「メディアを取り巻く環境は変わった」:ビンス・マクマホン氏は、なぜXFLに再挑戦するのか?

米プロレス団体WWEの代表取締役会長兼最高経営責任者ビンス・マクマホン氏は、リック・フレアー、ジ・アンダーテイカー、トリプルHらを輩出したリングで名を上げた。挑戦から逃げるような男ではない。

マクマホン氏がアメリカンフットボールの新しいプロリーグ、XFLを立ち上げる初の試みに失敗したのは17年前。そしてマクマホン氏はいま、自らの資産から1億ドル(約110億円)を投じて、再びXFLの立ち上げに挑戦しようとしている(参考:Wiki)。それも、従来のテレビ放映権でがんじがらめになった既存のスポーツリーグ事業を横目に、デジタル動画配信を行おうというのだ。

XFLの再興計画

マクマホン氏と言えば、WWEの会長兼CEO(そして時にはリングに立つレスラー)としての顔が有名だ。そんな彼はいま、2020年にXFLを再興する計画を立てている。立ち上げの時点で同リーグは8チームを擁し、レギュラーシーズン10試合、それに続いてプレーオフ2回戦を行う。マクマホン氏によると、参加する都市は現在検討中だが、競争に勝つために選手の給料はNFL以上になるだろうとのことだ。同リーグの試合は、NFLもカレッジフットボールもオフシーズンとなる春季の日曜日に行われる可能性が高い。

XFLの新規事業は、アルファ・エンターテイメント(Alpha Entertainment)という新しい企業を通してマクマホン氏が独自に資金供給を行っており、公式にはWWEとの繋がりは存在しない。マクマホン氏は米DIGIDAYのインタビューで、この事業の立ち上げにおいて1億ドルを投じたが、リーグを維持するためにははるかに多くの資金が必要になると語っている。

XFLはもともと、WWEとNBCのジョイントベンチャーだった。鳴り物入りで始まった同リーグは、初回放送こそNBCが広告主に約束していた以上の視聴者を集めたものの、その後はプレーの質の低さなどから視聴率はガタ落ち。シーズンの終わりにはNBCが撤退し、XFLは、NFLのライバルとして同じように注目を集めつつも失敗したUSFLに加入する形で消滅した。

デジタル配信が肝

マクマホン氏は、今回は前回の失敗のようにはならないことを願っている。今回のXFLは従来のテレビネットワーク放送の可能性も探っているが、マクマホン氏は最初はFacebookやTwitterといったデジタルプラットフォームとの提携に力を注ぐつもりだという。FacebookもTwitterもすでにNFLやMLBといったスポーツのライブ放送を行っており、なかでもFacebookは来年にはNFLとの「Thursday Night Football」の放送契約が終了すると言われているものの、すでに契約しているWWEの新しいプロレストーナメント「Mixed Match Challenge」をFacebookのWatchで放映している。

マクマホン氏は「メディアを取り巻く環境は変わった。FacebookやAmazonはすでに(スポーツのライブ放送)に乗り出しているが、これははじまりにすぎない」と考えており、次のように語った。「現状では、CBSの番組をそのまま放送しようとしている。これではダメだと思う。もし彼らが自社で番組を制作でき、試合の放送についてのアイデアを持ち合わせていればこんなやり方はしないはずだ。私たちがやろうとしているのはまさにそれだ。従来のテレビ放送はもちろん重要だろうが、デジタルの動画配信も今後は少なくとも同じくらい重要になっていくだろう」。

マクマホン氏は、すでにデジタルプラットフォームと交渉を行っているものの、まだ公表できることはないとしている。

パートナーの思惑

XFLを軌道に乗せるのは容易ではない。それについてはマクマホン氏も、業界関係者も見解は同じだ。だが、ガーションメディア(GershonMedia)でプレジデントを務めるバーナード・ガーション氏は、AmazonやGoogle、Facebookといったテック大手がスポーツのライブ中継のパートナーを求めている以上、NFLほどの放映権料を要求しないXFLも契約を結べるチャンスはあると考えており、次のように述べた。

「FoxやCBSがXFLの要求額を支払うことはないと思う。だがFacebookやGoogle、Amazonはいずれもスポーツのライブ中継を増やしたいと考えている。もしXFLの要求する放映権が2000万や3000万ドル(約22億円や33億円)であれば、十分に可能性は出てくる。マクマホン氏は馬鹿な男ではないし、解決までの時間は2020年まで残されているのだ」。

マクマホン氏は、デジタルメディアのパートナーを通じて、よりインタラクティブな要素も取り入れたいと語っている。たとえば選手名をファン投票で決めたり、試合のライブ中継中にSNSコメント等を表示する第二画面を設けたりするなどだ。前回のXFLでは、過激なアメフトリーグとして大々的にマーケティングが行われた。だが現在アメフト界で脳震盪が問題となっていることを考えれば、同様の手法はあまり適切ではないだろう。マクマホン氏は、過激性を全面に出すのではなく、競技性の高いアメフトとしての新しい一面を大切にしたいと語る。たとえば短時間でよりテンポの速い試合などだ。

私財を投じた挑戦

マクマホン氏は、XFLはWWEと企業レベルで繋がりを持つことはないと強調する。WWEがデジタルプラットフォームで成長するためにとった戦略をアルファ・エンターテイメントも用いる可能性はあるが、それでも同社は独立企業なのだ。

これについてマクマホン氏は次のように語った。「投資する金額を考えれば、WWE社からではなく、私個人が出すべきだ。WWEの会長兼CEOとして、WWEがこのようなリスクをとることが正しいかはわからない。だから私自身が、自分で計算したリスクをふまえて行動しようと考えている」。

また同氏は、これから変わっていく可能性はあるものの、現在のところ資本提携のパートナーを探すつもりはないという。マクマホン氏はアメフトという「140億ドル(約1.5兆円)規模の市場の分け前が貰えるならば悪くないと思っている」と語った。

Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)