「いまどき、大学を卒業して『中古車のセールスマンになりたい』なんていう学生は、1人もいない」。米国の中古車販売業者カーマックス(CarMax)でCMO(最高マーケティング責任者)を務めるジム・リスキー氏は、学生の就職傾向に関して、とても現実的な意見をもっているようだ。
確かにそうだろう。しかし、CMOのリスキー氏が率いるカーマックスは、つまらない自動車のセールスマンというイメージからの脱却を図ろうとしている。今後、デジタル戦略の旅路をともに歩むエンジニアやデザイナー、デベロッパーを含め、何千という人間を雇用していこうとしているのだ。
「いまどき、大学を卒業して『中古車のセールスマンになりたい』なんていう学生は、1人もいない」。米国の中古車販売業者カーマックス(CarMax)でCMO(最高マーケティング責任者)を務めるジム・リスキー氏は、学生の就職傾向に関して、とても現実的な意見をもっているようだ。
確かにそうだろう。しかし、CMOのリスキー氏が率いるカーマックスは、つまらない自動車のセールスマンというイメージからの脱却を図ろうとしている。今後、デジタル戦略の旅路をともに歩むエンジニアやデザイナー、デベロッパーを含め、何千という人間を雇用していこうとしているのだ。
市場調査会社JDパワーによると、2014年に米国で自動車を購入した人のうち4分の1は、1980年代から2000年代初頭に生まれた「ミレニアル」世代だという。カーマックスは、この年齢層の顧客の割合が増えていることに気づいている。
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ちなみに「Garbage NEWS.com」によると日本では、2015年3月末時の年齢階層別中古車購入率は、29歳以下がもっとも高い33.8%で、30〜59歳以下が31.3%だ。そして、60歳以上が19.3%となっている。日本での29歳以下の中古車購入率は、2013年からわずかずつではあるが、伸びてきているという。
最初のアクションはインターネットから
そんな多くのユーザーにとって窓口となっているのは、いまやオンラインだ。そして、彼らがデジタルから離れて実際の店舗へ足を運ぶ際に、シームレスで快適な購入体験を提供することが、いまの自分にとっての大きな課題だと、リスキー氏は話す。
「我々は、未来のWeb小売業を担うような企業になりたい。だが、Googleではないので、良い人材が申し込んでくるような企業ブランドはない。そこで大切なのは、実際にどういう仕事をしているかを、人々に見せていくことだ」。
約90%の人にとって、自動車の購入はオンラインから始まる。だが、オンラインだけで自動車購入プロセスのすべてを完結できるわけではない。そのプロセスは複雑だし、多額の費用がかかるため、ローンの手続きが必要になることも多いのだ。これはすなわち、カーマックスがオンラインだけでなく、ショールームでも同様に顧客へアピールしていかなければならないことを意味する。
目指すところは、シームレスなユーザー体験
カーマックスには専用アプリがあり、自社サイトを利用する顧客も多く存在するが、リスキー氏は、すべてのプロセスをよりシームレスにして、特にオンラインとオフラインのギャップをなくしたいと考えている。そのためには、アプリの内容をより充実させるとともに、そのギャップを埋められるような技術を販売員たちに身につけさせなければならない。
そこでカーマックスは、自社サイトにeコマース(電子商取引)サイトのようなUX(ユーザーエクスペリエンス)を採用しようとした。買い手の9割はオンラインで検索するところから自動車購入のプロセスがスタートするため、検索技術の向上とAmazonの「製品説明」のようなUXを自社Webサイトで提供できるように投資した。
さらに、買い手がオンラインで支払いを試算できるように、ローン情報に関するオンラインサービスもテスト導入している(現時点では、まだオンラインだけで購入を完了できないが、将来的にはそのオプションも追加する計画だという)。「我々は、シリコンバレーの技術企業のようになろうとしている。常に何かを繰り返しテストしている」と、リスキー氏は説明する。
モバイル戦略も優先課題の1つ
モバイルもまた、主要な優先課題の1つである。「Carmax.com」を訪れる人の65%は、デスクトップ型パソコンやノートパソコン以外のデバイスからアクセスしているのだ。
そこでカーマックスは、自動車を購入した後でも顧客が使い続けたくなるように、従来のアプリを改良した。以前は検索アプリだったものを、いまは「オーナーシップアプリ」と呼ぶ。
自動車の所有者がタイヤ交換や部品購入の際にポイントサービスを受けられる機能を追加。さらに緊急対応時に、サービスを受けられるようにする計画もある。自動車のIDナンバーや保険情報を保存できる電子ウォレット機能も将来追加できるだろう。
デジタルシフトは、業界活性化のため
実店舗の整備も同じように重要な要素だ、とリスキー氏は言う。カーマックスでは、販売拠点を2006年以来2倍に増やしてきたが、今後の2年間でも、年間13~16件のショールームを新たにオープンする計画だという。
ここで大切なことは、オンラインでの自動車の検索や購入ローンの試算と同時に、実際にショールームへ足を運ぶまでの体験をシームレスに提供することだ。カーマックスは現在、新しい顧客関係管理(CRM)プログラムをテストしており、バラバラになっているたくさんの点をつなぐ方法を探っている。
そして、ここがまさに、すぐれた技術者たちが必要な場所だ。リスキー氏は、カーマックスに新しい技術が導入され、自動車の小売市場にさまざまなデジタル技術を提供することで、革新的なものを作りたいと願う技術者たちの関心を刺激できると期待する。
「我々は、企業として成功しながら、とてつもなくクールなものを作っている」とリスキー氏。「しかし、自動車のセールスをしている我が社がそんなことをしているとは、シリコンバレー通の若者たちも想像しないだろう。我々は彼らにそのハードルを越えさせ、カーマックスを知ってもらう必要がある」と、リスキー氏は強い意志を示した。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)
Homepage photo courtesy of CarMax.