広告では新参のAmazonだが、その広告プラットフォームはすでに新しいブランドたちの関心が高く、最大手パートナーたちが広告費を増している。しかし、Amazonにお金を渡して構わないという小売業者ばかりではない。 eコマー […]
広告では新参のAmazonだが、その広告プラットフォームはすでに新しいブランドたちの関心が高く、最大手パートナーたちが広告費を増している。しかし、Amazonにお金を渡して構わないという小売業者ばかりではない。
eコマース大手のAmazonを競争相手だと考える小売業者たちは、Amazonの広告がどれだけ支配的になろうと、広告費のほんの一部であろうとAmazonに渡したくない。
Amazonに躊躇する小売業者
「手助けすることはないじゃないか」と、大手小売業者の幹部は匿名で語った。「我々は競合しているんだ。相手の成功に貢献するなんて、それだけはやりたくない」。
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アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)、ジャーニーズ(Journeys)、マイケルズ(Michaels)、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)など、従来型クライアントの過半数が同様の見方をしていると、エージェンシーのPMGでメディアサービスのバイスプレジデントを務めるローラ・パーカー氏は語る。ただ同氏は、どのクライアントが具体的にAmazonの広告に批判的なのか、特定することはなかった。「Amazonはれっきとしたチャンスだと考えるところがあれば、まさにビジネス上の脅威だと見なしてAmazonとの広告に関心を示さないところもある」。
すでに複数の小売カテゴリーで支配的なAmazonは、実は多くの企業の脅威になっている。なんでも揃うショップとしてAmazonに依存する消費者が増えて、小売業者の直販サイトはトラフィックと収益がどんどん減っている。パーカー氏によると、そのため小売業者は「ビジネスにマイナスの影響があるところに投じる金額を増やす」ことに躊躇している。去る2月に小売業者の幹部53名に実施したDIGIDAYの調査では、回答者の80%がAmazonで広告を実施していなかった。
プライベートブランドの脅威
調査会社のL2でリサーチディレクターを務めるクーパー・スミス氏は、Amazonがプライベートブランドの拡大に力を入れていることも小売業者の不安を高めていると語った。L2はAmazonに表示される広告をすべて分析し、ブランドの種類で分類している。
スミス氏は、「Amazonが自社プライベートブランドの広告数を大幅に増やしていることがわかってきている」としたうえで、ブランドパートナーからすると、検索結果で自社の順位が下がるかもしれないのでマイナスなのだと説明した。「Amazon以外の小売業者は、『あのブランドよりこのブランドが欲しい』という消費者の判断に委ねてきた。しかし、Amazonは、消費者の鼻先に自社のプライベートブランドを突き付け、ナショナルブランドを消費者が見つけるのさえ難しくしている」と、スミス氏はいう。
L2は3月、ドレスシャツとポロシャツというAmazonの2つの主要小売カテゴリーで、Amazonのプライベートブランドの広告のシェアを追跡した。すると、どちらもキーワードでターゲティングする、検索結果に表示されるスポンサープロダクト広告のトップ10に、Amazon Essentials、Goodthreads、Buttoned DownというAmazonの3つのプライベートブランドがいずれも入っていた。
Amazonのプライベートブランドに関するL2のデータ(2017年第4四半期、日次測定)。ブランド未指定のAmazon検索における有料広告シェアのトップ10ブランドを示している。ウーブン(織物)関係とポロシャツ関係のキーワードによる、スポンサープロダクト広告とヘッドライン広告におけるシェアでは、Amazon Essentials、Goodthreads、Buttoned Down(囲み)が好位置を占めている。
ブランド毀損に対する懸念
オーディエンスはどこにでもある安価な商品を連想するので、Amazonはブランド品を探す裕福な消費者にリーチするには理想的な場所ではないと考える小売業者は多い。エスティ・ローダー(Este Lauder)傘下のMACやクリニーク(CLINIQUE)のような高級ファッションブランドや美容ブランドは特にそうだ。それもあり、こうしたブランドはAmazonで商品を売りたがらない。
「ガレージセールのように見えるからeBayでは売りたくないという人が多いのと似ている」と語ったのは、トムブラス・グループ(Tombras Group)のVPでAmazonサービスのディレクターであるケビン・パックラー氏。「ブランドが損なわれるかもしれない」と同氏はいう。米DIGIDAYの姉妹サイト、ファンション&ビューティ関連のマーケティングサイト、グロッシー(Glossy)が運営しているフォーラムでは、3月に匿名で次のような書き込みがあった。「私はお客として、Amazonではトイレットペーパーを買おうと思うことが多い。我々の問題は、トイレットペーパーと同じカートに入れられたいかということだ」。
とはいえ、Amazonの広告主は過半数がAmazonで商品を販売している。Amazonの広告費を増やしているのは、すでにAmazonで商品を直接販売している、マスマーケットに訴求する大きなナショナルブランドだとスミス氏は指摘する。同氏によると、リーバイス(Levi’s)、ドッカーズ(Dockers)、ガルニエ(Garnier)、ロレアル(L’Oral)、バウンティ(Bounty)、ジレット(Gillette)、ジョンソン・ エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)などが、特にAmazonでの広告費を増やしている。
セールスファネルに直接掲載
Amazonの広告ビジネスは驚異的なスピードで成長している。2月の第4四半期の業績発表で、広告事業の収益は前年比60%増の17億ドル(約1800億円)だったとAmazonは報告した。
Amazonにおける広告費は半分以上がスポンサープロダクト広告に使われている。マークル(Merkle)による2017年第4四半期の「デジタルマーケティングレポート(Digital Marketing Report)」によると、スポンサープロダクト広告はAmazonの広告費のうち85%を占めており、前四半期から64%の増加だった。この成長スピードは、Googleの検索広告を回っている(同レポートによると、同じ第4四半期、Googleの検索広告への支出額は前四半期から23%の増加だった)。またこのレポートによると、スポンサープロダクト広告は、クリックあたりの広告主の売上が、ヘッドライン検索広告、商品ページのディスプレイ広告、基本的なディスプレイ広告など、Amazonのすべての広告フォーマットのなかで最大だった。
Amazonの広告がクライアントに魅力的なのは、セールスファネルに直接、掲載できるからだとパックラー氏は語る。
「Amazonはすでに商品を探している人ばかりなので、購入する傾向が強い」とパックラー氏。「ROIとセールス生成の点ではAmazonの広告は損はないと、小売業者とメーカーのあいだでは言われている。一般に、Googleのページ検索や標準的なソーシャルメディアキャンペーンと比較しても、AmazonのROIは少なくとも拮抗しており、おおむね凌駕している。もっと古いチャネルと比べれば、素晴らしく良い見返りがある」と同氏は語った。
ナイキが直面している問題
大手で異例なのはナイキだ。ナイキは2017年7月にAmazonで販売を開始して以降、Amazonの広告を使っていないとスミス氏。ナイキの正規品だということで人々が集まると決めてかかっているのだろうと同氏は考えている。ただ、ナイキはAmazonの検索語句にお金を出していないことで、検索結果でサードパーティのサプライヤーのほうが上位にくることがある。これもあって、Amazonで販売している小売業者たちはAmazonで広告を打っているのだとスミス氏は語る。
「Amazonは、ファーストパーティのリスティングとサードパーティのリスティングの区別がうまくない」とスミス氏。「それが消費者には紛らわしい。区別できないのだが、気にしない消費者も多い。Amazonもそれは承知だ」と同氏は語った。
Amazonで広告をするかどうか、小売業者の判断は全般的にまだ初期段階だが、その副次的な影響を勘案する必要があるという点で、マーケターたちは一致している。
「オンライン小売のどの分野もAmazonになった」と、パックラー氏は語った。「米国では、期待という点で、消費者のマインドセットをAmazonが抜本的に変えてしまったので、Amazonを締め出すというのは、自らを世界から切り離すようなところがある」。
Ilyse Liffreing (原文 / 訳:ガリレオ)