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オンライン「医薬品」業界の競争が、アメリカで激化:顧客体験の再設計で勝負に出るウォルグリーンズ

米国では、医薬品のオンライン注文が増えており、薬局がオンライン業界への進出し、シェアの増加に取り組んでいる。

11月26日、ウォルグリーンズ(Walgreens)は、アプリおよびロイヤルティプログラムのリブランディングを発表。新アプリには、24時間いつでも薬剤師とチャットができる機能のほか、予防接種の予約状況やインフルエンザに関する情報を、リアルタイムに提供する機能が追加されている。ちなみに、この発表があった前日には、Amazonも医薬品提供サービスを、ついに発表している。

現在オンライン薬局業界は、ウォルグリーンズ以外にもCVSやコストコ(Costco)、ウォルマート(Walmart)といった新興勢力に加え、キャプシュール(Capsule)、ロー(Ro)といった、新興オンラインスタートアップがひしめく激戦区となっている。各社は競合に打ち勝つため、なるべく簡易かつ迅速にユーザーの注文を処理して薬を届けるサービスや、複雑に入り組んだヘルスケアシステムを理解してもらうためのサービス作りを進めている。また、自社アプリの利用頻度を高めるため、新たな機能開発も絶えず続けられているという。

ウォルグリーンズでCMOを務めるパット・マクリーン氏は、プログラムのリブランディングを行った目的を「ユーザーにとってのオンライン注文のハードルを下げ、デジタル化による便利で優れた体験を提供するためだ」と語る。

コロナ禍のなか、現在ウォルグリーンズのオンラインサービスを利用するユーザーは増え続け、収益も伸長している。実際、10月に行われた第4四半期の決算発表によると、同社のオンライン収益は前年比で39%増、総売上は前年比で3.6%増となっている。

また、ウォルグリーンズは2020年の春、新アプリにも実装された先行注文型のドライブスルーサービスの提供を開始。顧客は、ウォルグリーンズの店舗で販売されている医薬品や健康関連商品、生活必需品をオンラインで注文できる。なお受け取りは、店舗に行けばドライブスルー形式で受け取ることができる。また、一部の商品に関しては、ポストメイツ(Postmates)やドアダッシュ(DoorDash)を利用した即日配達も行われているという。

マクリーン氏はこのアプリを通じ、顧客一人ひとりにパーソナライズされたサービスと、健康に関する総合的なコンテンツの提供を目指すと強調する。続けて同氏は、その実現に向け「ヨガやスポーツクラブとの提供も視野にいれて、さまざまなコミュニティとの繋がりを作っていきたい」と付け加えた。

近代化を進める従来型の薬局

コロナ禍においてCVSやウォルグリーンズは、生活必需品を扱う店舗に指定されたことで大きな恩恵を受けた。さらに、コロナ禍の影響で非医薬品の売上が伸びたことも、これら企業にとって大きな追い風になった。

新型コロナウイルスが猛威を振るう前、薬局各社における店頭での非医薬品販売実績は、横ばい、または減少傾向という状況が続いていた。

そのため各薬局は、以前から実店舗の顧客体験の改善を行っていた。たとえば、雑誌や菓子類の代わりとしてヘルスケア関連商品を展開したり、一部店舗へのヘルスケアクリニックの導入などが挙げられる。こうした取り組みの目的は、利用者の健康に関するあらゆるニーズに応えるような、ワンストップ型の店舗運営を実現することだ。

企業ごとの施策を見ていこう。ウォルグリーンズは、クローガー(Kroger)と提携し、一部限定地域の店舗で持ち帰り用の食事を販売しているほか、ジェニー・クレイグ(Jenny Craig)のショップインショップも展開している。また、同社は7月にもビレッジMD(VillageMD)と提携。既存店舗と隣接する病院を開設し、医師による診察を受けられるようにすると発表している

一方、CVSも2021年末までに、1500店舗をヘルスハブ(CVS HealthHUB®)とする計画を発表。ヘルスハブは、ヘルスケア機能をこれまで以上に充実させ、新しいヘルスケア体験を提供するために、CVSが展開する実店舗フォーマット。ここでは、幅広い診療科目のケアを提供するほか、ヨガサービスも提供する予定だという。

なお、長年にわたり店舗内に薬局を設置していたウォルマートも、現在プライマリ・ケア専門のクリニックの立ち上げを、実験的に開始している。

オンラインサービスの改善

これらの企業は、いずれもアプリやWebサイトの開発も同時に進めている。

ウォルグリーンズは、アプリのリブランディングだけでなく、マイウォルグリーンズ(myWalgreens)というロイヤルティプログラムの刷新も予定している。これまで同社のロイヤルティプログラムでは、会員が各々のタイミングで、ポイントを引き換えるというシステムが採用されていた。このシステムについてマクリーン氏は、「ユーザーにとってややこしく、使いにくいものだった」と分析する。

そこで同社は、会員がオンラインでPB(プライベートブランド)商品を購入した場合、5%のキャッシュバックが発生するサービスを追加するなど、プログラムを変貌させている。また、ここ数年、ウォルグリーンズは、ビタミン剤や体温計、風邪薬、インフルエンザ薬など、コアな健康とウェルネス製品に重点を置き、プライベートブランドの製品数を絞っている

機能面での課題も

調査企業のフォレスター(Forrester)で、シニアアナリストを務めるアリエル・トルツシンスキー氏は、CVSやウォルグリーン、コストコ、ウォルマートは、「これまで対面または電話での注文が基本だった医薬品に、オンラインの要素という新しい風を吹き込んだ」と語る。「このことは、たとえば薬剤師とのオンラインチャット機能、迅速な医薬品の受渡し、宅配時間の指定、商品再入荷の時刻の通知といったサービスに表れている」。

しかし同氏は、CVSやウォルグリーンといったオンライン薬局には、グッドRx(GoodRx)のような価格比較ツールが不足していると指摘する。こうしたツールとの連携により、「商品ごとの違いを顧客に説明する薬剤師の仕事も、効率化される可能性がある」という。

シンプルさと低価格は、SPAC(特別買収目的会社)を利用して、先日上場を果たしたばかりのヒムズ(Hims)や、ローといった遠隔医療プラットフォームの売りでもある。こうしたプラットフォームは、CVSやウォルグリーンズほど医薬品の取扱点数が多いわけではない。しかしこうした企業の機能やサービス面で、顧客体験を実店舗型の薬局に近付けようとする取り組みは、目を見張るものがある。ローは抜け毛やEDの薬といった男性向けの健康商品を主力として、2017年に立ち上げられたD2Cブランドだ。2020年3月には、取り扱うすべての医薬品を、月額5ドル(約520円)で購入できるオンライン薬局の試験運用を発表している。

Amazonの存在

また、Amazonは、処方サービスであるAmazon ファーマシー(Amazon Pharmacy)の発表にあわせ、プライム会員向けに2日で商品を無料配送し、ジェネリックとブランドオリジナルの医薬品を、それぞれ最大で8割引と4割引で提供するプロモーションを展開。これまで、CVSやウォルグリーンズといった薬局で薬を買っていた利用者が、Amazonでより安く同じ商品を購入できるというのは、実際のところ薬局各社にとって大問題だ。

トルツシンスキー氏は、「Amazonは、米国でおよそ1億2000万人のプライム会員を有するが、CVSやウォルグリーンズのユーザー数も負けず劣らずだ」と語る。たとえば、ウォルグリーンズのロイヤルティプログラム会員はすでに1億人を超えており、CVSによる医薬品の年間提供数はおよそ8000万だ。

「問題は、Amazonのプライム会員で、CVSやウォルグリーンを利用している人数がどれくらいいるかという点だ。両者を利用している顧客がいる可能性は、かなり高い」と同氏は語る。それゆえ、「薬局はこれまでないがしろにしてきた、オンライン体験を見直していく必要がある」と指摘する。

前出の、ウォルグリーンズCMOであるマクリーン氏は、Amazonの薬局分野への参入についての見解と、それに対する対抗策について次のように述べている。「確かなこととして、我々は9000の店舗と2万5000人の薬剤師を抱えている。そして専門知識を有し、ユーザーや患者、コミュニティと深く結びついているだけでなく、デジタルトランスフォーメーションを推進し、利用者にとっての便利さを追求している。『健康を支える、頼りがいのある存在』として、我々は人々のなかに深く根付いているものと確信している」。

[原文:Walgreens redesigns its app and loyalty program as the digital pharmacy space heats up

ANNA HENSEL(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)