米百貨店メイシーズ(Macy’s)は、Amazonのようにサードパーティのブランドが注文を受け付けて直接カスタマーに発送できるシステムを用いている。 メイシーズはこのシステムを「ベンダーダイレクト」と呼んでは […]
米百貨店メイシーズ(Macy’s)は、Amazonのようにサードパーティのブランドが注文を受け付けて直接カスタマーに発送できるシステムを用いている。
メイシーズはこのシステムを「ベンダーダイレクト」と呼んではいるものの、同社が保有するカスタマー情報に基づいて商品の追加と変更もできるようになっている。同社がeコマースのストアにこの機能を導入したのは今年4月だ。それ以来、購入可能な商品数は倍増した。ブランド各社はカスタマーに直接発送できるほかに、発送拠点数の倍となる、メイシーズの650以上の実店舗に送ることもできる。
CEOのジェフ・ゲネット氏は11月15日、投資家向けの業績報告で「当社はデータと分析面を強化し、特定の市場に向けて大きくカスタマイズした品揃えをカスタマーに提供している。これにより実店舗のレベルに至るまで、効率的な品揃えを実現できている」と語った。メイシーズは同一店舗で3.3%の成長率を記録している。これはベンダーダイレクト以外にも店舗ネットワークを活かしたeコマースを可能にする組織内の連携と、モバイルデバイスによるショッピング等が要因となっている。
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実店舗というメリット
同社はオンラインの買物客向けに、実店舗に来訪してもらうためのプログラムを構築。ベンダーダイレクト部門のバイスプレジデントによる最近の求人票によると、ベンダーダイレクトは急速に拡大しており、同社の企業成長戦略における最大優先事項となっているようだ。ウォルマート(Walmart)やアパレルメーカーのJ.クルー(J. Crew)が提供するサードパーティのマーケットプレイスにも類似点が見られるが、メイシーズの場合は商品を同社のエコシステムに包有しておくことで、小売のエキスパートたる同社がカスタマー体験をエンドツーエンドで管理できるようになっている。
オンライン小売業者を対象にした予測分析プラットフォーム、カストラ(Custora)の最高経営責任者(CEO)であるコレー・ピアソン氏は「メイシーズが大量のSKU(商品ラインアップ)を抱えられるようにするメリットは大きい。適切な品揃えを提供でき、倉庫や購入に頭を悩まされずにすみ、すばやく品揃えを変更できる」と語る。
さらに同氏は、メイシーズは購入履歴と位置情報のデータに基づいて品揃えを変更することで、カスタマーとの関係性をより直接的なものにし、ほかのマーケットプレイスにカスタマーが流出するのを防いでいると指摘している。さらに店舗内での商品受け取りを実施することで、実店舗への客入りを増加させている。これはほかのオンライン販売のみの企業にはできないことだ。
カスタマー体験がすべて
またメイシーズのオンラインでの品揃えが強化されたことで、検索を通じてメイシーズ自体のマーケティングにも結びついている。
これについて、eマーケター(eMarketer)でeコマースおよび小売分野のアナリストを務めるアンドリュー・リップスマン氏は「カスタマーを獲得するチャネルとして検索が果たす役割は大きい。検索がメイシーズのデジタル店舗に買物客を集めて」おり、「大規模な品揃えがなければ、AmazonやeBay(イーベイ)に売上を奪われてしまうだろう」と分析している。
ベンダーダイレクトによって柔軟に品揃えを変更できるようになるが、大手小売企業がサードパーティのベンダーが注文を受け付けられるようにする際には慎重さも求められる。ガートナーL2(Gartner L2)のシニアリサーチアソシエイトを務めるグリフィン・カールバーグ氏は、カスタマーとの関係にベンダーが関わるようになるとカスタマーが小売業者ではなく直接ベンダーのところに移るリスクがあると語る。さらにベンダーが発送やサービスの基準を満たせないと、小売企業自体の信用が傷つくおそれがある。
カールバーグ氏は「ベンダーがデジタルで購入を受け付け、直接カスタマーに発送するというのはリスクも内在している。発送商品の品質はベンダーによって決まる」と指摘し、次のように語った。「結局重要になるのは、カスタマー体験の質を確実に保てるように基準や規則を設け、メイシーズがベンダーとの間にそのような関係性を築けるかどうかだ」。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)