旅行代理店TUIはいまや、有料ソーシャル予算の3分の1をFacebook、インスタグラム(Instagram)などの動画に投じている。同社のプログラマティックメディアバイイング部門を率いるニコラス・エルスハウト氏によれば、有料ソーシャルはほかのチャンネルより利益に直結しやすく、検索すら上回るという。
旅行代理店TUIはいまや、有料ソーシャル予算の3分の1をFacebook、インスタグラム(Instagram)などの動画に投じている。
TUIベネルクス(TUI Benulux)のプログラマティックメディアバイイング部門を率いるニコラス・エルスハウト氏によれば、有料ソーシャルはほかのチャンネルより利益に直結しやすく、検索すら上回るという。ただし、検索予算をどのくらい有料ソーシャルに回したかについて、エルスハウト氏は具体的な数字を明らかにしていない。「現在、有料ソーシャル予算の3分の1を動画が占めている。その大部分がダイナミック広告で、目的はリターゲティングと幅広いオーディエンスへのリーチだ」と、同氏は話す。
エルスハウト氏によれば、今後、動画の割合は増やしていく予定だという。現在のところ、Facebookとインスタグラムのインフィード広告に均等に予算を配分していると述べている。残された3分の2の予算はダイナミック広告に投じており、たとえば、TUIが提案する休暇を閲覧しながら、予約はしていない人々などをターゲットにしている。エルスハウト氏は有料ソーシャル予算の総額を明かさなかったが、予算の80%はデスクトップではなくモバイルに使っているという。
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Facebook、インスタグラムといったプラットフォームへの投資を強化する広告主が増え、動画広告はここ数年で急成長を遂げている。TUIのような広告主が広告の購入場所を見直している影響で、ソーシャルメディアプラットフォームでより多くの動画広告が購入されるようになり、動画が埋め込まれたディスプレイ広告は減少している。フォレスター(Forrester)によれば、ディスプレイ動画広告は2018年、オンライン動画広告費の82.7%を占めていた。だが、その一方、ソーシャル動画広告も成長ペースが速く、2023年まで20.8%の年間成長率が続く見込みだという。
先導役はやはり動画
有料ソーシャルの先導役はやはり動画だ。デリバルー(Deliveroo)、ラストミニット(Lastminute.com)などの広告主は、ブランドとパフォーマンスの目標達成に関して言えば、動画がもっとも効果的なソーシャル広告フォーマットだと報告している。TUIが動画広告の購入を増やすと決断した背景には、Facebookとインスタグラムの広告が以前に比べ、より低コストでより多くのトラフィックと売り上げをもたらしてくれるようになったという発見がある。
キャンペーン最適化のアプローチを(TUIが)変えたことが、この発見につながった。それまでは小規模なテストキャンペーンを繰り返すというアプローチを採用。すべてのバリエーションに対応するデータが必要なため、しばしばコストが膨れ上がる手法だ。一方、現在はクリック数、特別オファー、ターゲットの拡大など、特定の目標を達成するのに最適な動画広告の組み合わせを自動で見つけ出す方法を考案した。マーケティングテクノロジー企業スマートリー(Smartly.io)の協力を得て、TUIのマーケターがアルゴリズムを駆使し、行動喚起、終了画面など、動画のどの部分が最良の結果をもたらすかを判断している。有料ソーシャルキャンペーン最適化の手法としては、モジュール式のアプローチに近いと、エルスハウト氏は説明する。
エルスハウト氏によれば、2019年に入ってから新しいアプローチのテストを開始し、それ以降、CPA(cost-per-action)が従来の方法に比べて36%下がったキャンペーンもあるという。これまでは期間の短い戦術的なキャンペーンでテストしてきたため、CPAはもっと下がる可能性があると、エルスハウト氏は予想している。キャンペーンが長くなるほど、動画広告の構成要素として、より多くの組み合わせをテストする必要があるためだ。チェックアウト開始コストは72%下がっているという。
「動画広告の制作にモジュール式のアプローチをもっと取り入れ、常時接続ツールのような存在にしたい。テストするにはその方がいい」と、エルスハウト氏は話す。「いろいろな意味で、長く続けていけば、反復作業がどんどん増えていく」。たとえば、2019年夏のキャンペーンは2カ月半だったため、ひとつの動画広告でさまざまな組み合わせを試す期間をそれまでより長く取ることができた。しかも、古いキャンペーンの資産の一部は新しいキャンペーンでも有効だと気付いていたため、その教訓をいくつかの組み合わせに生かすことができた。
フォーマット選びが重要
エルスハウト氏によれば、もっともパフォーマンスの良い広告が、Facebookまたはインスタグラムで配信した広告とは限らないという。ただし、これらのソーシャルネットワークで配信したかどうかより、どのフォーマットを使用したかが重要かもしれないという証拠はいくつかある。価格に関するメッセージを伝える広告は、Facebookとインスタグラムのインフィード広告で最高のパフォーマンスを発揮する傾向にある。一方、インスピレーションを与えることに重きを置いた広告は、ストーリーズの方が効果的だ。実際、ストーリーズ広告はあらゆるFacebookキャンペーンの定番になりつつある。「我々もストーリーズの予算を増やしている」と、エルスハウト氏は語る。「価格に重点を置かない広告の場合、どのフォーマットよりストーリーズが良い結果を残す傾向にある」。
TUIでは、社内チームが購入する広告を決定している。検索の専門家2人、ディスプレイマネージャー、動画の専門家、デジタルマーケティングマネージャー、エルスハウト氏から成るチームだ。2年前からこのメンバー構成で、オランダをはじめとするほかの市場でも、同様のチームが結成されている。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)