ウォルマートが長く取り組んでいるEC事業が実を結びつつある。ウォルマートのプレジデント兼CEOダグ・マクミロン氏は2022年度第2四半期決算発表で、「グローバルなEC収益は順調で、年末には750億ドル(約8兆2500億円)に達する見込み。オムニチャネルのリーダーとしての地位をさらに固めることになる」と述べた。
ウォルマート(Walmart)が長く取り組んでいるEC事業が実を結びつつある。
2022年度第2四半期決算発表のオンライン配信で、ウォルマートのプレジデント兼CEOダグ・マクミロン氏は次のように述べている。「当社のグローバルなEC収益は順調で、年末には750億ドル(約8兆2500億円)に達する見込みだ。オムニチャネルのリーダーとしての当社の地位をさらに固めることになる」。
同社の発表によると、第2四半期のEC売上成長率は6%で、2年間の累計で103%になる。昨年の成長率が高かったのは、新型コロナウイルスの感染拡大のピークにあってオンラインで買い物をする人が増加したため。決算発表でマクミロン氏は「この四半期に買い物客の行動が変わってきた。昨年に比べオンラインより店舗での買い物が増えている」と述べた。
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実店舗復調のなか、ECも堅調な伸び
実店舗への客足が回復しつつある一方で、マクミロン氏はウォルマートのデジタル事業にもまだ成長の余地があることを示すさまざまな点にも触れた。今四半期、ウォルマートがマーケットプレイスに「新しいセラーを何千も追加した」と話し、「データを商用化し、テクノロジーを構築するための革新的な方法をいろいろ見つけている」と加えた。
第2四半期の伸びは2020年ほど好調ではなかったが、いくつかの追い風要素はあった。ウォルマートの発表によれば、ポストワクチンの夏と、早めの新学期開始といった最近の変化で、同社のマーケットシェアは食料雑貨部門とその他の生活必需品で伸びている。新型コロナウイルスのデルタ株も、米国民のあいだで生活必需品の買い込みの新たな波を起こしている。
オンライン販売が減少を見せると、ウォルマートは客足とそれに伴う売上の軸足を再び実店舗に戻した。マクミロン氏は「ECの伸びは鈍化しているが、昨年の驚異的な成長からさらに伸びることはできている」といい、「私たちがどちらの買い物客のニーズにも対応できることはいいことだ」と話した。
ますます大きくなる巨大EC企業
前四半期、ウォルマートの米国での売上増に占めるオンライン販売の割合は0.2%だった。2020年同期では6%を占める。ウォルマートにとってのオンライン販売は、5200億ドル(約57兆2000億円)に上る平均年間売上の中で依然として比較的小さな部分でしかない。
それでも、予測の750億ドルという数字は決して小さくはない。参考までに、パンデミックで売り上げが伸びる前のターゲット(Target)の年間総売上高とほぼ同じ規模である。ターゲットの年間売上高は、2018年が753.6億ドル(約8兆2900億円)、2019年は781.1億ドル(約8兆6000億円)、2020年には935.6億ドル(約10兆3000億円)に達している。
グローバルデータ(GlobalData)のマネージングディレクターを務めるニール・ソーンダース氏は、ウォルマートの米国でのオンライン販売が前年比で6%増でしかないことに注目する。競合Amazonの成長を「はるかに下回る」低い数字だ。8月の第3週、巨大EC企業Amazonはウォルマートを正式に追い抜き、中国以外で世界最大の小売企業となった。ウォルマートが競争力を保つには、オンラインでの存在感を維持するために投資し、利便性重視の消費者にとって有意義な存在であり続けることが極めて重要である。
ソーンダース氏は、一部消費者にとってウォルマートにはまだ「魅力」に問題があるといい、「ウォルマートは、より高額な買い物をする若く裕福な層にも利用してもらえるように、コアな顧客だけではなく幅広い層にオンラインでの魅力を知ってもらう必要がある」と話した。
成長の余地はまだまだある
DailyFX.comのアナリスト、リチャート・ドヴォラック氏は、ウォルマートのオンライン販売の伸びがようやく注目を集めるに値するレベルになってきたと話す。ここ1年半、パンデミックによって消費者が食料雑貨やその他生活必需品などをオンラインで買うことが増え、ウォルマートのEC事業全体の拡大を促した。だた、1年前に導入された会員制プログラム、ウォルマートプラス(Walmart+)もeコマース拡大に寄与しているのではないかとドヴォラック氏は考えている。
同氏は「こうしたこともあって、このeコマースセグメントの成長加速と収益増大は、ウォルマートにとってはいい兆候といえるだろう」と話す。
ウォルマートはここ数年、EC事業の改良に懸命に取り組んできた。だが、ソーンダース氏は「まだやるべきことはたくさんある」といい、ウォルマートのオンラインショッピングで改良の余地のある点を次のように指摘した。「ウォルマートのウェブサイトは使い勝手が良くないところもあるし、インスピレーションにも欠ける」。
[原文:Walmart’s e-commerce business is set to hit $75B in sales this year]
Gabriela Barkho (翻訳:SI Japan、編集:戸田美子)