米国のビューティブランドの間で、インスタグラムのEコマースにおける優先順位が高まっている。5月のDropセクション発表に続き、6月にもビジュアル検索機能(Visual Search)やARを使った試着機能、ショッピングに特化した広告の拡大といった新機能が追加され、ブランドの認知、商品の発見に貢献している。
ソーシャルショッピングの将来性に期待する米国のビューティブランドのあいだでは、この1年でインスタグラムのeコマースにおける優先順位が高まっている。
インスタグラムは6月23日、ビジュアル検索やチェックアウト(Checkout)でのAR試着機能の拡充、ショッピングに特化した広告といった新機能を発表し、ショッピング機能の開発を継続していく姿勢を見せた。これらは5月26日に発表したプラットフォーム上の「ドロップ (Drops)」セクションなど、ここ数週間でインスタグラムが展開している一連の新たなショッピング機能に続くものだ。インスタグラムのアップデートに加えて、Facebookも同23日にショップ(Shops)機能をWhatsApp(ワッツアップ)とFacebook Marketplace(マーケットプレイス)に拡大している。
「私たちにとってもっともも強いオーディエンスがいるのは間違いなくインスタグラム」と語るのは、自身のブランド、ドラゴンビューティ(Dragun Beauty)を立ち上げたビューティインフルエンサーのニキータ・ドラゴン氏だ。
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同ブランドは、6月17日にインスタグラム限定スペシャルエディションのプライド(Pride)セットを発売。このセットはドラゴン氏が自らのインスタグラムチャンネルにおけるライブストリームグループチャット、ストーリーズ、メインフィードでプロモーションを行い、またインスタグラムの新しい機能「ドロップ」でも紹介されたところ、1時間足らずで完売している。「これまでインスタグラムと一緒に行ってきたことのなかでも、まさに最大の取り組み」とドラゴン氏は言う。
インスタグラムのショップのビジュアル検索は、今後数カ月に渡って米国で試験運用される。写真に写っているアイテムに似た商品のリストをユーザーがタップして検索できるようにするというのがインスタグラムによる当初の計画だが、最終的にはスマホで写真を撮影すれば現実世界で実際に見たアイテムを検察できるよう拡大していく予定だ。
期待値が高い新機能、AR試着
Facebookも、2019年にインスタグラムチェックアウトとともに限られたブランドに向けて初めてローンチしたAR試着の範囲を拡大している。プレスリリースによれば、AR試着の企業であるパーフェクト(Perfect Corp.)やモディフェイス(Modiface)との新たなAPI統合を発表し「ブランドがAR製品カタログを広告に含めるための新しいツール」を導入する計画だという。
Facebookの広報担当者によると、Facebookは現在米国で「ARダイナミック広告(AR Dynamic Ads)」を利用できるようになっているとのこと。まずはインスタグラムで広告にAR試着をローンチし、続いてFacebookでも導入する。ローラメルシエ(Laura Mercier)とラクメ・インディア(Lakme India)はインスタグラムのショップにAR試着を追加し、フーダビューティー(Huda Beauty)は広告に新しいAR試着を使用している。
「我々にとってインスタグラムでのEコマースは非常に重要だ」と話すのは、5月17日にヴィーガン コレクション(Vegan Collagen)のマスカラの販売において、インスタグラムのショッピングに重きを置いたパシフィカ ビューティ(Pacifica Beauty)のソーシャル担当VPジンジャー・ペルツ氏だ。「インスタグラムのフィードやストーリーのコンテンツを、自分たちのソーシャルPDP(商品説明ページ)のマーチャンダイジングとして捉えている」。
このブランドのマスカラは発売に合わせて「ドロップ」タブで紹介され、ペルツ氏いわく、「親指を止めるようなコンテンツ」を中心に、インスタグラムのさまざまな新しいショッピング機能を駆使してマーケティングを行っている。商品ページのリール、ストーリーズ、メインフィードにはブランドとインフルエンサー両者のコンテンツが投稿されている。「これまでパシフィカの製品を購入したことがないような人に発見され、購入を検討してもらうために最高の公開タイミングを提案している」。
ドロップブランドの認知度向上
新しいドロップは、セレブリティやインフルエンサーのレーベルを含むソーシャルに着目した話題性のあるビューティブランドの間でとくに人気がある。ドラゴンビューティ(Dragun Beauty)やパシフィカ(Pacifica)に加えて、フェンティスキン(Fenty Skin)、KKWビューティ(KKW Beauty)、ハウスラボ(Haus Labs)、シャーロット・ティルブリー(Charlotte Tilbury)、モーフィー(Morphe)、フーダビューティー(Huda Beauty)、ストレンジバード(Strange Bird)などのブランドがドロップで紹介されているほか、パトリック・スターが手がけるワンサイズ(One/Size)やセレーナ・ゴメスのレア・ビューティー(Rare Beauty)、ローレス(Lawless)といったセフォラ(Sephora)のドロップも紹介されている。このタブは最終的にインスタグラムの既存の商品ローンチ機能を一元化して提供している。
「私たちはデジタルファーストのブランドで、製品を販売する上で不可欠なのが、ソーシャルショッピングなのだ」と語るのは、ハウスラボのソーシャルメディアマネージャーであるニコール・ジャマル氏だ。4月27日に発売された同ブランドの新製品「PhDハイブリッド・リップオイルステイン(PhD Hybrid Lip Oil Stain)」が、新しいドロップタブで紹介された。Amazonでもかなり積極的に展開している同ブランドは、インスタグラムのショップ機能が米国以外でも利用できるようになったら、インスタグラム限定のドロップを行う予定だ。
「商品タグ経由ですべてのドロップがインスタグラム上にある」と話すドラゴン氏は「確かにこれまでもできる限りあらゆる機会を活用してきた」という。新しいドロップセクションができる以前から、ドラゴン・グラスリキッドリッピー(Dragun Glass Liquid Lippies)の発売の通知のために10万人のユーザーが登録するなど、ドラゴンビューティはインスタグラムの商品発表機能で成功を収めている。「アーリーアダブターになるとメリットがある」と彼女は言う。
インスタグラムが切り拓く新しい道
それでもインスタグラムはまだ初期段階にあるため、ほとんどのブランドの売上の大部分を占めるまでには至っていない。しかし、ブランドの認知度や商品の発見には貢献している。
「ドロップタブに掲載されたことによる最大のメリットは、ブランドや商品のローンチが発見されやすくなること」とペルツ氏は言う。インスタグラムでのショッピング機能の主な利点は「商品が発見されることで、自社サイトや小売店にハロー効果がもたらされることだ」。
ハウスラボにとって、新しいドロップ機能は特に「視認性の向上、リーチの拡大、新しいオーディエンスへの露出の増大」に有効だとジャマル氏は述べる。一方、シームレスな統合は「興味、話題性、緊急性」に役立っている。
ブランドは、インスタグラムショッピングの将来的な可能性に大きな期待を寄せている。「これは、eコマースを考える上で、まったく新しいやり方だ。インスタグラムはこの分野で非常に大きく進歩しており、他のソーシャルチャネルがソーシャルコマースに進出する道を開いてもいる。5年後には、これが当たり前になっているだろう」と、ペルツ氏は語った。
[原文:What Instagram’s expanded shopping features mean for beauty]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)