Facebook の政治広告ポリシー、煽りを食うブランド各社:「試行錯誤は適切ではない」

Facebookの新しい政治広告ポリシーがパブリッシャーから冷笑を買うようになって久しい。そしていま、Facebookにより近く、より大切な支持基盤をも困惑させている。広告バイヤーたちのことだ。

ロシアによる2016年米大統領選挙への干渉をきっかけとして、Facebookは政治的広告に対して特別に慎重なアプローチをとるようになった。これにより、Facebookで金をかけて政治的なトピックのプロモーションを行いたければ、政府が発行する公式のIDで登録を行い、承認されたら、すべての政治的広告をポリティカル(政治的)と表示しなければならなくなった。

広告バイヤーのフラストレーションは高まる一方だ。大手メディアバイイングエージェンシーの幹部でさえ、どのような広告ならポリティカルの表示が必要なのかをきちんと把握できない状態が続いているからだ。LGBTプライド月間の広告など、ブランドによるCSR(企業の社会的責任)の取り組みはこの狂乱のなかに飲み込まれ、それがキャンペーンに遅れを生じさせてきた。Facebookの自動化システムもエラーを連発してきた。こうしたさまざまな事情から、バイヤーたちは、Facebookは当てずっぽうで動いているだけで、透明性の実現に向けて十分なことをしていないという印象を抱くようになっている。

「私はFacebookの担当者に、試行錯誤は我々の市場開拓に適した手段ではないと明言してきた。この局面を切り抜けられる広告主もいれば、切り抜けられない広告主もいるからだ」と、世界クラスのトップメディアエージェンシーで幹部を務めるA氏は語る。「そのせいで余分な作業が発生しつつある。私もまだ、十分な指導を行えるほどの明確な定義づけができているわけではない」。

ラベルをめぐる混乱状態

Facebookは5月、政治的なトピックを扱う広告主に登録と適切なラベル表示を義務づける、この新たな利用規約の対象となる20項目のリストを発表した。メディアバイヤーは当時、信頼回復に向けたFacebookの取り組みは評価するが、このポリシーが招くであろう障害が気がかりだと述べていた。現在、各社はこれらハードルへの対応に追われており、これら20項目のなかに具体的には何が含まれるのかをめぐって混乱する状態が依然として続いている。

コワーキング大手のWeWork(ウィーワーク)は6月20日、同社による#プライドの支援をPRするFacebook広告を流した。また5月21日には、シカゴにある同社のコワーキングオフィスの広告も流した。どちらの広告も政治的内容を含む広告としてアーカイブに保管され、「『Paid for by(広告主)』のラベルなしで出稿」の表示がつけられた。退役軍人の仕事での成功をサポートする方法についてのヒントを宣伝する食品大手ネスレ(Nestlé)のFacebook広告も同じような扱いを受けた。「ラテ1杯分の値段の」レンターズ保険を宣伝する保険会社レモネード(Lemonade)のFacebook広告もそうだった。

WeWorkにこの件について問い合わせたが、ノーコメントだった。レモネードからも回答はなかった。ネスレでコーポレートコミュニケーションを担当するケイト・ショウ氏は、このプロセスの開始以来、同社はFacebookと緊密な連携をとっていると話す。

「主要パートナーとして我々は、ユーザーに対する透明性を高めるためのFacebookの措置について、同社と建設的な対話を行ってきた」と、ショウ氏は語る。「我が社はこれまでに発表・実施されているさまざまな変更に行動を促され、おおむねそれらを歓迎もしている。しかし今後、この動きが予期せぬ結果――コンテンツを『ポリティカル』と不適切にタグづけするなど――をもたらしているかどうかを調査し、気がかりな点があれば、それをFacebookに伝えるつもりだ」。

Facebookの真摯な姿勢

Facebookのスポークスパーソンによれば、同社はまだポリシーの作成に取り組んでいる途中であり、それが完璧になるには時間がかかることをはっきりと認識しているという。

また別のスポークスパーソンは「これは第一歩だ。我々も、企業にとって不必要な障害を生み出したくはない。また我々は、Facebookのミスを指摘してくれる人々に感謝している。だからこそFacebookは、プロセスを整え、たとえば特定の広告に対して異議申し立てを行えるようにしている。同時に、こうしたツールはFacebookが選挙干渉を未然に防ぐうえで非常に重要でもある」と話す。

この異議申し立てのプロセスは、Facebookがいま取り組んでいる、システムエラーを改善・解決するための方法のひとつだと同スポークスパーソンは述べる。小売大手のウォルマート(Walmart)がアメリカに雇用を取り戻していることをPRする同社のFacebook広告が出稿停止に処された件を「Ad Age」が報じると、Facebookはこの広告が誤ってポリティカルとみなされてしまったことを認め、決定を覆した。

Facebookのスポークスパーソンは「このポリシーと承認プロセスの目的は、Facebookに出稿される政治的広告の信憑性を高めることだ」と「Ad Age」にメールで伝えた。「最初は完璧ではないかもしれないが、時間とともにさまざまなことを学び、進化していけると我々は確信している。必ずや善は悪に勝るはずだ」。

パブリッシャーとブランド

パブリッシャーはこの新しいポリシーに批判的な見解を示してきた。有料メディアがついている場合、政治的内容の記事も政治的広告としてラベル表示することが義務づけられたからだ。パブリッシャーにとってこの動きは、独立したジャーナリズムと広告をひとまとめにしてしまうものだった。抗議を受けたFacebookは、ポリシーに若干の修正を加え、これらの記事は別のアーカイブに保管されることになったが、この手順を取り除きはしなかった。

一方、ブランドのメディアバイヤーは最初の登録プロセスの調整に追われている。登録の完了には数週間を要することもある。また、アカウントの代表者は政府が発行した自身のIDを送る必要もある。ブランド内にはこれを嫌がる人もいるため、そのような場合はエージェンシーの幹部が代理でこの手続きを行っている。

Facebookによれば、バイヤーは政治的な広告を適切に表示しなければならないという。もし誤って政治的と表示されていたり、政治的であるにもかかわらず、その旨が表示されていない場合、その広告は削除されるという。「Bloomberg」によれば、「ブッシュ」や「クリントン」のような言葉を含んだ広告は、たとえそれが前大統領の2人と無関係でも、削除されているという。

Facebookが誤って広告を削除したと思われる場合、バイヤーは異議を申し立てられる。B2Bクライアント向けサービスを提供するデジタルマーケターのベッツィ・ヒンドマン氏によれば、同氏が手がけた「ハブ空港を持たない都市は、どうすれば遠方から観光客を呼び込めるか」についてのエディトリアルをPRするFacebook広告のひとつが、Facebookのシステムによる承認を受けられなかった。が、のちに人間による見直しが行われた結果、その広告は承認されたという。この異議申し立ての処理には丸1日かかった。

「失敗でも構わない」

広告バイヤーが頭を悩ませているのは、Facebookにとっては何が政治的で、何がそうでないのかという点だ。たとえば、Facebookが掲げる20の最重要項目のひとつは「価値観」だ。「環境」もそのなかのひとつだ。

「プライドのような、予期せぬCSRキャンペーンは数多くある」と、A氏は語る。「Facebookは広範囲をカバーしているが、プライドを支援しつつ、シューズのBOGO(1足買えば、もう1足はタダ)キャンペーンを行う大手小売企業のような広告主に対して我々は、政治的と表示すべき時と場合に関する新たなプロセスを踏まなければならなくなっている」。

6月下旬、広告の透明性を高めるためのこのツールのローンチに関するプレスイベントが行われた。同イベントで、Facebookの最高執行責任者であるシェリル・サンドバーグ氏は、同社は透明性の向上という道を選びつつあると述べた

このポリシーに対するパブリッシャーのフラストレーションについての質問に、サンドバーグ氏は「我々には選択の余地があった。そして、Facebookの目標は透明性だという結論に達した。いまの我々は、透明性を高めて失敗するのであれば、それならそれでかまわないぐらいの気持ちで取り組んでいる」と答えた。

グローバル展開への懸念

トップエージェンシーのバイヤーなら、Facebookの担当者と接触して不満をぶちまけ、個々の広告について根掘り葉掘り聞くこともできるが、小規模の広告主には難しい。最初は承認され、何時間か出稿されても、その後、非アクティブとみなされる広告もある。

こうしたちょっとした障害はほんの序の口だ。いまのところ、Facebookのこのシステムはアメリカ国内でのみ運用されているが、10月にブラジルで行われる総選挙に先駆けて、同国でも展開されることになっている。母国語である英語の広告を正しく識別することに四苦八苦しているようでは、Facebookのシステムが他国で機能するかどうかは、はなはだ疑問だ。それに、どのようにして他国で政治的広告をローカライズし、そのうえで解釈するのかも現時点では不明だ。

「英語と大きく異なるポルトガル語が母国語の国なら、さらに多くの誤判定が発生するだろう」と、A氏は語った。

Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)