インフルエンサーのマーケティングについて語る人は多いが、その価格の仕組みを理解する人はほとんどいない。そんななか我々は、インスタグラム、Snapchat、YouTubeでの施策において、ブランドが参考にできるガイドラインがないか、エージェンシーや芸能エージェンシー、そしてソーシャルスター自身に訊ねてみた。
インフルエンサーのマーケティングについて語る人は多いが、その価格の仕組みを理解する人はほとんどいない。
インフルエンサーにかかるコストは、ひとつのプラットフォームあるいはソーシャルネットワークを通して数百ドル(数万円)から数百万ドル(数億円)まで幅広い。なぜならそこには、排他性やエンゲージメント率、フォロワー数や使用権などあらゆる要因があるからだ。
インフルエンサーの検索プラットフォームであるハイパー(Hypr)でリードアカウントマネジャーを務めるヘンリー・ランガー(Henry Langer)氏は、「インフルエンサーというポストに対する価格設定は、ある種芸術であり、また科学でもある」と語った。「CPMやCPCといった用語は当てはまりにくい(こともある)」。
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インフルエンサーマーケティングにおいて、しっかりした価格体系が構築されていないなか、我々はインスタグラム、Snapchat、YouTubeでのコマーシャル契約の小切手を切る際、ブランドが参考にできる一般的なガイドラインがないか、エージェンシーや芸能エージェンシー、そしてソーシャルスター自身に訊ねてみた。
インスタグラム:フォロワー10万人あたり1000ドル
ソーシャルメディアエージェンシーのアテンション(Attention)で、コンテンツおよびパートナーシップのアソシエイトディレクターを務めるチェルシー・ナフテルバーグ氏のチームは、インスタグラムのインフルエンサーに対し、フォロワー10万人あたり1000ドル(約10万円)という基準に基づいて、支払い額を試算している。それからエンゲージメント率、キャンペーン期間、クライアント予算といった、ほかの要因から価格を調整して取引交渉を行う。
「また、一流ブランドからのオファーなら、インフルエンサー自身がその商品や体験に興奮し、無償でやってくれることもある」と、ナフテルバーグ氏は語る。「また、インフルエンサーと直接かかわるのではなく、芸能エージェンシーと交渉する場合は、その手数料も考慮して、余分に予算を組むことになる」。
ランガー氏によると、ブランド各社はフォロワー数5万人未満のソーシャルスターのインスタグラム投稿なら250ドル(約2万5000円)からはじめ、1投稿あたりのフォロワー数が10万人増えるごとに、約1000ドルを追加することになるのではないか、という。知名度の高いセレブなら、価格は跳ね上がる。たとえばキム・カーダシアンは、インスタグラムの写真1枚で25万ドル(約2500万円)以上請求したと報じられている。
Snapchat:キャンペーン24時間で500ドルから
Snapchatにはオーディエンス数というものが存在しないため、同プラットフォーム上のソーシャルスターは一般的にアクティブビュー数に基づいてコマーシャル契約料の交渉を行う。SnapchatのインフルエンサーであるCyrene Quiamco氏によると、Snapchatでは同じ人が同じ投稿を何度見ても「1ビュー」とカウントされる。また、Snapchatでのビューというのは、ユーザーが自分の意思で閲覧することが多いため、同プラットフォームでの価格はほかのネットワークより高くなる可能性があるという。
Quiamco氏は、約35名のSnapchatインフルエンサーと話し、ブランドとエージェンシーに提示された以下の料金表をシェアしてくれた(ビュー数は24時間有効)。
- 1000〜5000ビュー で 500ドル(約5万円)
- 5000〜1万ビュー で 1000〜3000ドル(約10〜30万円)
- 1万〜2万ビュー で 3000〜5000ドル(約30〜50万円)
- 2万〜5万ビュー で 5000〜1万ドル(約50〜100万円)
- 5万〜10万ビュー で 1万〜3万ドル(約100〜300万円)
ある匿名のインフルエンサーによると、価格を決定するのはエージェンシーであることが多いという。Snapchatのマーケティング専門ショップは、一般的にインフルエンサーごとの予算を事前に仮決定し、コンテンツ向けのソーシャルスターを一括で雇う。そしてエージェンシーは、最小限のターンアラウンドタイムで彼らとキャンペーン20回分の契約を締結する。その後、また別のソーシャルスターを集め、そのサイクルを続けることになる。
「これは、インフルエンサーにとって負担は大きいが、エージェンシーのコスト削減に大いに寄与する」と、前述のインフルエンサーは述べた。そこから各キャンペーンのインフルエンサーごとに追加分を上乗せしていく。ときにはそれが、もとの価格の90%に上ることもある」。
YouTube:フォロワー10万人あたり約2000ドル
YouTubeのインフルエンサー価格は、インスタグラムやSnapchatよりもはるかに細分化されている。YouTubeならマーケターが特定のオーディエンスを掘り下げることができ、動画コンテンツは画像やテキストベースの投稿よりもはるかに労力を要するからだ。
ランガー氏によると、登録者数5万人以上のユーチューバーの場合、マーケターは動画1本につき、フォロワー数10万人ごとに約2000ドル(約20万円)支払い、動画の価格が2万5000〜5万ドル(約250万〜500万円)になる、登録者数約100万人の地点を上限とすることが考えられるという。
「バート・ベイカーやギャビー・ショーのような超トップユーチューバーともなれば、10万ドル(約1000万円)のラインを超えるのは簡単だろう」と、彼はいった。
もちろん、それはYouTubeのインフルエンサーマーケティングの一般的な価格指標に過ぎない。たとえば、掲示板サイトのレディット(Reddit)の運営支援グループのあるレディターは、登録者が数百万人の超人気ユーチューバーなら2〜3作品で1万7600米ドル(約190万円)、または動画内のCMリンクを1件追加するごとに2万2000ドル(約240万円)のコマーシャル契約料を提示したと投稿した。
芸能エージェンシーのセレクトマネジメント(Select Management)のパートナー兼共同設立者のアダム・ウェスコット氏によると、YouTubeのコマーシャル契約料の価格設定は、30秒間ブランドについて語るものなのか、カスタマイズされたプロモーション動画なのか、もしくはほかのフォーマットなのか、によって1動画当たり20万ドル(約2000万円)から50万ドル(約5000万円)まで幅があるという。
ウェスコット氏は「価格は登録者数や視聴時間、またそのユーチューバーがどの業界に注力しているか、ということにもよる」と話す。
そして登録者が200万人を超えるジジ・ゴージャスのようなユーチューバーは、提携ブランドを統合した動画1本で10万ドル(約1000万円)以上を稼ぐことができると、同氏は述べた。