ビジョンラダー:理想を現実に変えるためのフレームワーク

本記事は、FICC代表取締役社長を務める、荻野英希氏による寄稿コラムとなります。

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ビジョンは組織の共有する目標であり、人々を束ね、活気づけるものです。ビジネスの理想の形の定義であると同時に、持続的な成長の原動力にもなり得ます。この貴重な資源を最大限に活用するためには、正しい設計と、事業活動への統合が必要となります。

しかし、多くのビジョンは、実際のビジネスと乖離がし、ただの掲げられた理想に終わっています。ビジョンとの矛盾を抱えたビジネスは、必ずどこかで行き詰まります。ビジョンラダーは、多くの人々がより良い社会の実現に向けて協働し、その理想を現実にするためのフレームワークです。

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VISION

利益はすべてのビジネスの目的であり、その成功を定義する指標です。しかし、それは唯一の目的ではなく、単体で達成出来るものでもありません。意図的でなくても、すべてのビジネスは人々の生活をより良くする存在目的(パーパス)を持っています。利益は、企業がその存在目的を果たした結果にもなり、それを可能にする原因にもなり得るのです。「啓発された自己利益」と呼ばれる、この利益と存在目的の相互因果関係こそが、ビジネス成長の原動力となるビジョンの基盤です。

利他的行動が利益につながるという考えかたは未熟です。ほとんどの場合、それらは相反関係にあり、人々に良く、ビジネスにも良いビジョンの設計には多くの時間と労力を要します。しかし、人々の生活をより良くすることを通じて利益を得ることができれば、ビジネスが成功する可能性は飛躍的に向上します。

  • ビジネスはどのように人々の生活をより良いものにするのか?
  • ビジネスはどのように社会に好ましい影響を与えるのか?
  • それはどのように理想的な市場の形成につながるのか?
  • ビジネスにとって理想的な市場とは何か?

CULTURE

人々にとって良く、ビジネスにとって理想的な市場は、現状のままでは存在し得ません。ビジョンを達成するためには、多くの人の心をつかみ、新しい考えや価値観に向けて牽引する必要があります。「文化的イノベーション」(https://amzn.to/2Pc0cvp)は、人々が共有する考え方や価値観から生まれる社会的行動を変化させます。これには新たな考えのシンボルとなり、共感できる存在意義を示すブランドが必要となります。

ブランドは人の心のなかにある「意味」を示します。優れたブランドは、単なる製品やサービスよりもはるかに重要な意味を持ち、消費者との強力な関係を築くことができます。もっとも重要な意味を持つブランドは、消費者のアイデンティティーの一部となり、自己表現の手段になっています。大切な考えや価値観を体現し、そのシンボルとなるブランドは、その支援者に存在意義を感じさせ、ほかの選択を無効化することができるのです。

文化的イノベーションには、人々にとって好ましくない状況を生み出す固定概念に対抗するイデオロギーに基づきます。イデオロギーは、一時的な社会的混乱や分断によって人々が求めるものであるべきです。ブランドが言葉ではなく、行動を通じてそのイデオロギーを示さなければ、人々に受け入れられることはありません。そして、その表現にはイデオロギーを連想させる、サブカルチャーなどの既存の文化的シンボルを用いることが効果的です。

  • 人々にとって好ましくない現状を生み出す固定概念は何か?
  • 人々がイデオロギーを求める原因となる、一時的な社会的混乱や分断は何か?
  • ブランドはどのような行動を通じてイデオロギーを示すことができるか?
  • イデオロギーを連想させる既存の文化的シンボルは何か?

NETWORK

社会的な文化の変革をビジネスが単独で起こすことはできません。広く蔓延する固定概念を打破するためには、新たな考えに賛同する多くの組織や個人の協力が必要です。ビジネスが文化的イノベーションを実現する上で、不足する資源を保有する組織や個人とのつながりは、ビジョンの達成に欠かせません。

文化の変革に必要な資源は、4つのカテゴリーに分類することができます。メディア的影響力、倫理的権威、経済的影響力、そして政治的影響力です。ビジネスは不足する資源を特定することで、戦略的に文化的イノベーションに取り組むことができます。

  • メディア的影響力、倫理的権威、経済的影響力、政治的影響力のうち、不足が多い資源は?
  • どの組織や個人が不足する資源を保有しているか?

RESOURCE

ビジネスの力は活用可能な資源の量と、資源に対する需要で決まります。文化的イノベーションを起こすためには、多くの組織や個人の支援と交換できる資源が必要となります。それは交換のたびに消耗される資金や時間などの有限資源ではなく、知識やデータ、テクノロジーなどの消耗されない「無限資源」であるべきです。無限資源を資金や時間などの有限資源や、文化的イノベーションに必要な4種類の資源と交換することで、ビジネスはその力を劇的に増やすことができます。

ビジョンに描かれた理想的な市場は、ビジネス固有の資源に対する高い需要が存在し、競争相手がいない状況を示します。そのために、ビジネスは間接的にでも人々の生活をより良くする可能性を持ち、まだ人々が需要を持たない資源に投資する必要があります。「イノベーションのジレンマ」と呼ばれる、市場が存在しない資源への投資はリスクを伴います。しかし未来の市場に投資しなければ、ビジネスが先行者利益を得て、持続的な成長を実現することができません。

  • ビジョンの達成に欠かせない組織や個人が求め、交換によって消耗されない資源は何か?
  • ビジョンに描かれた理想的な市場は、この資源の需要につながるか?
  • この資源はどのように人々の生活をより良いものにすることができるか?
  • 競合はなぜこの資源に投資する可能性が低いのか?
  • この資源はなぜ持続的な競争優位性になり得るのか?

Written by 荻野英希
Photo by Shutterstock