成功が期待できる試験プログラムを経て、ウォルマート(Walmart)は100万人を超える、その店舗従業員の研修にバーチャルリアリティ(VR)を使うようになっている。今年末までに5000カ所以上ある店舗すべてに、オキュラスゴー(Oculus Go)VRマシンが行き渡る予定だ。
成功が期待できる試験プログラムを経て、ウォルマート(Walmart)は100万人を超える、その店舗従業員の研修にバーチャルリアリティ(VR)を使うようになっている。
今年末までに5000カ所以上ある店舗すべてに、オキュラスゴー(Oculus Go)VRマシンが行き渡る予定だ。このモデルは、Dell製HTC Viveといったハイエンド競合商品と比べると安価だ。カリフォルニア州を拠点にするVRソフトウェア制作会社ストライバー(STRIVR)が、従業員の研修用の45のVRプログラムを考案した。これらのプログラムには、ウォルマートからのデータに基づき、デリミートのスライスからケールや人参などの商品在庫の補充に至るまで、店舗運営に関連するすべてが網羅されている。契約条件は明らかにされていないが、そのパートナーシップ契約では、ストライバーがオキュラスからデバイスを購入し、ウォルマート指定ソフトウェアでデバイスをカスタマイズしている。
VR利用のメリット
VR技術によって、現在働いているウォルマートの従業員が新しいスキルをより速く、監督者も少ないなかで身につけることが可能になっていると、ウォルマートのデジタルオペレーション・シニアディレクター、ブロック・マッキール氏はいう。
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「VRによる研修は、ほぼ再現不可能なシチュエーションを同僚たちが経験できるよう安全な空間を提供してくれる。その研修は経験に基づいたもので、記憶に残り、かつ速い」と、マッキール氏は声明で述べている。
より効率的でもある。ストライバーのマーケティング部門責任者ダニー・ベルチ氏によれば、ウォルマートは新人研修の専門家を新規で雇用したり、既存のスタッフを研修の監督官として転用する必要がなくなる。
「アメリカ企業における研修は、何か新しいもの、かつ活性化につながるものを求め、業績を悪化させることにもなっており、企業はより良く、より速く、より安く、より効果的な研修方法をただ模索している」と、ベルチ氏は述べる。
ウォルマートがこの技術のテストにはじめて着手したのは2年前のことだ。年末までに、1万7000台のオキュラスデバイスがすべてのウォルマートの店舗に対して配分される予定だ。この試験は2016年に約5カ所のウォルマート店舗で始まり、2017年には同社の研修「アカデミー(academies)」や社外研修施設200カ所に拡大された。
他社におけるVR事例
ストライバーは、BMW、フィデリティ(Fidelity)、チポトレ(Chipotle)、ジェットブルー(JetBlue)を含め、幅広い業界に渡る、アメリカの大企業とも取引を行っている。
小売業は、VRを使用して顧客の関心をひく方法を考え出すことに苦心しているが、この技術には社内研修やその他のバックエンドでの運用に非常に有用な使用事例がある。2017年、ロレアル(L’Oréal)はニューヨーク本社でVRの使用を開始、新たなプロダクトラインの研究開発プロセスをスピードアップし、そのプロセスを数カ月から数週間に短縮している。一方、チポトレはVRを使用して従業員が期待通りに、より迅速にブリトー生産ラインの作業を行えるようにしている。
ウォルマートの利用目的について言えば、頻繁には起きないがはっきりとした計画が必要になる最悪の事態を想定した訓練を、VRを利用して従業員に受けさせることも可能だと、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスの教授、アニンディヤ・ゴース氏は述べる。最近の例として、彼は2018年9月に起きたハリケーン・フローレンスをあげている。
「それほど頻繁に起こらない事象に対して研修環境を設定するにはコストがかかる」と、ゴース氏はいう。「気象関連災害のために従業員を訓練しようとして、リアルな環境を作り出すには手間がかかる、あるいは費用がかさむ。では、従業員がシミュレーションしてはどうだろう? このやり方なら、費用が節約できる」。
「新技術のすごい点」
ミネソタ・ダルース大学のラボビッツ・スクール・オブ・ビジネス・アンド・エコノミクスでマーケティング助教授を務めるマラト・バクパイエフ氏は、主業でけん引力を得るために高価で使いづらいヘッドセットやハイエンドコンピューターが必要になることを非難した。ARは、ウィリアムズ・ソノマ(Williams Sonoma)などの小売業者にとって手が出しやすいプロダクトだ。しかし、当面はこのような企業間のパートナーシップがオキュラスのような企業にとっては重要であり、仕事でこの技術を体験した従業員が自宅用にVRヘッドセットを買うことになるかもしれないと、バクパイエフ氏はつけ加えた。
「ますます拡大することは確実だろう。それが、概して新しいテクノロジーのすごい点だ」と、バクパイエフ氏は語った。