パンデミックによる先行き不透明な状況のなか、秋のマーケティングもなかなか見通しの立たない状態が続いている。米国の小売にとって極めて重要なこの新学期シーズンも、例年のような勢いは見られない。米国における新学期関連のテレビCMの広告支出は前年比で70%減となっているという。
新型コロナウイルスのパンデミックによる先行き不透明な状況のなか、秋のマーケティングもなかなか見通しの立たない状態が続いている。
米国の小売にとって極めて重要なこの新学期シーズンも、例年のような勢いは見られない。カンター・メディア(Kantar Media)のデータによると、米国における新学期関連のテレビCMの広告支出は前年比で70%減となっている。
それだけではなく、NFLシーズンが開幕しても、広告主は以前ほどスーパーボウルのCMに乗り気ではないようだ。エージェンシー役員らによると、例年であれば、すでにキャンペーンの話が大量に舞い込んで、広告インベントリーは完売しているはずだという。「FOXはおそらく昨年のこの時期であれば、スーパーボウルのインベントリーを85%は売り切っていたはずだ」と、あるメディアエージェンシー役員は語る。「今年は売れ行きが芳しくない。先行きが不透明なためだ。今年はスーパーボウルのインベントリーが1月まで埋まらないのではないか」。
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また、役員らによれば、クリスマスシーズンの広告に向けた話し合いも例年ほどは行われておらず、今後数週間のうちに開始するようだ。
「待ちの姿勢」に徹している
全体的に、マーケターは長期的な視野で取り組んでいるというよりは、「待ちの姿勢」に徹しているように見受けられる。それも当然かもしれない。2020年、私たちの生活はさまざまな面で大きく様変わりし、その影響は強烈だ。物事が正常化しないなかで、マーケターも従来の戦略に沿っていては、購買意欲を適切に刺激することはできない。
確かに業界が困難に直面し、状況の改善する見通しも立っていない。だが、だからこそ業界の従来の広告サイクルとは異なる取り組みを進めることで、エージェンシーにとっても得られるものもあるかもしれない。
あるコピーライターは、例年とは様子の異なる秋のマーケティング市場について「あらかじめ決まったスケジュールと異なる状況に適応しようとするのは良いことでもある」と語る。「ブランドはコロナ禍の影響を常に想定する必要があり、大変な状況にある。スーパーボウルも開催されるか不透明なのだ。そしてBLMの抗議活動と新型コロナウイルスなど、何が起きるのか誰もわからない状況のなかに置かれている」。
とはいえ、秋も通常通りにマーケティングを行っているところもある。たとえばマース・リグレー(Mars Wrigley)は8月末に2021年のスーパーボウルへCMを出すことを発表している。
即応性の重要性が増している
いずれにせよ、広告業界へのこうした影響は、今の「新たな日常」への適応を促すために重要なものかもしれない。たとえば質の高い広告を作るのには時間がかかるものだが、今や6カ月前に制作された広告に価値があるのかもわからないのだ。3月に作られた広告が、現在の社会情勢において適切なものとは限らない。
今や時間をかけて作るコンテンツの意義は薄れつつあり、即応性の重要性が増していると言えるのかもしれない。
[原文:‘We really don’t know’ How the continued uncertainty is shaking up the usual fall ad marketplace]
(翻訳:SI Japan、編集:長田真)