのパートナーシップには、それがきっかけで、ファンがゲーム周辺の文化的キャッシュを購入できるようにする傾向が見られる。フェイズ・クランがラグジュアリーブランドとのコラボレーションを拒んでいるわけではない。むしろ、それを望んでいるといってきた。だが、同社のプライオリティは、常にオーディエンスが近づきやすい存在でいることにある。
「普通の子どもには、ルイ・ヴィトンのバッグなどとても買えない」と、クーパーマン氏は語る。「たしかに、我々もルイ・ヴィトンは好きだ。ルイ・ヴィトンとのパートナーシップが刺激になって、子どもたちが夢を追いかけるようになるかもしれない。だが、我々が目指しているのは、子どもの財布にもやさしいパートナーシップだ」。
それゆえ、フェイズ・クランは昨年、ストリートウェアブランドとの提携を強化した。ファッションブランドのチャイナタウン・マーケット(Chinatown Market)、腕時計ブランドのGウォッチ(G-Watch)、ラッパーのジュース・ワールド(Juice WRLD)などとのコラボレーションである。
「フェイズ・クランのパートナーシップが、ファンの興味の近くから離れることはない」と、スキャマン氏は語る。「eスポーツがフェイズ・クランのアンカーポイントではあるが、ファッション、アート、投資など、多岐にわたるパートナーシップを介して、さまざまなエリアに進出しているという意味では、eスポーツが同社のすべてではないのだ」。
[原文:‘Whatever our audience is vibing with’: How Faze Clan develops brand partnerships]
SEB JOSEPH(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)