「 ads.txt 対応サイトは、決定的な量に到達した」:支出を動かしはじめた広告主たち

広告詐欺を防ぐため、インベントリーの販売や再販売を許可された企業を列挙したads.txtファイルをサイトにアップロードするという業界の試みはこれまでも紹介してきた。この動きが「千里の道も一歩から」という考えで行われているとしたら、広告主が一つひとつのパブリッシャーのサイトを調べてads.txtファイルがアップロードされているかを確認するという、まさに最初の一歩は完了したようだ。広告主たちは、アップロードが行われているパブリッシャーたちに広告支出を動かそうとしはじめている。

納得する広告主たち

「まだハイハイをしながら、少しずつ歩こうと試みる幼児のようなステージにいるのだろう」とたとえるのは、ピュブリシス・メディア・プレシジョン(Publicis Media Precision)のメディア・テクノロジースタンダード部門ディレクターであるジェシカ・カーウィン氏だ。

広告主によってads.txtをアップロードさせるという動きを実践できている分野は、依然としてプライベート・プログラマティック・マーケットプレイスだ。この分野ではドメイン・スプーフィングはそれほどの問題となっていない。参加しているパブリッシャーたちは、すでに広告主、エージェンシー、もしくはアドテク企業によって審査されているからだ。ピュブリシス・グループ(Publicis Groupe)のプログラマティック・ハブでは、プライベート・プログラマティック・マーケットプレイスに参加しているパブリッシャーたちにads.txtファイルをアップロードすることを条件としている。デマンドサイドのプラットフォームであるメディアマス(MediaMath)も、「キュレートされたマーケット」においてads.txtのアップロードを条件としている。デジタル・コンテンツ・ネクスト(Digital Content Next)によるトラストX(TrustX)も、非営利広告取引を通じたインベントリー販売をするためにはads.txtファイルをアップロードしなくてはいけない、としている。

しかし、広告主にとっては、彼らが費やすお金と、オープン・プログラマティック・マーケットプレイスを通して運営する広告が意図したパブリッシャーへとちゃんと到達することを確実にする、という価値もads.txtは含まれている。米ガーディアン(The Guardian US)の件で分かったのは、ads.txtが実践されていない場合、広告主のプログラマティック・プレロール動画のための支出のうち70%以上が、目標とされたパブリッシャーのふりをする偽サイトによって奪われていることだ。

広告主たちはオープン・マーケットプレイスでのads.txtの施行にも取り組んできたが、果たして十分な数のパブリッシャーがads.txtファイルをアップロードしてくれるのだろうか、といった疑問によって遮られてきている。しかし、その質問にもようやく答えが出たようだ。カーウィン氏は「決定的な量に達した」と言う。

ads.txtの採用率

アメリカにおけるコムスコア(comScore)トップ1000パブリッシャーのうち、約60%がads.txtファイルをサイト上にアップロードしたと、アドテク企業オープンX(OpenX)は4月に述べている。Googleも2017年11月にはads.txtファイルを使った、承認されていないインベントリーのフィルタリングを開始した。Googleは、毎日3000万のドメインにads.txtファイルがあるかどうかをチェックしているが、彼らもまた、ads.txtの実施は向上しているという。1月の段階で、16万4000のサイトがads.txtファイルをアップロードしていた。この数字も、GoogleのGDPR、データ信頼部門の責任者であるプージャ・カプール氏によると、いまでは60万ドメインを越しているという。

「GoogleのDSPが測る取引において、ads.txtの採用は約80%となっており、Google広告マネージャーの側においてはパブリッシャー在庫の90%を越えている」と、彼女は言う。

パブリッシャーたちがちゃんとアップロードしているかどうか、という点が制限となるステージは過ぎたわけだ。そうしてやっと施行がはじまることになる。

「最近まで、我々のDSPパートナーたちは、ads.txtの採用率が増加するまでは、どんなプロダクトや入札エンハンスメントも取り組みたくないとたじろいでいた。いまではads.txtを採用している在庫内でプログラマティック支出をターゲットできる能力があると報告してくるパートナーたちが出てきている」と、RPAのデジタルメディア部門ディレクターかつバイスプレジデントであるニコラ・ペリーゴ氏は言う。

専用のオプションメニュー

広告主がads.txtによって承認された在庫のみ購入できるようにしているDSPにはメディアマスも含まれている。彼らはこのオプションを4月後半に追加したと、同社のメディア・グロースチャンネル部門ゼネラルマネージャーであるルイス・ロスコフ氏は言う。さらに最近になって、Googleのディスプレイ・アンド・ビデオ360(Display & Video 360:née DoubleClick Bid Manager)も同様の動きを開始した。6月27日、GoogleのDSPはads.txtオンリーというオプションをバイヤーに対して開始した。これによって広告主は、ads.txtを採用していないサイトへの広告掲載をブロックできる。広告バイヤーたちがキャンペーンのために作った新しいアイテムのうち15%以上は、ads.txtオンリーのオプションを採用していると、カプール氏は語る。広告のリーチ、パフォーマンス、そして値段設定にどう影響が出ているのかに関しては、共有できるデータは持っていないとのことだった。

ads.txtオンリーのオプションは、デフォルトではオフになっている。しかし、2018年末までにはデフォルトでオンとなることをGoogleは目標としていると、カプール氏は続ける。このオプションは「最終目標に向かうステップのひとつであり、最終目標は承認を受けたもののみ、という状態がデフォルトになることだ」と、彼女は説明した。

しかし、広告主がオープン・マーケットプレイスにおいてもads.txtオンリーの購入へと移行するためには、まずそれがどう影響を持つかを見極めないといけない。RPAは現在、DSPとテストを行っている。それによって「我々のメディアにおいてどれほどパフォーマンスへの影響が大きいか」を判定することが目的だと、ペリーゴ氏は言う。キャンペーンのスケールにどのような影響が出るのかテストする予定だと、カーウィン氏も言う。「DSPのオプションとなることで、テストを行い、広告主とクライアントが必要とする目標を達成できるのか確認できる」と、彼女は言った。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)