アメリカでは、スマートスピーカーを保有する消費者は41%にものぼるが、Amazon AlexaやGoogle Homeで買い物をする人の割合はそれほど多くはない。音声認識による購入が大幅に増えるまで、ブランド各社のマーケターは様子見する構えだ。
アメリカでは、スマートスピーカーを保有する消費者は41%にものぼるが、Amazon AlexaやGoogle Homeで買い物をする人の割合はそれほど多くはない。音声認識による購入が大幅に増えるまで、ブランド各社のマーケターは様子見する構えだ。
インターネット検索の黎明期と同様、音声認識技術のもつポテンシャルは、いまだ完全に発揮されていない。最近、Amazonが行った発表では、2018年の年末商戦におけるボイスコマース(音声を使った購買体験)について取り上げられている。Amazonによると、Alexaで購入する消費者は1年前と比べて3倍以上に増えているという。これが進歩であるのは間違いないものの、具体的な数字については明かされていない。実際、ユーザーの普及曲線を見れば2019年も実験段階から抜け出すには、ほど遠い状況だ。
「赤子の域を出ていない」
デジタル広告企業のグッドウェイ・グループ(Goodway Group)で企業パートナーシップディレクターを務めるアマンダ・マーティン氏は「ボイスコマースは、まだ赤子の域を抜けていない。普及率がどう増えるか、今後の進展を見守るほかないだろう」と指摘する。同氏は今後、スマートスピーカーの使用者が増えるにつれて普及も進み、あと2〜3年で実を結ぶのではないかと予測している。
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2018年9月時点で、アメリカのスマートスピーカー市場で65%のシェアを占めるとされるAmazonだが、インフォメーション(The Information)によるとAlexaを搭載したデバイスの所有者のうち、Alexaで購入する人の割合はたったの2%となっている。
「音声による買い物は、検索と同じような道筋をたどるのではないだろうか。Googleと協調する形で進行し、Amazonが参入している。Googleは検索に関して中立的な立場を保とうとする傾向がある」と、マーティン氏は分析する。
マーケター考えるべきこと
また、マーティン氏は2019年の展開として、定期的な購入が必要な安価な日用品(キッチンタオルやトイレットペーパーなど)については、音声をきっかけとする購入が進むのではないかと予測している。スマートスピーカーは消費者の購入履歴を記憶し、以前購入した商品を簡単に購入できるようになっており、それ以外の購入と比べると容易になっている。だが、同氏がスマートスピーカーの使用において懸念しているのは、広告に関する可能性の問題だ。カスタマーが音声で繰り返し購入する場合に、ライバル企業がそれを妨げるような形で広告を出した場合にユーザー体験が損なわれるのではないかという懸念だ。
「広告主や業者は、(カスタマーが)どのように行動するかを見ることで、普及率が高まったときに向けた準備ができる」と、マーティン氏は指摘する。
マーケターがいまだにつかみかねているのが、検索と同じように各プラットフォームが特定の小売業者を優遇する場合にどのように対応すべきか、そして視覚的な広告が使えないときにどのように購入に結びつけるかといった点だ。たとえばガートナーL2(Gartner L2)の最近の発表によると、初期状態のAlexaが推奨する商品は、「Amazon’s Choice」の商品となっている。一方でGoogle Homeの場合は大手小売業者の結果が表示される。Googleショッピングでもっとも目立って表示されるのはウォルマート(Walmart)となっており、音声によるおすすめの上位3商品にウォルマートの商品が含まれる割合は40%ト以上だ。結果として、小売ブランドは「開かれたマーケットプレイス」としての立ち位置を確保するGoogleと提携するほうが得られるものが大きい。
音声技術はまだ進化の途上
音声プラットフォームがどのような仕組みで商品を推奨するか以外にも、完全にシームレスではないカスタマー体験も普及の妨げになりうると指摘するのが、音によるブランディングを専門とするエージェンシーのマン・メイド・ミュージック(Man Made Music)で最高イノベーション責任者を務めるケビン・パールマッター氏だ。
「音声体験は人の潜在意識に即座に影響を与え、それが行動につながる」と、パールマッター氏は指摘する。「いきなりコールセンターの番号を教えられたら、カスタマーは二度と利用しなくなるだろう」。
音声技術はまだ進化の途上にあるため、ヨーロッパのユーザーが体験したような誤作動や機能停止といった問題がつきまとう。アナリストはそれゆえに、普及にはまだまだ時間がかかると見ており、音声デバイスは購入を完了するためではなく、商品について調べるために使われるだろうと指摘している。
ベンチャーキャピタルのループ・ベンチャーズ(Loup Ventures)を創設したウィル・トンプソン氏は、最近のブログ記事で次のように記している。「消費者調査とデジタルアシスタントを使った経験から、音声で購入を完了させる消費者の数は多くならないだろうと考えている。コマース関連の検索クエリは、製品リサーチとローカルビジネス探索につながっていると我々は考えており、我々の疑問はそれに起因したものだ」。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)