Facebookのインストリーム動画広告が最近成長していることについて、アドバイヤーは神経を尖らせている。過去数カ月、Facebookのインストリーム広告プログラムを通じて収益化できるFacebookページは30%以上増加しているという。
Facebookのインストリーム動画広告が最近成長していることについて、アドバイヤーは神経を尖らせている。
過去数カ月で、インストリーム広告プログラムに参加するFacebookページ(広告が挿入される動画を配信する、パブリッシャーやクリエイターのFacebookページ)は30%以上も増加した。Facebookが広告主のために定期的に更新しているスプレッドシートには、プログラムに参加したページが、過去30日間で2万4000ページも追加されている。
そのなかには、いたずら動画やミーム動画を配信しているページから、人々が大量の食べ物を大食いする動画を提供する「マクバンページ(mukbang pages)」まで、何もかもが含まれているという。これは、YouTubeの広告ビジネスに目をつけたFacebookによる、より長期的な取り組みの一部でもある。
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ブランドセーフティを犠牲にしている
プログラムに参加するページは、すべて承認プロセスを経てFacebookのブランドセーフティガイドラインに従わなければならない。だが、Facebookがインストリームプログラムに追加したブランドセーフティ保護措置は、YouTubeには及ばないとバイヤーたちはいう。また、Facebookが加えた変更は、クライアントのスポット広告のために安全な場所を提供することよりも、インベントリーを最大化することに焦点が絞られていると見ているバイヤーは多い。
メディアエジェンシーのメディアハブ(Mediahub)で、ペイドソーシャルVPを務めるエリカ・パトリック氏は、「彼らは、ブランドセーフティを犠牲にしてインベントリーを最大化しようとしている。いまこのプログラムに対し、大きな投資をすべきではない」と警鐘を鳴らす。
実際、自身のクライアントが横に表示されたくないと思うコンテンツの例として、あるバイヤーふたりはインストリームプログラム内での口コミ動画の急増を指摘した。
米DIGIDAYがFacebookの広報担当者にコメントを求めたところ、インストリームプログラムの成長はオーガニックなものであり、ページはすべて承認を経て、ブランドセーフティガイドラインに沿っているとの回答があった。
Facebookのこれまでの取り組み
Facebookが動画広告ビジネスをはじめたばかりの頃、インストリーム動画のインベントリーが入手できたのはFacebook Watch(ウォッチ)上だけであり、Facebookはこれを、エンターテインメントスタジオやパブリッシャーが制作した、ハイエンドなオリジナルプログラムのソースとして位置づけようとしていた。あるバイヤーによると、このプログラムからのインベントリーは、Facebookリザーブ(Facebook Reserve)の一部として現在も入手可能だという。Facebookリザーブは、最低10万ドル(約1000万円)の投資が必要な、スポット広告向けのストックインベントリーだ。
だがほとんどのバイヤーにとって、これは高価すぎる。そこでFacebookは、より安価なインストリーム広告の供給を拡大し、オークションで購入できるようにしてきた。Facebookは2018年夏、クリエイターにWatchページを適用する機会を与えることでWatchを拡張している。しかしその10カ月後、同社はWatchページをすべて段階的に廃止するという真逆の行動に出た。
それ以来、そうしたインストリーム広告の掲載資格を持つページの数は、増え続けている。一方Facebookは、プラットフォーム全体でブランドセーフティを補強する取り組みを進め、2020年5月にホワイトリストの作成を発表したほか、第3のブランドセーフティパートナーとして、ゼファー(Zefr)を追加した。
しかしこれについて、前出のバイヤーふたりは、コンテンツ単位のホワイトリスト作成は面倒で時間がかかるという。さらに、Facebookのブラックリスト化機能は、5000ページという上限があり、不十分だと付け加える。匿名を条件に答えたあるアドバイヤーは、「それはいつも、支持し難い案だ」と述べた。
コンテクストの重要性
この1カ月でページが急増する以前、バイヤーたちの頭のなかにはこうした問題があった。「より多くのページが増えるほど、懸念が増える」と、メディアエージェンシーのアセンブリー(Assembly)で、ペイドソーシャル担当 シニアマネージャーを務めるカラン・リンチ氏は語る。
また、エージェンシーのマッドウェル(Madwell)のメディア担当ディレクター、リンゼイ・ボーアン氏は、インストリーム広告ではストーリーズ(Stories)やFacebookのフィードに表示されるほかの動画広告よりコンテクストが重要になるので、この急増にはたくさんの課題があるとバイヤーたちは話している、と語る。
「フィード内やストーリーズでは、友達やパブリッシャーの投稿と広告が結びついていないことが、わかりやすい。だがインストリーム広告は、コンテンツの最中に挿入するため、本質的にそれがわかり辛い」とボーアン氏はいう。
「必要がない限り近づかない」
同氏はさらにこう付け加える。「そうしたことを気にするクライアントは、このプラットフォームにはそもそも興味を示さないだろう。通常これは、我々の基本的なメニューには含まれていないし、正直な話、必要がない限り近づかない」。
結局のところFacebookは、依然として価格とターゲティングの効率性を重視しており、バイヤーたちはほかのメディア枠を見つけるのに苦労している。とはいえ最初に回答したバイヤーは、「最善の価格で目的のオーディエンスに広告を見てもらうことが、我々の最終目標だ」と話す。だが、このプログラムがその目的にどれくらいふさわしいかについても「議論を進めているところだ」と、この人物は付け加えた。
MAX WILLENS(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:村上莞)