「ステレオタイプを克服しない代理店とは、距離を取る」:ユニリーバのマーケティング責任者が語る多様性の取り組み

数多くのブランドたちが、自社プロダクトの広告からステレオタイプ的な表現を取り除こうとしている。ユニリーバ(Unilever)はそのひとつだ。トップマーケターであるエイリーン・サントス氏によると、ユニリーバにとってはただのリップサービス以上の取り組みのようだ。多様性の観点で改善が見られないエージェンシーには、投入される資金が減ると、サントス氏は警告する。

広告においてより進歩的に女性を描くというグローバル規模の取り組みがローンチされたのが3年前だ。そしていま、多様性を推し進めるマーケティングにさらに力を入れようとしている。この3年間、ユニリーバはこの方向性に向けて、目に見える形での進歩を見せてきた。しかし、まだ道のりは長い。たとえば、2016年から彼らは1500の自社広告をテストし、そこにおけるジェンダーや人種のステレオタイプをチェックしている。テストの対象となった広告のうち、「時代遅れだ」と消費者によって捉えられているものは6%だ。テストの対象となっていない広告も同様に、視聴者に響いていないと、サントス氏は言う。対象外の広告のうち、「強く進歩的だ」と思われているのは45%に留まっている。

多様性に関するこのギャップを埋めるための試みとして、ロンドン、ロッテルダム、ニューヨークのマーケター、エージェンシー・エグゼクティブたち63人に、今年ユニリーバはDNAテストを受けるよう頼んだ。心理学者のサポートのもと、自分自身のバックグラウンドをより理解することで、マーケターたちが持っている「どのような人が自分たちの広告を購入するか」に関する偏見を排除することができる。それを証明することが目的となっていた。

米DIGIDAYはサントス氏に取材をし、研究の結果、そして3つのテストを越えたレベルへのスケールが可能かどうかについて、話を聞いた。以下は、インタビューからの引用となっている。読みやすさのために一部編集を加えてある。

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――DNAテストの結果、ユニリーバの広告に関して分かったことは何か?

テストをしたとき、結果が有意義なものになるかどうかは確信がなかった。我々に協力してくれた心理学者たちは、こういった試みは必ずしも結果を生まないと言っていた。DNAテストに参加したスタッフたちは、ワークショップの前にひとつの試験を受けた。ワークショップは人間の行動を研究する科学者たちによって行われ、ワークショップのあとにまた試験を受けた。この結果を比べると、ステレオタイプの表れは、34%の減少と言う結果になった。

――次のステップは何か?

テストに参加できなかったマーケターの多くも、次のステップは何かを尋ねてきた。我々が起用するエージェンシーたちも、彼らの組織でこれをスケールさせたいと思っている。このテストは、ほかのマーケットにも展開しはじめるだろう。今回の実験について、エージェンシーネットワークの主要なトップたち、クリエイティブディレクターたちと話し合うため、カンヌで重要なミーティングを主催している。結果が劇的なものであったため、カンヌのミーティング参加者たちも自分たちの組織で展開するよう頼むつもりだ。「ステレオタイプをなくす」取り組みが、弊社の行動すべてに影響を与えるようなものになることが狙いだ。

――エージェンシーがこの取り組みに対応しなかった場合はどうなるのか?

我々が起用するWPP、IPG、そしてオムニコム(Omnicom)のメインのエージェンシーのトップたちから非常に力強いリーダーシップを確認している。通常であれば、同じミーティングに参加などはしない競合たちがこの問題に協力して取り組んでいる。それは、彼らのビジネスにとって多様性は非常に重要な案件であるからだ。そのうえで、我々とこの件に関して異なる意見を持つエージェンシーたちがいたとすれば、自然と彼らとは価値観が共有できないため、距離を取ることになるだろう。業界には、ただ日和見主義的に、この問題に飛びつく人々も存在している。広告におけるステレオタイプ、という問題を真剣に捉えていないビジネスを見極める方が簡単だ。我々の広告からステレオタイプを取り除くために費される資金、時間、リソースを見ると、我々のエージェンシーたちが真剣に考えていることがわかる。

――エージェンシーたちが口だけではなく実際に多様性に取り組んでいることは、どうやって確認するのか?

年末に行っているシンプルな試みがある。それは我々のエージェンシーたちを多様性という点で評価した成績表を付ける、という試みだ。また、放送されるすべての広告はチェックして、そこに現れるステレオタイプのレベルを確認している。現時点では、我々がテストを行う広告のうち94%は進歩的であるとみなされており、残りの6%がそうではない、という結果になっている。時代遅れとみなされた広告に関しては、放送を停止するか修正を行うかをしている。我々のエージェンシーがクリエイティブであり、同時に我々のブランドを購入する人々に対する思慮が働いていることをチェックする最適な方法だ。

――人種にまつわるステレオタイプに取り組むのに、ユニリーバがこれほどまで時間がかかったのは、なぜか?

ジェンダー関連の「ステレオタイプをなくす」取り組みを、私たちは3年前にローンチした。我々が取り組むべき問題としては、もっとも重要であると、そのとき感じたからだ。管理職のうち、ほぼ半数は女性が占めており、これは1年前の38%と比べても上昇している。その点でのレプリゼンテーションが改善されるにつれて、多様性に対するアプローチもより複数の次元で取り組まれるようになってきている。ジェンダーにおける多様性が改善されることで、人種、性的指向、信仰といった、ほかの要素にもより深い注意を払うようになってきた。それによって、複数の属性の重なりによって、現実における差別やステレオタイプが変わるという、インターセクショナリティの理解が生まれている。

我々の広告における人種ステレオタイプを是正するという取り組みは、軌道に乗っている。しかし私は、より進歩的になることで、世界を推し進めたいと考えている。しかし、これは必ずしも簡単ではない。というのも、ほかのマーケットに位置する我々のほかのブランドは、必ずしも進歩的な取り組みを行う準備ができているとは限らないからだ。しかし、そのような状況でも、より進歩的になろうとする試みは開始される。3年前、我々はインドにおけるブルック・ボンド・レッド・レベル(Brooke Bond Red Label)のお茶の広告にトランスジェンダーのバンドをフィーチャーした。保守的な社会における広告であったが、ブランドを異なる方法でプロモーションすることを決定したのだ。我々がそれを行うことで、トランスジェンダーの人々を、社会の例外ではなく、常態の一部として捉える助けになっていることがわかった。より現実を反映しており、より進歩的な、こういった我々の決断は、今後ますます増えることになるだろう。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)