一般化が進む VR 、それでも「VR広告」の道は険しい

2018年5月1日(米国時間)開催のFacebookカンファレンス「F8」で、同社は、VR(バーチャルリアリティー)ヘッドセット「Oculus Rift(オキュラスリフト)」の安価なワイヤレスバージョン「Oculus Go(オキュラスゴー)」の発売を発表した。これは、これまで大いに宣伝されてきたこの技術が、メインストリームになることを意味する。

Facebookはいくつかの企業と手を組んで、ゲーマーの領域に存在したVRを日常で使えるものに変えようとしている。

エージェンシーのGYKアントラー(GYK Antler)で戦略プランニングおよびアカウントサービス担当エグゼクティブディレクターを務めるマイク・スティーブンス氏は、次のように語る。「VRヘッドセットは、以前に比べると価格も手頃になってきて、新しいプレイヤーがこの環境に入ろうとしている。だが、多くのマーケターにとって支出を正当化するに足るほど普及が進むまでには、まだしばらく時間がかかるだろう」。同氏は、およそ30組いるクライアントのうち、VRの実験をしているところは、3つだけだと話す。

マーケターたちの警戒感

Googleは、VRコンテンツをキャプチャーできるカメラの新シリーズを導入しているし、VR広告をスケールアップしやすくするプログラマティックプラットフォームの立ち上げ実験を進めるスタートアップもある。それでもマーケターたちは、VR広告がブランドの戦略の強力な要素となり、実験用予算の枠の外へ踏み出すまでにはまだ時間がかかるだろうと言っている。そもそもそうした広告が広がるかどうかわからないというものもいる。

ノキア(Nokia)マウンテンデュー(Mountain Dew)、ホンダ(Honda)、メイシーズ(Macy’s)のように早い段階からVR広告を採り入れたところはある。しかし、グリーンライト・インサイツ(Greenlight Insights)の10年予測のなかで、アナリストたちは、VRビジネスは、2018年中は「非常に控えめ」ではあるが、2026年までには年間売上が380億ドル(約4兆円)に増加すると予測している。

デジタルショップのコミュニティー(The Community)でイノベーション担当シニアディレクターを務めるクリス・ネフ氏は、「我々はVRビジネスを継続的に確立するための正しいレシピに目を向けている」と述べ、ワイヤレスで安価なVRヘッドセットの登場とコンテンツへのアクセスのしやすさを指摘する。「だが私は、これがブランドによる支出の増加につながると考えることには警戒感を持っている。ブランドは、この空間でゲームに参加するかどうかを、すでに考え、答えを出している」。

クリエイティブのハードル

マーケターはさらに、クリエイティブに関するハードルを考慮しなければならない。ほかの種類のコンテンツと違って、VRフィルムの360度バージョンのアップロード先としてYouTubeかFacebookに頼らない限り、VRをほかのチャンネルで効果的に再利用することができない。グループ・エム(GroupM)のエージェンシー、エッセンス(Essence)でコンテンツおよびイノベーション担当シニアバイスプレジデントを務めるジェレミー・シーゲル氏は、特定のチャンネル向けに特定のVRコンテンツを制作するには一企業が取り戻せる以上の多くの時間とリソースが必要で、ゆえに、踏み込んだ実験をしたがらない企業が多いという。加えて、VR広告は新しい媒体のなかで場違いなように見えると、クリエイティブエージェンシーであるバーバリアン(Barbarian)の最高技術責任者(CTO)を務めるチャック・フレッチャー氏は話す。

「VRの途中に広告が入ってくるなんて、ゾッとする提案だ」と、フレッチャー氏。「冷蔵庫に飲み物を取りに行くこともピーナッツを食べることもできず、選択の余地なく受け入れざるを得ないとき、30秒のスポット広告がどれほど長く感じられるか想像してみてほしい」。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)