2017年4月初旬、ユナイテッド航空はオーバーブッキングを理由に69歳の医師を強制的に機内から引きずり下ろすというスキャンダルを起こした。このことが災いし、同社の名が連日ニュースを騒がせる事態となった。そしていま、同社は信頼回復に向けた取り組みを行なっている。
ユナイテッドの謝罪行脚が本格化している。
2017年4月初旬、ユナイテッド航空はオーバーブッキングを理由に69歳の医師を強制的に機内から引きずり下ろすというスキャンダルを起こした。同社は当初、被害に遭った乗客について、「破壊的で敵対的」であったと非難する的外れともいえる声明を出していた。ユナイテッドはこの騒動以前にもレギンスを着用した10代の女性2人の搭乗を拒否している。このことが災いし、同社の名が連日ニュースを騒がせる事態となった。そしていま、同社は信頼回復に向けた取り組みを行なっている。
4月27日、ユナイテッドは責任を認め、オーバーブッキングに関する規則を変更すると多くのメディアに向けて発表し、世の中に理解を求めた。さらに同社は顧客サービスポリシーの変更についても発表。今後、搭乗辞退を受諾した乗客には1000ドル(約11万円)から最大1万ドル(約112万円)の報酬を支払うという。さらに同航空会社はオーバーブッキングの数を減らすと誓った。また、ユナイテッドは飛行機から引きずり降ろされた医師と和解したという。和解金額については明らかにされていない。
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ユナイテッドのPR対応
危機管理会社コムコアコンサルティンググループ(CommCore Consulting Group)のアンディ・ギルマン社長兼CEOは「彼らは確実に未来へ向かって進もうとしている」と語った。 「危機に直面した人は誰でもどん底に落ちたあと、再生の道を進みはじめる」。
ユナイテッドは、全顧客向けにメールを配信し、同社の新たなポリシーについて説明した。オスカー・ムノス(Oscar Munoz )CEOは、テレビ番組の「Today」に出演し、今回の騒動を「社内システム全般の問題」とまとめた。さらに同社はアクシオス(Axios)をはじめとするデジタルメディアにネイティブアド(下記キャプチャーを参照)を掲載し、CEOによるコメントや新ルールを箇条書きにして公開した。複数の大手パブリッシャーも同社の体質転換を記事にして発表した。この件についてユナイテッドは、インタビューに応じてはいない。
ユナイテッド航空の新ポリシーは顧客第一主義
本日、ユナイテッド航空は新たに10項目の顧客重視のポリシーを発表した:
・搭乗便変更の手数料を1万ドルまで引き上げ
・搭乗便変更の受諾者募集をより早期に行う計画
・安全確保以外の目的で乗客に退出を求めたり、一度搭乗した乗客に退席を求めない
詳細についてはhub.united.com参照
PR専門家によると、同社はようやく是正しつつあるという。
「彼らは確かに正しい方向へと進んでいる」と話すのは、PR企業のノースシックスエージェンシー(North 6th Agency)のマット・リッツェッタCEOだ。「10段階評価でいえば(ユナイテッドのPR対応は)数週間前まではマイナスだった。今は4に近いくらいだろう」。
世間の目は厳しくなる
ニューバランス(New Balance)やウーバー(Uber)など、最近炎上した企業はほかにもあるが、これらのブランドはSNSにフタをし、検索広告に費用を投じるというダメージ軽減策をとることで、より好意的なコンテンツがGoogleの検索クエリの上位に表示されるようになった。ユナイテッドのPR運動は、和解報告や新ルールについての説明、そしてネイティブアドがすべて同じ日に公開されたことを踏まえると、よりタイミングに配慮したものと思われる。
危機管理会社のバーンスタインクライシスマネジメント(Bernstein Crisis Management)のプレジデントを務めるジョナサンバーンスタイン氏は、ユナイテッドはポリシーを変更することで、ようやく失敗から学んだのだと述べた。しかし、今後しばらくのあいだ、ユナイテッドは顕微鏡の下に置かれている状態だという。つまり、しばらくは些細なトラブルでも、今回の乗客引きずり下ろし事件に結びつけて報道されてしまうのだ。たとえば、今週はじめ、3フィート(約90センチ)のウサギがユナイテッド航空機内で死亡した際、それを伝える多くの記事がユナイテッドを「乗客引きずり下ろし事件で炎上中」と追記している。
バーンスタイン氏によると、同社に対して世間の監視の目は厳しくなるため、今後乗客に対しぞんざいな扱いをした場合、それまで積み上げてきた信用を覆すことになりかねないという。
「同じことを繰り返さないように、内部では激動が起きている」と彼は語った。
Ross Benes(原文 / 訳:Conyac)
Image: courtesy of Kevin Dooley, via Flickr.