中国系カナダ人の俳優・ミュージシャンのウー・イーファンが、世界トップのラグジュアリーブランドの広告塔だったのは先週(7月19日の週)までの話だ。今では、レイプ容疑が浮上し、彼の#MeTooスキャンダルがブランドの売り上げに影響を与えるかもしれない。
中国系カナダ人の俳優・ミュージシャンのウー・イーファンが、世界トップのラグジュアリーブランドの広告塔だったのは、7月19日週までの話だ。いまでは、彼の#MeTooスキャンダルがブランドの売り上げに影響を与えるかもしれない。
セレブをアンバサダーにするリスクが浮き彫りに
7月中旬、彼のレイプ容疑が浮上したとき、アンバサダー契約を解消したブランドには、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)、ブルガリ(Bulgari,)、ランコム(Lancôme)、ロレアル メン(L’Oréal Men)があった。インターネットの反応はすばやく、アンバサダー契約を切るようにという声が上がった。これらのブランドの中国市場の広告塔であるウー氏の没落によって、エンゲージメントとセールスをセレブに依存するリスクが浮き彫りになった。
「スポークスパーソンのスキャンダルに巻き込まれたブランドをボイコットするのは、中国のネット市民にとって日常茶飯事。ブランドが迅速に対応しなければ、売り上げと評判に悪影響が及ぶだろう」と、コンサルティング会社のリサーチ24h(Reach24h)のリサーチアナリストであるイエ・チェン氏はいう。
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迅速対応のブランドは勝ち組
これらの世界的ブランドが関係を消する2日前に、中国のビューティブランドKANSは、ウー氏とのアンバサダー契約を解消した。チェン氏は、この迅速な対応は、時間がかかったほかのブランドと比べてずっと肯定的に受け止められたという。
「対応がもっとも早かったKANSは、このスキャンダルでの最大の勝ち組になった。スキャンダル以前は中国では普通のブランドで、若い消費者にさえもそれほど知られていなかったが、一夜にして有名になり人気ブランドになった」。チェン氏によると、対応発表後に、同ブランドのライブストリームの視聴回数は370万回に達し、一晩で542万人民元(約9200万円)の売り上げを得たそうだ。この露出により、KANSのライブストリーマーの2人が淘宝網プラットフォームでもっとも人気を集めた。中国のライブストリーマー王のオースティン・リー氏を上回ったのだ。
その一方で、ランコム、ロレアル メン、ルイ・ヴィトンは、「ソーシャルメディアで人々から批判され、大勢の人たちがそれらのブランド製品の代わりの製品を探し始めた」という。
スキャンダル対応に期待されるスピード
「中国のオンラインではスキャンダルは恐ろしいスピードで広まる。その結果、不祥事が起こったらネット市民はブランドの対応とそのスピードに注目する。ブランドにとって現在の中国市場の重要性を考えると、不祥事にタイムリーに対応するには地元のブランドチームレベルでの自主性が必要だ」。そう語るのは、マーケティングエージェンシー、デジタルラグジュアリーグループ(Digital Luxury Group)のパートナーのアイリス・チャン氏だ。
ウー氏は、2017年にバーバリーの再起に貢献したあと、中国市場において海外ブランドからひっぱりだこになった。2017年にブルガリ、2018年にルイ・ヴィトンのアンバサダーになり、2020年のLVMHの財務報告にも言及されていた。
「とくに今日の中国における外国人セレブの影響力が減少していることを考えると、地元中国のセレブがブランド認知度に大きく貢献していることに異論はない」とチャン氏は述べている。またパンデミック後、ルイ・ヴィトンの上海のショーに登場したウー氏の姿は何億回ものビューを集めたという。しかし、不祥事が起きたときには、このようなセレブへの依存は大きなリスクを意味する。
「まだ実践していないブランドは、長期的にはセレブのスターパワーだけに依存しない中国市場戦略を検討しなければならない」とチャン氏はいう。
ブランドに対するファンの反応はさまざま
レイプ容疑は間違いだというウー氏の話を信じ、彼を擁護している熱烈なファンもいる。
「ブルガリはウー氏と彼のファンにとって特別な意味がある」と、チェン氏はいう。チェン氏によると、5年前に同じような告発があったときでもブルガリはウー氏をブランドアンバサダーに起用し、その後5年間協働した。彼のファンはブルガリのソーシャルアカウントを攻撃し、アンバサダー関係を解消したブルガリに怒りを込めて、「長年の協力に感謝する」と、皮肉まじりのコメントをしている。
[原文:What influencer Kris Wu’s scandal means for brands]
LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:小玉明依)