オランダのビール大手メーカー、ハイネケン(Heineken)は2年を費やし、ついにサプライチェーン中間業者に条件を突きつけられるだけの自信を手にした。2019年同社は、オンラインメディアプラットフォームとアドテクベンダーにこう通告している――より優れた測定結果と創造性を提供せよ。
オランダのビール大手メーカー、ハイネケン(Heineken)は2年を費やし、ついにサプライチェーン中間業者に条件を突きつけられるだけの自信を手にした。同社は2019年、流通構造のリセットから技術スタックの確保に至るまで、簡単に言えば、オンラインメディアプラットフォームとアドテクベンダーにこう通告している――より優れた測定結果と創造性を提供せよ。さもないと、広告エコシステム中間業者としての収益を失うことになるぞ。
「以前はエージェンシー任せだったため、我々にとって最善の利益となる以上のことまで、彼らにさせていた」と、ハイネケンのグローバルメディア部門トップ、ロン・アムラン氏は語る。「いや、エージェンシーが不要と言っているわけではない。必要ではある。ただし、いまや主導権は我々が握っている。つまり、たとえばFacebookバイイングへのリアルタイムアクセスや、モート(Moat)をはじめとするキャンペーンデータへのアクセスが可能になった、ということだ」。
これまでの2年が、同社マーケティングチーム全体のデジタル領域におけるケイパビリティ構築の期間だったとするなら、これからの1年は、予算を動かす事業全般におけるその知識の活用の期間になると、アムラン氏は2019年度の最重要事項に関する説明のなかで語った。
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――透明性の現状ついては、満足している?
劇的に改善はしたが、目指すところにはまだ達していない。不透明な市場全体において、いま現在も、クオリティは劇的に変化を続けている。プログラマティック界には精力のさらなる注入が必要であり、これにはリアルタイムトラッキングとリアルタイムオプティマイゼーションへの投資も含まれる。あるベンダーを我々が気に入っているというだけでは、そのベンダーが好調を維持することにはならない――そこが問題だ。
――デジタル広告業界へさらなるプレッシャーを与えるために、広告主がなすべきことは?
広告主はより良い決断を下すため、ベンダーに対して情報を提供するよう、さらに働きかける必要がある。困難に思えるかもしれないが、我々にはそれを求める権利がある。ベリフィケーション(認証)とデータターゲティング、どちらも期待感があって然るべきだ。
――FacebookとGoogleの柔軟性については?
どちらのプラットフォームもこれまで、非常に柔軟であったとは思えない。たとえば、重複到達率は比較的迅速に解決できる問題だが、両社ともに動く気配もない。DMP(データ管理プラットフォーム)でもほかのツールでも、とにかくリーチに関する諸問題の解決に役立つテクノロジーは存在するが、両社ともに依然、「それは使えない」の一点張りだ。両プラットフォームともクローズドにしておく必要があるため、こちらとしては、そこは甘んじて受け入れるしかない。もっとも、どちらも測定結果は依然、曖昧かつ不鮮明のままだが。
――それが消極的な出費につながっている?
我々のスタンスは、行ったり来たり、というのが実際のところだ。FacebookともGoogleとも、これまでの関係性は決して平坦な道のりと言えるものではなかったが、彼らは我々にとって重要なプラットフォームであり、この1年を通じて進歩は見られている。Facebookはクリエイティブという点で強力であるし、我々がモバイル広告に関する理解を深めるのに大いに役立っている。一方、Googleとの関係については、我々はアルコール飲料メーカーであるため、事情が異なる。彼らは我々とつねに一定の距離を保っているからだ。ほかの広告主には使えるが、我々には使えない商品リストが存在する。我々にとって厳しい点であるのは間違いないが、それでもGoogleとの関係性は向上しており、とくにブランドセーフティとプログラマティックスタックの使用については、大いに進歩が見られる。Googleとは現在、我々の透明性アジェンダとサードパーティ認証へのフォーカスに直結する関係性を構築しているところだ。
――つまり、サプライチェーンをより短くすると?
我々はサプライチェーンを、いわば多脚のスツールと見ている。Facebook、Google、YouTubeがある一方、我々はAdobeのDSP(デマンドサイドプラットフォーム)とも良好な関係を築いている。我々が好むインベントリのさらなる確保という広範な取り組みの一環として、PMP(プライベートマーケットプレイス)取引をいかに増やしていくか、その点を見据えている。つまり、プログラマティックメディアのコストばかりにフォーカスするのではなく、クオリティにも目を向けるということだ。もっとも、この取り組みは1年弱前にはじめたばかりではある。プログラマティックに足を踏み入れる者の多くがコストをKPI(重要業績評価指標)にしているが、そもそもそこが間違っている。透明性の欠如につながるからだ。我々はほかのKPIに目を向けはじめた。ビューアビリティや、自らが広告を出しているコンテンツを見られるようにするテクノロジー、たとえば[ブランドセーフティ機能を提供する]グレープショット(Grapeshot)の活用はその一例であり、いずれもコストとクオリティを比較する際のより良いバロメーターになってくれる。
――GDPR(一般データ保護規則)の施行を受けて、中間業者からのサードパーティデータ購入に関する変化は?
いま我々がフォーカスしているのは、合法的に使用できるデータに関する方向転換だ。ファーストパーティデータを多くは持たない企業として、我々はその拡充に努めてきた。そもそもサードパーティデータ市場自体がない国や、その枯渇が見られる国もある。米国では依然、非常に有用かつアクセシブルではあるが、それすらも、GDPRのような規制を前にして、いつまで続くかわからない。我々独自のデータセットが必要なのは明らかであり、そのデータは当然、正確かつ有用なものでなければならない。我々はデータ企業への道を進んでいる。ただ、プログラマティック支出に影響を与えるほどのビッグデータを獲得するには、まだ至っていない。目指す地点はそこだ。
Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)