コロナ危機を受けて、マーケターたちは自社のキャンペーンやメディアプランを見直している。だが、多くの場合それは新たなものを打ち出すのではなく、ただ一時停止ボタンを押すだけだ。しかし、バーガーキング(Burger King)は違う。グローバルCMOのフェルナンド・マチャド氏に話を聞いた。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けて、マーケターたちは自社のキャンペーンやメディアプランを見直しているが、多くの場合それは新たなものを打ち出すのではなく、ただ一時停止ボタンを押すだけとなっている。
しかし、バーガーキング(Burger King)は違う。同ハンバーガーチェーンは、消費者行動の変化に合わせたデジタル広告と新たなテレビコマーシャルをリリースしている。米DIGIDAYはこのほど、グローバルチーフマーケティングオフィサー(CMO)のフェルナンド・マチャド氏に話を聞き、バーガーキングがどうやってそれを可能にしているのか、また他のマーケターがいまやるべきことについて語ってもらった。
以下、そのインタビューの抄訳だ。一部、読みやすさを重視して編集してある。
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──バーガーキングはこの新たな現実にどう対応しているのか?
最初にやったのは、我々にできる手助けの方法を見つけることだ。広告を通じてではなく、行動を起こすことによってだ。我々は医療機関や医療従事者への寄付を行い、ボランティアやファーストレスポンダーに無料で食事を提供している。当社の傘下ブランド(バーガーキング、ティムホートンズ[Tim Hortons]、およびポパイズ・ルイジアナ・キッチン[Popeye’s Louisiana Kitchen])は、さまざまな形でいち早く人助けに乗り出している。すなわち我々の第一歩は、実際に行動を起こすことだった。
──広告に関してはどうか?
急いで全体の計画を調整しなくてはならなかった。当初の計画では、広告活動も期間限定商品も通常どおり実行するつもりだった。しかし、ロックダウンが近いとなり、我々の分野における消費者行動にも変化が出てきたため、新たなシナリオに方向転換する必要があると判断した。そこで3~4日のうちに新たなアセットを作成した。パートナーエージェンシーを総動員して作成したアセットは、バーガーキング、ティムホートンズ、ポパイズの店舗を安全に利用してもらえるよう、我々が新たな対応策を採っていることを人々に伝える内容となった。
──先週リリースされたバーガーキングの広告は、デリバリーをアピールする内容だった。それが強調したいポイントだったのか?
我々がドライブスルーの宣伝を(増や)したのは、そのチャネルが人々が商品を購入する主要チャネルになるとわかっていたからだ。また、人々が家にいる時間が増えればデリバリーの利用が増えるとみて、デリバリーへの投資も増やした。他人と接触せずに支払いができる方法として、モバイルでのデリバリー注文と決済にも投資している。
──バーガーキングがグローバルブランドであることは、マーケティングにどのように影響するのか?
それぞれの市場が異なる段階にある。中国は完全なロックダウン状態にあったのが、いまでは徐々に解除されつつある。ヨーロッパでは、フランスをはじめ多くの国が完全なロックダウン状態にあり、したがって我々のレストランも完全に閉鎖されている。一方、米国ではテイクアウトは利用できるため、デリバリーとドライブスルーが我々にとって主要なチャネルのひとつとなっている。そのため、これを中心としたアセットを増やした。アセットの作成方法にも工夫が求められる。我々のエージェンシーパートナーや制作会社を危険にさらしたくないので、一部はユーザー生成コンテンツ(UGC)を利用して作成した。ほかにもストック映像を活用している。
──新しいキャンペーンはどのようにして制作されたのか?
「Stay Home of the Whopper(ワッパーの家にいよう)」キャンペーンでは、ほかの目的で3~4カ月前に撮影していた映像があった。あとで使おうととっておいたものだ。独立記念日か「大統領の日」の祝日に使おうと考えていた。しかしこのような状況になり、すると広告会社のFCBニューヨーク(FCB New York)が知恵を働かせて、「この映像の最後だけ変えればキャンペーンに使えるんじゃないか」と言い出した。(新しい素材は)こうしてデリバリーとアプリによる注文に的を絞った(現在の)戦略と結びついた。そこで我々は映像を手直ししてリリースした。
今後数週間から数カ月のあいだに、多くのブランドが知恵と工夫を働かせてアセットやストック映像、ストップモーションを駆使し、ソーシャルメディアのインフルエンサーやUGCを活用する例を目にすることになるだろう。
──メディア戦略はどのように変化したか?
メディア戦略は国によって大きく異なる。パンデミックのどの段階にあるかが、国によって大きく異なるからだ。フランスでは、テレビを使うのは意味がない。店舗が閉鎖されているからだ。しかしフランスではブランドが大人気なので、エンゲージメントレベルを高く保つためにデジタルに力を入れている。一方、米国ではテレビCMを流すことにまだ意味がある。我々の店舗は(ドライブスルーとデリバリー対応のために)開いているからだ。そのためメッセージを調整するにとどめた。そして中国では、閉鎖していた店舗が再開しつつある。このように、パンデミックのどの段階にあるかによって、また、個々の市場の状況によって、メディアミックスを多少調整する必要がある。
──テレビに関して、バーガーキングはしばしば大きなスポーツイベントに合わせて広告を出している。そこへの投資分はどうなるのか?
たしかに、一部のスポーツに合わせてテレビに大きく投資している。目指すリーチと頻度を達成するためには、メディアに関して異なるアプローチを見つける必要がある。いまはその選定にあたっているところだ。これから再配置や再交渉を行うことになるだろう。テレビとデジタルにおけるリーチと頻度に関して、我々は目標を設定している。状況は常に変化しているが、それでも全体として広告を出し続けることに変わりはない。今後も米国でテレビをつければバーガーキングやポパイズのCMを目にするはずだ。広告は引き続き流れるが、新たな現実に対応した内容になる。
──つまり全体として、投じる金額はこれまでと変わらないのか?
マーケティングへの投資額は売上高に比例する。そのため、全店舗が閉鎖されている市場があったり、あるいは米国のように店内飲食ができない市場があったりする状況では、売り上げに多少の影響が及ぶのは間違いない。そのような年には総じて投資額も減ることになるだろう。それでも、まだ何か言うには時期尚早だ。
──ビジネス面では、いまのところどのような影響が出ているのか?
売り上げについてはまだコメントできない。第1四半期の業績をまだ発表していないためだ。多くの市場で事業が閉鎖されていることから、外食事業は全世界的に打撃を受けるだろう。業界全体がダメージを被るのは間違いない。
──エージェンシーに支払期限の延長を求める企業も出ている。
まだエージェンシーと支払期限について話し合っていない。我々が特に集中的に取り組んでいるのは、流動性とキャッシュフローの面でフランチャイズ加盟店を助けること、顧客だけでなく、我々のレストランやオフィスで働く人々の安全を守ること、また、プランを調整し、適切なチャネルを通じてできる限り売り上げにテコ入れし、伸ばすことだ。いずれ我々も、予算をできる限り最適化する方法を考えるときがくるだろうが、私の知る限り、これまでのところ支払期限やエージェンシーへの支払いについて話し合ったりはしていない。
──多くのマーケターが新型コロナウイルス関連のコンテンツをブロックリストに入れているが。
テレビを30分以上も観ていると、必ず新型コロナウイルス感染症の話題が出る。個人的にはブロックリストに頼るより、自分たちが発信するものが現在の状況に配慮したものになるよう努めたいし、実際にそうしている。もちろんモニタリングは怠らず、好ましくない点があれば(変更)することもあるだろう。しかし、直近においてそのようなことをした事例を思いつかない。我々の発信するコンテンツがあるので、そうした問題に関してはあまり神経質になっていない。
──いま、このときにブランドは何をすべきだろうか?
ブランドは行動を起こすことで、それも現実に役立つ具体的な行動を通して地域社会を助けるべきだ。日和見的に、機会につけ込むような形でなく、助けの手を差し伸べるべきだ。我々に関していえば、それがブランドポジショニングにとって意味があるかどうかをあまり気にせず、人々の助けになると思ったことをやっている。バーガーキングの場合は、子どもたちに無料で食事を提供した。理由は、子どもに学校で食事をとらせている人が多いと知っているからだ。休校になると、多くの親が食事を用意するのに苦労する。米国でこれまでにおよそ100万食を提供した。