生理用品D2Cのオーガスト (August)が設立して1か月後の2021年7月、CEO兼共同創設者であるナディア・オカモト氏はTikTokに、一般的な生理用ナプキンは分解に最大800年を要するが、オーガストの商品は6~12カ月で分解されることを説明した動画を投稿した。動画は440万回再生されセミバイラル化した。
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生理用品のD2Cブランドであるオーガスト(August)が設立して1カ月後の2021年7月、同社のCEO兼共同創設者であるナディア・オカモト氏はTikTokに、一般的な生理用ナプキンは分解に最大800年を要するが、オーガストの商品はわずか6~12カ月で分解されることを説明した動画を投稿した。
動画は、この短編動画共有アプリのTikTokで440万回再生され、「セミバイラル化」した。それ以来、オカモト氏の個人アカウントのフォロワーはわずか半年で数百人から240万人に増加し、ほかの動画も最大で3500万回再生された。これに対してオーガストのチャンネルは現在14万3200人以上のフォロワーを獲得している。同社は、このふたつのアカウントを活用し、ブランドへの認知度と売上を伸ばしている。
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オカモト氏は、「TikTokを使ってみてよくわかったのは、アルゴリズムとプラットフォームの仕組みがインスタグラムとは完全に異なるということだ。インスタグラムでは1日に何回投稿するかに非常に注意を払う必要がある」と話す。「TikTokではそのようなルールは気にしないようになった」。
@itsaugustco And now for an IMPORTANT message from our founder 🕺 #periodtips #deeprealization #sustainable ♬ original sound – August
創業者自身がインフルエンサーに
オーガストはナプキン、タンポン、ライナーと、カスタマイズ可能なサブスクリプションボックスを販売している。これまでのところ、オーガストには6500人のサブスクリプション会員と、10万人を超えるメーリングリストが存在している。同ブランドは昨年、デジタルメディアのリファインリー29(Refinery29)のプレジデントを務めるエイミー・エメリッヒ氏や、グロシエ(Glossier)の元エグゼクティブなどから200万ドル(約2億3000万円)近くのシード資金を調達した。
TikTokは、特にオーガストのようにZ世代の消費者を対象とするブランドにとって、商品発掘のために欠かせないツールとなってきた。ケイト・スペード(Kate Spade)のハート型バッグやオーシャンスプレー(Ocean Spray)のクランラズベリー(Cran-Raspberry)など、アプリ上のバイラル商品が近年ブランドの売上を押し上げたのは有名な話だ。
TikTokのブランド戦略では、時代性のあるタレントを起用し、商品のプロモーションを行うことがほとんどだ。しかしオカモト氏は、自分の個人アカウントを成長させる、すなわち実質的に自分がインフルエンサーになることが、オーガストにとってより良い戦略であることがわかったと語っている。同氏のTikTokでは、頻繁に消費者からの質問に直接回答し、ビジネスアカウントの制限を受けずに商品のサンプルを紹介している。
ふたつのアカウントを棲み分ける
オカモト氏とオーガストのアカウントの棲み分けは、認知度を広げるための重要な要素だ。オカモト氏によると、TikTok上のビジネスアカウントは、商用ライセンスの関係で、流行りのオーディオ(音楽や音声)を個人アカウントほど多く使用できるとは限らない。オーディオは、動画をバイラル化するために一般的に使用される方法だ。そして、1日に最大50の動画を投稿することで、商品に関するよくある質問に回答したり、さまざまなコンテンツを試したりすることができる。
同氏は、「TikTokの長所は、インスタグラムやYouTubeと相互送客できることだと考えている。オーガストがTikTokで成長すると、インスタグラムでも17万5000人のフォロワーを抱えるようになった」と話す。「これによって、我々の総合的な獲得コストは非常に効率的になった。これはとてもすばらしいことだ。というのも、我々はペイドメディアがすべてを解決するとはそれほど信じていないからだ」。
消費者にとって、インフルエンサーは特定の分野における専門家の役割を果たすことが多いと、プロダクツアップ(Productsup)で北米販売担当のバイスプレジデントを務めるブラッド・コープランド氏は語る。「D2Cブランドが流行の波に乗ることができるなら、そのブランドに劇的な変化をもたらすことができるだろう」。
スタティスタ(Statista)によれば、全世界のインフルエンサーマーケティング分野はすでに2019年の2倍以上に成長し、2021年には138億ドル(約1兆5900億円)に達した。小売業者はこれらのインフルエンサーとの提携に価値を見いだしている。たとえばホリスター(Hollister)は、ディキシー&チャーリー・ダメリオ姉妹と提携し、ソーシャルツーリスト(Social Tourist)という新しいブランドを昨年5月に立ち上げた。「消費者が最新のトレンドを知るのは、多くの場合、インフルエンサーからだ」とコープランド氏は指摘する。
すぐに「方向転換」できる準備を
オカモト氏にとって、TikTokのようなプラットフォームは、競合他社とのものと比べてオーガストの商品がどのようなものかを示すためにも適した場所で、ほかのプラットフォームよりもエンゲージメントを得られることが多いという。同氏は次のように述べている。「もし我々がインスタグラムで500ワードのキャプションを投稿しても、最後まで読んでくれる人はいないだろう。これに対して、50本の動画をそれぞれ別のトピックで同じ日に投稿しても、TikTokプラットフォームの設計上、スパムのようにはならない」。
オカモト氏は、TikTokで自分自身のオーディエンスを育てるには、自分らしさを維持することだという。同氏にとってこれは、生理への悪い印象を払拭するということだ。同氏のチームはトレンドを常に把握し、試行錯誤の繰り返しによって、何がオーディエンスの共感を生むかを見つけ出していると語る。
同氏は、「我々は、とにかく方向転換を心がけている。何かがうまく働かないなら、それを行うのは止める。何かがよりエンゲージメントを獲得するなら、さらに行う」という。「我々にとって、意見を真剣に聞き、すぐに方向転換することが非常に重要だ。また、これが我々をほかのブランドと一線を画する要因であるとも考えている」。
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via August