カリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:以下、CCPA)が2020年1月に施行される。しかし、全米広告主協会(ANA)の年次会合「マスターズ・オブ・マーケティング」に参加したマーケターたちは、まだ準備が整っていないようだ。
カリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:以下、CCPA)が2020年1月に施行される。しかし、全米広告主協会(ANA)の年次会合「マスターズ・オブ・マーケティング(Masters of Marketing)」に参加するため、フロリダ州オーランドに集まったマーケターたちは、まだ準備が整っておらず、その規制の影響も不確かだと感じているようだ。
一部のマーケターは、CCPAが本格始動するまで、これまで以上に注意するしかないと考えているようだ。世界規模の市場を持つ匿名希望のマーケターは、カリフォルニア州の消費者をターゲットにしていないことを理由に挙げる。「全貌がわかるまで、リスクと見なす理由があるだろうか?」。
CCPAの事実上の執行時期は2020年7月となっている。あらゆる種類のデジタルデータを収集する。すべての企業が対象だ。小売企業はもちろん、顧客データを保存、使用するすべての企業が対象となる。
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「いまのところ先行き不透明」
マスターズ・オブ・マーケティングはおそらく、米国最大のブランドマーケターの会合だが、CCPAがステージ上の主な議題になることはなかった。Googleのグローバルクライアント、エージェンシーソリューション担当プレジデント、カーク・ペリー氏が10月3日のランチタイムプレゼンテーションで、消費者と規制当局がプライバシーを重視しているため、広告をさらにパーソナライズしたいマーケターは困難に直面していると指摘しただけだ。酒の席やディナーのテーブルがCCPAの話題で持ちきりになることもなかったが、マーケターのあいだからは、広告への影響を心配する声が上がっていた。
ブースでブランドにデータを売り込んでいたあるベンダーによると、マーケターはCCPAについて質問してきたが、それ以上に、データの出どころやコンプライアンスに関心を持っていたと振り返っている。会合における迫り来る規制を巡る会話の方向性は、データとデータプライバシーに広い視野を持つことだったようだ。
消費財(CPG)大手で働く匿名希望のマーケターは「自分は専門家だと感じている者は誰一人いない」と話す。「我々の会社でも、ITチームが対策を練っているが、まだ指針すら存在しない。いまのところ先行き不透明で、成り行きを見守っているところだ」。
GDPRとの兼ね合いもある
CCPAとその対策について質問したすべてのマーケターから、同じ不透明感が伝わってきた。「アドバタイジング・ウィーク(Advertising Week)」の参加者と異なり、ANAのマーケターは自社のCCPA対策について率直に話すのをためらっていた(参考のために言っておくと、パブリッシャーはCCPAへの備えもできておらず、3月の米DIGIDAYの調査によれば、回答者の52%がまだCCPAの準備をはじめていなかった)。
理由をひとつ挙げるとすれば、マーケターはすでに欧州連合(EU)の一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)に対応しているため、不安を感じていない可能性がある。大手ファストフードチェーンで働くベテランマーケターは「GDPRが最初に施行されたため、彼らはGDPRのカリフォルニア版と考えている」と分析する。「厳密に言えば、正しい分類ではないが、ニュースの見出し程度のことしか知らない人たちはそのように分類している」。
恐怖心が原因の可能性もある。モバイル・マーケティング協会(MMA)のCEOグレッグ・スチュアート氏は「彼らは大きな恐怖を感じている」と述べ、ANAの会場では、CCPAは話題の中心にならなかったが、その後、MMAが話をしたマーケターたちはCCPAに言及していたと補足した。「問題は、CCPAが(GDPRより)身近に感じられることだ。その身近なCCPAに、大きな不明点がいくつもある」。
データベース企業ウィンモ(Winmo)のCEOデイブ・カリー氏は「管理上の負担や実施がとても複雑で、解明しなければならないグレーゾーンがまだある」と話す。「マーケターはそれについて話しているが、何もしていない。(何をすべきかについて)一致した見解がない。もう10月だというのに」。
業界団体間のさらなる連携を
今回取材したANAの参加者たちは、見解の一致と業界団体間のさらなる連携を求めていた。規制の構想段階に関わる人を増やしてほしいのだ。こうした要望は、プライバシー規制の断片化に対する懸念から来ている。他州も独自の規制を検討しており、そうなればマーケターやエージェンシーにとって、米国ははるかに困難な市場になるかもしれない。
電通イージス・ネットワーク米国法人(Dentsu Aegis Network Americas)のCEOニック・ブライアン氏は、「データ規制の強化は必要なことだが、ひとつ懸念がある。ANA、米広告業協会(4A’s)、インタラクティブ広告協議会(IAB)、世界広告主連盟(WFA)、デジタルパブリッシャーなど、マーケティングエコシステム全体の目的やアプローチが明確でないことだ」と指摘する。「私たち皆がひとつになるまで、どのようにデータを利用すれば、消費者、ブランド、コミュニティ、社会のためになるかを示すことはできないだろう」。
CCPAがANAのステージ上で公然と語られることはなかったが、だからこそ、ANAに参加したマーケターたちは、ファーストパーティデータを強化できるマーケティングプログラムの開発に大きな関心を持っているのかもしれない。
レベレーション(Revelation)の北米担当マネージングディレクター、マット・ワースト氏は次のように述べている。「法令、ルールなどの規制に関する不透明感が高まっているいま、コンテンツ、データ、消費者との関係の所有権を取り戻すことについて話したり、考えたり、(行動を起こす)可能性を探ったりするブランドが増えている。これは、ブランドが所有するコンテンツをより多く作成するための大きな推進力を生み出すだけだ」。
Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)