フィットネス領域のスタートアップ、オーブ(Obé)は、そのために、スポーツウェアブランドのアスレタ(Athleta)やダイエット専門会社WWのような、エンデミックなブランドや、サムスン(Samsung)やHBOマックス(HBO Max)のような非エンデミックブランドとの提携に賭けようとしている。
新規顧客を獲得するための創造的な方法を見つけることは、新興企業にとっての最優先事項だ。フィットネス領域のスタートアップであるオーブ(Obé)は、そのために、エンデミック(いま流行り)なブランド(スポーツウェアブランドのアスレタ[Athleta]やダイエット専門会社WWのような)や、非エンデミック(ある意味レガシー)なブランド(サムスン[Samsung]やHBOマックス[HBO Max]のような)との提携に賭けようとしている。
「Facebookやインスタグラムで認知を広げるのも良いだろう。我々も、いうまでもなくそうしたプラットフォームを活用しているが、いま強い関心を寄せているのはマーケティング提携だ」と、オーブの共同創業者で、最高経営責任者(CEO)を共同で務めるアシュリー・ミルズ氏は話す。「我々は、それが成長の手段や機会になると期待している」。
2018年に設立されたオーブは、月額27ドル(約2800円)で、ピラティスやヨガなどのバーチャルオンデマンドクラスを楽しむことができる、サブスクリプションサービスを提供している(現在の会員数は、同社が数字を公表していないため不明)。2020年春には、新型コロナウイルスのパンデミックにより、オンラインエクササイズへの需要が急増し、オーブの会員数は3月から5月にかけて前月比で80%も増加した。オーブによると、それ以降の会員数の伸びは、平均して前月比30%の伸長を記録しているという。
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会員獲得と認知向上に
人々のあいだでオンラインフィットネスの需要が高まっているにもかかわらず、オーブはパートナーシップ戦略を構築し、さらなる成長を促進しようとし続けている。同社は今夏、HBOマックスとの提携し、米DIGIDAYの姉妹サイト「Glossy(グロッシー)」が報じたように、カスタムクラスとして、『セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)』『ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)』『ユーフォリア(EUPHORIA)』『セサミストリート(Sesame Street)』にインスパイアされた、フィットネスプログラムを展開。これによって、オーブだけでなくHBOマックスの認知度向上にも繋がったという。
家庭でのオンラインエクササイズは現在、競争が激化している分野だ。マーク・ミレット氏とミルズ氏によって共同設立されたオーブは、ペロトン[Peloton]やミラー[Mirror]のように、ここ数年出現したオンラインフィットネスを展開する企業のひとつだ。ミルズ氏は、急成長するフィットネスメディア業界における同社の差別化アプローチは、「エンターテインメントとフィットネスの融合」だという。「我々はより大きな視点でライフスタイルに飛び込み、会員を楽しませるエンターテイナーとしてオンラインフィットネスを展開している」。
こうしたほかのブランド、特にアスレタやWWのようなエンデミックブランドとの提携は、会員数の増加だけでなく、フィットネスブランドとしてのオーブの認知度向上に役立つ。
提携の中身
たとえば、アスレタとの提携によってオーブは、アレスタの製品を購入した顧客にリーチし、体験教室の特典を提供している。体験教室に来た顧客は、オーブのインストラクターがアスレタ製品を身に付けていることに気付くだろう。また、アスレタ製品を買ったことがない顧客に対しては、オーブがしっかり紹介を行う。
また、WWに関しては、オーブはWWのプログラム、ウェルネス・ウィンズ(Wellness Wins)に統合されており、目標を達成したWWのメンバーは、オーブのクラスを無料で利用できるという。
シャーマ・ブランズ(Sharma Brands)のCEOで、D2C(Direct-to-Consumer)ブランドストラテジストであるニック・シャーマ氏は「提携は、新しい顧客にブランドを紹介するための、より創造的な方法だ」という。「これは双方にとって有益だ。新規顧客を獲得するためにお金を使ってFacebookやインスタグラムに『私たちの店に買いに来て(Come buy us)』のようなメッセージを掲載する有料広告とは異なり、提携によって、直感的な方法で新規顧客獲得のための新たな製品を構築できる」。
新規チャネルのテストも
そうはいっても、ほかのブランドとの提携を利用して認知度やサブスクリプション数を高めることは、オーブのマーケティング戦略の一部にすぎない。Facebookやインスタグラムの広告以外にも、同社はここ数カ月でコネクテッドTV、Snapchat(スナップチャット)、TikTok(ティックトック)、リニアTVのような新規チャネルをテストしている。
調査企業、カンター(Kantar)のデータによると、オーブは2020年前半の半年間で、メディアプレースメントに56万2000ドル(約5800万円)を費やした。ただし、カンターはソーシャルメディア広告への支出を追跡していないため、オーブがソーシャルメディア広告に費やした金額はここに含まれていない。
フィットネス企業だけではない
新規顧客を獲得するために、パートナーシップ戦略を使おうとしているのはフィットネス企業だけではない。災害用緊急キットメーカーのジュディ(Judy)は最近、トイレ用消臭剤メーカーのプープリ(Poo-Pourri)と提携し、プープリが持つ手指消毒剤、手拭き、笛、光るスティックをセットにした新キットを発売し、新たな顧客獲得に役立てた、と両ブランドのアドバイザーを務めるシャーマ氏は話す。
「(この戦略が)は決して最高峰ではない」とシャーマ氏はいう。「だが、オーディエンス同士の相互交流を可能にし、顧客の生涯価値を高めることができるのは事実だ」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:村上莞)