旧正月に大人が子どもに赤い封筒に入ったお祝いのお金を贈るのは、中国の一般的な伝統だ。しかし近年では、友人や同僚に贈り物をする行為は中国のスーパーアプリ、WeChat(微信)に移行した。この行動の変化は、ブランド露出とエンゲージメントの機会を生み出している。
旧正月に大人が子どもに赤い封筒に入ったお祝いのお金を贈るのは、中国の一般的な伝統だ。しかし近年では、友人や同僚に贈り物をする行為は中国のスーパーアプリ、WeChat(微信)に移行した。この行動の変化は、ブランド露出とエンゲージメントの機会を生み出している。
2021年の「丑年」、WeChatにおけるカスタマイズ可能なデジタル赤封筒は、中国のデジタル重視の消費者のあいだで、新しいソーシャル通貨として人気になり、ブランドにとっては新しく現れた広告スペースとなった。2019年1月にリリースされたこの赤い封筒のデジタル・カバー・デザインは、もともとビジネス・アカウント向けに開発されたものだが、コストとアクセスの点で今では一般ユーザーにも広まっている。カスタマイズされたカバーは以前は10元 (1.54ドル)かかっていたが、今年になって一元(0.15ドル)に値下げされ、一般公開された。
今月初めの旧正月には、グッチ(Gucci)、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)、ベルサーチ(Versace)、ダンヒル(Dunhill)、デビアス(De Beers)などの西洋ブランドがこの旧正月を使ったマーケティングのトレンドに乗った。参加するブランドは、カバーのスローガン、カバー上のストーリー、ブランドロゴ、そして内側のパターンをデザインすることで、受け取った人と封筒を開く行為を通じてコネクションを生み出すことを目的としている。公式発表によると、2月11日から16日にかけて、WeChatは合計3000万のユニークカバーを作成し、全ユーザが平均7.37のカバーを所有した。WeChatとその決済システムのユーザ数は、2020年には10億人を超えた。
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各社が手掛けた赤い封筒
英国に拠点を置くマーケティング代理店クラウド(Croud)のリージョナルアカウント・ディレクター、エイダ・ルオ氏は、「WeChatは今年、デジタルの赤い封筒カバーに大きく賭けた」と述べた。「同社は明らかにこの機能により多くの人員とリソースを投入しており、最近さらに数々のアップグレードを加えた。ブランドは、カバーを公式アカウントやミニプログラム(Mini Programs)にリンクできるようになった」。ミニプログラムはWeChatのサブアプリケーションであり、ブランドのローカルなeコマース店舗として機能する。
高級ファッション業界では、英国の高級ブランド「バーバリー(Burberry)」が、赤い封筒のカバーやデザインでインパクトを出そうとしていた。2回に分けて、現地の中国人イラストレーターやグラフィックデザイナーがイラストを描いた4枚、今年の干支にかけて作られたブランドマスコット「オックスベリー(Oxberry)」が描かれた3枚、中国ブランド大使の女優、周冬雨と俳優、宋威龍が描かれた2枚の計9枚のカバーをリリースした。地元のアーティストたちは、2020年後半に中国で開始されたコンテンツシリーズで、今もブランドが継続している「#バーバリー世代(#BurberryGeneration)」プログラムを通じてスカウトされた。
イタリアの高級ブランド、グッチも新年を前に、赤い封筒カバーを2回に分けてローンチした。バーバリーとの違いは、グッチのカバーには「ドラえもん×グッチ」の旧正月向けカプセルコレクションとのタイアップデザインとなっていることだ。1回目のローンチでは、ユーザーたちはグッチのミニプログラム店舗のメンバーに登録することで予約をする必要があった。このミニプログラム店舗では上記のカプセルコレクションが販売されており、3日後に封筒カバーがもらえる形になっていた。ブランドによると、全部で110万枚のカバーが取得されたという。ほかのブランドたちも、ルオ氏が「一石二鳥だった」と形容するグッチの戦術から学ぶことができる。
初参加のブランドの場合
フランスの高級品小売業者であるギャラリーズ・ラファイエット中国(Galeries Lafayette China)のような初参加のブランドにとって、赤い封筒のアクティベーションは将来に向けてのテストだった。ギャラリーズ・ラファイエット中国の最高デジタル責任者であるワエル・ベンカラー氏は、「当初の目標は、我々のブランド認知度を高め、2020年7月からWeChatのミニプログラム店舗もあることを消費者に知らせることだった」と述べた。
同社は、最初はシンプルにしたいと考えていた。余分なコストを避けるために、社内でカバーをデザインし、数千のカバーをスポンサーすることにのみ投資した。「今年、良い結果を得たので、来年はさらに多くの時間とリソースを投資する」とベンカラー氏は述べたが、具体的な契約数は明らかにしなかった。
「数量が限られていることに不満を言う顧客もいたが、これは一方では成功の証だ」と、彼は述べた。
[原文:WeChat’s red envelope cover is fashion brands’ shiny new ad space]
YALING JIANG(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)