BRANDS IN CULTURE

D2C 時代に向けて、インキュベーターを作った食品ブランド :「失敗に寛容でなければならない」

クランベリー商品で知られる大手ブランドのオーシャンスプレー(Ocean Spray)は、ライトハウス・イノベーション・インキュベーター(Lighthouse Innovation Incubator)というインキュベーターを立ち上げた。目的は健康商品をはじめとするさまざまな分野のブランドをローンチしてポートフォリオを拡大することだ。

これは同社に限った話ではない。P&G(Procter & Gamble)やアンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch)といったブランドが、D2Cの競争力に対抗するため、インキュベーターやベンチャー企業を立ち上げて新ブランドのローンチを進めている。

オーシャンスプレーは、ライトハウス・イノベーション・インキュベーターを通じて8月末、ウェブサイト上で犬向けのウォーターエンハンサー製品「タリホー(Tally-Ho)」のローンチを発表した。製品はボストンの店舗やインディーゴーゴー(Indiegogo)で販売される。オーシャンスプレーが新ブランドの立ち上げ試験を目的に、昨年10月にローンチした同インキュベーターは、現在4つのテストブランドを市場展開している。

それがハーブトニックブランドのアトカ(Atoka)、CBDを使ったスパークリングウォーターブランドのキャリーオン(CarryOn)、紫外線から肌を守る食用グミサプリブランドのダブリー(Dabbly)、そして今回のタリホーだ。ライトハウス・イノベーション・インキュベーターの責任者サンティ・プロアノ氏によれば、コンセプトの段階から市場テストを完了するまで5カ月ほどかかるという。また全ブランドが成功するとは思っておらず、長期的な視点でオーシャンスプレーに貢献するブランドの見極めが目的とのことだ。

「オーシャンスプレー以外の新しいブランドを使って、新分野の消費者にリーチしたい。これはオーシャンスプレーによるイノベーションの一環だ」と、同氏は語る。

「ITの登場ですべてが変わった」

このように歴史のある企業が、社内で新ブランド構築を試みているのは何も同社だけではない。大手ブランドホールディング企業がベンチャー組織を立ち上げた例として、アンハイザー・ブッシュのZXベンチャーズ(ZX Ventures)、シーメンス(Siemens)のネクスト47(Next47)、P&GのP&Gベンチャーズ(P&G Ventures)などが挙げられる。

フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の主席アナリスト、ディパンジャン・チャタジー氏は「伝統的な消費者向け大手ブランドの創業当時は、即応性が今ほど注目されておらず、規模が重視されていた」と語る。「今とは大きく異なる環境だ。特にITの登場ですべてが変わった。既存の組織を即応性の面で適応させるのには時間がかかる。そこで低コストかつ低リスクで何がうまくいくかを試せるインキュベーションが注目されている」。

オーシャンスプレーのライトハウス・イノベーション・インキュベーターでは、社員5名がフルタイムで働いている。新しいアイデアが出てくるたびに市場テストを行い、結果を分析して、そのブランドを継続させるかを決定している。テストで上手くいったブランドは、オーシャンスプレーからリソースが割り当てられ、より重点的に扱われるようになる。逆に上手くいかなかったブランドは優先順位を下げられるか、ブランド自体が終了となる。

「テストにあたって、失敗を許容するというのを非常に重視している」と、プロアノ氏は語る。「イノベーションの多くは失敗に終わる。だが、迅速かつコストをかけずに何度もトライして、プロジェクトを終了するか拡大するかしながら、多くのことを学んでいる」。

「変革の必要性を強く感じている」

ブランドコンサル会社のメダフォース(Metaforce)の共同創業者のアレン・アダムソン氏は、オーシャンスプレーがブランドを立ち上げることの意義を認めつつも、課題は残されていると語る。「オーシャンスプレーは非常に大きな、アイコンとなるようなブランドだ。消費者も必然的にクランベリー商品を連想するため、どれだけ革新的な試みを行ってもそのインパクトが感じられない」と、同氏は指摘する。「新ブランドを成功させるには、オーシャンスプレーのブランドとシステムから離れなければならない」。

とはいえオーシャンスプレーのイノベーションはインキュベーターだけではない。自社を現代に適応させ、新たな成長の方法を探るためにほかにもさまざまなグループを立ち上げて取り組んでいる。だが、それと同時にペットの健康商品やCBDといった新しい分野に進出するためには、消費者に訴える力を持つ新しいブランドが必要であることも認識しているのだ。

プロアノ氏は「変革の必要性を強く感じている」と語り、次のように述べた。「当社は既存の分野では非常に大きな成功を収めている。だが将来も確実に成功し続けるための投資は絶対に必要なのだ」。

[原文:‘We have to be open to failure’ Why Ocean Spray launched a brand incubator for the DTC era

KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)