BBGベンチャーズ(BBG Ventures)の共同設立者のスーザン・リン氏は、女性起業家のためのベンチャー投資における酸いも甘いも噛み分けてきた。そんなリン氏に、BBGベンチャーズの新しいファンドと投資方針、スターフェイスへの投資の動機、そしてCOVID-19が業界に与えた長期的な影響について話を聞いた。
BBGベンチャーズ(BBG Ventures)のマネージングパートナーで共同設立者のスーザン・リン氏(TOP画像左[※画像右はもうひとりの共同設立者ニーシャ・デュア氏])は、女性起業家のためのベンチャー投資における酸いも甘いも噛み分けてきた。
BBGベンチャーズは2014年9月にAOLの支援を受けた最初のふたつのファンドからスタートした。同社は女性創業者を持つ消費者向けテック・スタートアップに焦点を当てたアーリーステージ・ファンドだ。通常はシードあるいはプレシード投資ラウンドをリードあるいは共同リードし、50万ドルから100万ドル(約5000万円から約1億円)を投資する。BBGベンチャーズは創業以来、8000以上のブランドと話し合いを行い、約70の企業に投資してきた。その70のなかに含まれる有名ビューティーブランドには、メンテッド(Mented)、ウィンキー・ラックス(Winky Lux)、グラムスクワッド(Glamsquad)、ローラ(Lola)があり、直近では同社の3番目のファンドを通しての、Z世代向けスキンケアブランドのスターフェイス(Starface)がある。
COVID-19によって、女性起業家の資金調達が容易になったということはまったくないが、明るい話題もいくつかある。ピッチブック(Pitchbook)のデータによると、女性ファウンダーへの資金調達は2020年には2019年に比べて31%減少したが、男性のみのチームへの資金調達は16%しか減少していない。しかし、資金調達を受けた完全に女性によって設立された企業の割合は、2020年には6.2%から6.5%へとわずかに増加した。黒人、先住民、有色人種の女性への資金調達を追跡しているプロジェクト・ダイアン(Project Diane)によると、黒人とラテン系の女性が率いるスタートアップは、初めて調達資金総額が30億ドル(約3230億円)を超えている。
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米DIGIDAYの姉妹サイトであるグロッシー(Glossy)はリン氏に、BBGベンチャーズの新しいファンドと投資方針、スターフェイスへの投資の動機、そしてCOVID-19が業界に与えた長期的な影響について話を聞いた。
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ーー直近に設立された、3番目のファンドの狙いは?
最初の2つのファンドでは、より消費者一般を対象とするビジネスへのファンドだった。しかし、私たちは今、人々の生き方を本当に変える企業に焦点を当てている。何百万人もの人々が直面する大きな問題に対してスケーラブルなソリューションを構築している創業者を探している。今回のファンドの対象とした4つの重点分野は、健康と福祉、教育と仕事の未来、気候に優しい製品やプラットフォーム、そしてこれまで見過ごされてきた、あるいは新規の消費者分野となっている。
ーー投資先の企業や創業者に何を求めているか?
私たちは3つのことを持っている創業者を探している。ビジョンを持っていて目標を達成することができる会社を想像する能力があり、業務を実行する能力があり、かつ説得力のあるストーリーテラーであること。偉大な創業者は、ほかの人たちを説得して参加させ、チームを編成し、投資家を引きつけ、パートナーシップを築くことができなければならないが、同時に、リーチしようとしている消費者にストーリーを語らなければならない。
私たちは確実に市場全体の規模を考慮する。女性の購買力は6兆5000億ドル(約700兆円)だ。そして、女性は今後10年間で米国の消費者資産の2/3を支配すると予想されている。しかし、そのなかでビジネスが十分に発達していない分野を見ても、巨大な市場となっている。黒人、アジア系アメリカ人、ラテン系アメリカ人の購買力は4兆3000億ドル(約463兆円)だ。あと2年でZ世代はミレニアル世代を抜いて最大の世代になる。
ーー2014年以降、消費者の状況はどのように変化した?
消費者の様相は急速に進化している。彼らはますます横断的になり、自分が購入する製品をより意識するようになっている。さらに多世代を包括している。50歳以上の女性が、以前であればあり得なかったような方法で新しいブランドの受け入れと成長を推進している。しかし、まだ十分なサービスが受けられていないことが非常に多い。
私たちが最初にBBG Venturesを立ち上げたとき、D2C(消費者ダイレクト販売)ブランドがソーシャルプラットフォームを使って素早く牽引力を得てオーガニックな成長を遂げることができた。かつ、市場もそれほど混雑していなかった。その状況は変わった。今では非常に混み合った市場であり、高価な市場となっている。D2C企業は、優れた製品以上のものを持たなければならない。新しい消費者の好みに合った価値を持ち、場合によっては非常に強力なコンテンツマーケティングや流通面での優位性を持たなければならない。
ーースターフェイスに興味を持った理由は何か?
早いスピードで人気となったスターフェイスだが、ほかのブランドにはない方法で、このZ世代の消費者を理解している。彼らは最初、ニキビ製品をもってスキンケア会社を立ち上げたが、それは今でも彼らの中心的な人気製品だ。「にきびができたからといって自分のことを悪く思わないこと。(ニキビに)星のシールをつけて、写真を撮って、自信を持って外出しよう」とポジティブなメッセージを消費者に伝えた初めてのニキビブランドだ。(ニキビに対する)この新しい態度はZ世代の共感を呼び、同社をソーシャルメディアのお気に入りにもした。誰もが黄色い星のシールを顔に貼ってセルフィーを撮るのが好きだからだ。
ーーCOVID-19にはどのような長期的な影響が予想されるか?
新型コロナウイルスのパンデミックは悲惨な現実をもたらしているが、その結果として、いくつかの希望も生まれたと思う。私たちは、消費者が新しい行動に適応する意欲を持っていることを確認できたし、それが長期的な影響を残すことになるだろう。eコマースを利用することを考えず、基本的にeコマースを仕方なく使っていた人々が、今では以前の(店内での)ショッピングには戻らないと言っている。ベンチャーキャピタルにとって素晴らしいポジティブな行動の変化があることは間違いなく、さらに重要なことに、賢い創業者が永続的な価値を持つ企業を作ることができるようになるだろう。
[原文:VC Susan Lyne: DTC companies need ‘something beyond a good product’]
EMMA SANDLER(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)