もし「bae(ベィ:「愛おしい人」という意味のネットスラング。ブランドのSNSでも多く利用された)」という言葉から何か学べるとしたら、それは多くのブランドが「一般人と同じような行動をしたい」と考えているということだ。
それが、少々「ズレた」選択であったとしても、彼らの行動を止められやしない。現在において、そうした避けられない誘惑を放っている事象の代表格が、Facebookライブ動画だろう。
もし「bae(ベィ:「愛おしい人」という意味のネットスラング。ブランドのSNSでも多く利用された)」という言葉から何か学べるとしたら、それは多くのブランドが「一般人と同じような行動をしたい」と考えているということだ。
それが、少々「ズレた」選択であったとしても、彼らの行動を止められやしない。現在において、そうした避けられない誘惑を放っている事象の代表格が、Facebookライブ動画だろう。
「この媒体を使えば、我々がブランド側に伝えたことを、そのまま実践できる」と語るのは、デジタルメディアエージェンシーのブレイブバイソン(Brave Bison)でチーフ戦略オフィサーを務めるサイモン・ポント(Simon Pont)氏だ。「ひとり言や割り込みをやめ、その代わりに対話を生み出すことだ」。
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イギリスにおいて、おしゃべり上手になっているブランドを紹介しよう。
フェッション小売「エイソス」
ファッション小売店のエイソス(Asos)は、新たな試みに果敢に挑戦していく。Snapchat(スナップチャット)を導入する以前から、WhatsApp(ワッツアップ)上でチャットボットを利用し、ユーザーに対してスタイルのアドバイスを行ってきた。
自然な流れとして、現在、同ブランドはFacebookライブ動画を実施している。このあいだの配信内容は、エイソスを100枚重ね着するというもので、スタッフ2名が30分かけて、モデルにエイソスのアイテムを100枚重ね着させた。
スタッフはオーディエンスに向けて、どのアイテムから着せれば良いか、アイデアをコメント欄に投稿してくれるよう呼びかける。最終的に同ライブ動画は、6万1600ビューを獲得。これは、デイリーメイル(Daily Mail)のような、Facebookにおける最大手パブリッシャーと並ぶほどの規模だ。
エージェンシーのゼリーフィッシュでソーシャルおよびアウトリーチ部門のエグゼクティブを務めるマイケル・ウィリアムズ氏によると、ライブ動画向けのイベントを作るのは効果的だという。彼は、最新の配信サービスで、これを効果的に行っているブランドのひとつがエイソスだと話す。
「彼らはいま、一番熱いソーシャルメディアのトレンドを活用するだけではなく、大量の自社商品をライブ動画で紹介している。天才的だ!」。
また、エイソスは視聴者のアクションを喚起する試みも行った。6万3543ビューを獲得した、同社の「袋のなかには何がある?」という競技イベントは、画面に映った袋のなかに隠されたエイソスのアイテムをユーザーがコメント欄で当てていくというものだ。動画内にはヒントも登場する(例えば、「AN ELKを並び替えると、靴のスタイルを示す言葉になる」というもの)。時間内に正解を出した人のなかから抽選で5名に、1000ポンド(約14万円)相当の買物券が贈られる。
「リアルタイムのエンゲージメントはライブストリーミングの大きな魅力で、正しく利用すればブランドへの愛着心を生むことができる」と、ウィルアムズ氏は加えた。
コスメブランド「イラマスカ」
イギリスのコスメブランド、イラマスカ(Illamasqua)は社内アーティストのトニー・ロベリオ(Tonee Roberio)氏に依頼し、新商品を使ったメイクアップ講座を制作している。ロベリオ氏はアイライナー「インスタアイ(Insta Eye)」のライブデモンストレーションを行い、ビュー数は5875に上った。動画内で彼は7月にローンチした、同ブランドの新しいインストアチュートリアルサービスについても告知している。
「ライブ動画はリアルタイムで、オーディエンスにブランドの専門知識を披露するものだ」と話したのは、デジタルマーケティングエージェンシー360iのコミュニティマネジャーを務めるマット・リンステッド(Matt Linstead)氏だ。彼によると、オーディエンスがライブ動画を視聴する時間は3倍に、またコメント投稿も10倍になっている。
イラマスカの創業者、ジュリアン・キナストン(Julian Kynaston)氏もインタビュー動画に出演し、製品の動物実験を行わないというブランドのポリシーについて語っている。その際は7557ビューを集めた。
サッカークラブ「アーセナル」
マンチェスターシティ(Manchester City)やバルセロナFC(Barcelona FC)といったサッカークラブは、ソーシャルメディアコンテンツ作成にもっとも精通したブランドの一角を担っている。
アーセナル(Arsenal)は、4月、Facebookでのストリーミングを開始。ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、Facebookのサービスを利用するのにかかった費用は34万9000米ドル(約3500万円)。同クラブはフォーマットを利用して、ロブ・ホルティング氏のような新規加入選手へのQ&Aセッションを設けている。さらに、世界中のファンがウズウズするような、試合関連のコンテンツも配信している。
この夏、チームがリバプール戦を前にウォーミングアップする姿を映した動画のビュー数は、67万7000を超えた。
いまのところ最高記録は、ジェイミー・フォックスがDJセットに登場し、アーセナルのシャツを着て踊りまわる動画で、配信以降130万ビューを獲得している
SUVブランド「ランドローバー」
「ランドローバー(Land Rover)には、すでにFacebook上で動画に飢えた常連のオーディエンスがいる」と説明するのは、ソーシャルメディアエージェンシーのスパーク44(Spark44)でランドローバーのビジネスディレクターを務めるセビル・クレスポ(Sevil Crespo)氏。
しかし、4月、同ブランドは、4つの車種における、テストドライブのライブ動画をFacebookで配信した。この放送は成功し、1週間で7%のオーガニックリーチ数を得た。
車内から撮影を行ったコミュニティマネジャーは、殺到するコメントへの対応も行う。多くはクオリティに対する批判だ。「アップヒルを携帯カメラで撮影するのはなかなか難しい。ランドローバーはプレミアムなSUVブランドで、人々はそれがライブ動画だと知っていても、クオリティの高い映像を期待するのだ」と、クレスポ氏は話した。
こうした理由から、同ブランドによる新モデルのテストドライブはさらにハイテクになる。FacebookライブのAPI性能が向上したことにより、高性能のカメラとグラフィックスを使ったライブ放送ができるようになったのだ。
ソーシャルメディアエージェンシーのソーシャルチェーン(Social Chain)でマーケティングディレクターを務めるルーシー・クラーク氏曰く、「ライブフィードでもっとも口コミ人気の高いコンテンツは、期待感を与えてくれるもの。何かが起こる、何か失敗が起こるかもしれない、と分かっているから人は夢中になる!」。