日本企業の「中国進出」支援、The Trade Desk の本気度:「より透明かつ中立な立場で」

日本のグローバルマーケターにとって、相当なインパクトがありそうだ。

デマンドサイドに特化したDSP企業ザ・トレード・デスク(The Trade Desk:以下、TTD)は2018年11月15日、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセントの略)が保有する中国のプレミアムメディア、及びアドエクスチェンジとパートナーシップを締結したと発表した。提携したのは、バイドゥ(百度)のアドエクスチェンジ「Baidu Exchange Services」と、同社傘下の動画ストリーミングサービス「アイチーイー(愛奇芸:iQiYi)」、テンセント(腾讯)のソーシャル広告サービス「Tencent Social Ads」、そしてアリババ(阿里巴巴集団)傘下の動画ストリーミングサービス「ヨウク(优酷)」の4つだ。

7億5300万人のモバイルネットユーザーを抱える中国は、グローバルマーケターにとって重要な市場といえる。特にネット動画の視聴ユーザー規模は非常に大きい。JETRO(日本貿易振興機構)の調査によると、2017年時点におけるその数は約5.79億人に上り、中国のネットユーザー全体の75%にも及ぶという。また、今回パートナーシップを結ぶアイチーイーとヨウクは、「中国のNetflix」「中国のYouTube」といわれており、同調査の中国における動画配信サイトランキングでは、アイチーイーが1位に、ヨウクが3位にランクインしている。

「日本でいうところのLINEとYahoo!、そしてYouTubeの在庫が全部買えるようになったようなもの」。今回の提携のインパクトについて、TTDの日本カントリーマネージャーを務める新谷哲也氏は、このように語る。

3年間に及ぶ、投資活動の結実

現在、日本国内で利用可能なのはベータ版。TTDのテクノロジープラットフォームを通じて、中国におけるディスプレイ、モバイル、動画およびネイティブ広告といった、さまざまな広告フォーマットを活用した広告キャンペーンが実施可能だ。国内の広告主からも、すでに力強い引き合いがきている新谷氏は語る。だが、ここまでの道のりは平坦なものではなかった。

「中国は非常にユニークなチャネルだ。そのため今回のパートナーシップ締結に至るまで多くの投資が必要だった」と、今回のパートナーシップ締結を主導した、TTDのインベントリーパートナーシップ担当シニアディレクターを務めるダグ・チョイ氏は語る。「約3年も前からパートナーと協業するため、現地中国でエンジニアリングチームの体制構築や、データセンターといったインフラ投資に資金と時間を費やしてきた」。

中国でビジネスを展開するためには、中国独自のビジネス慣習や文化を理解する必要がある。そのためには「現地への投資が非常に重要になる」とチョイ氏は説明する。「今回のBATとのパートナーシップ締結は、こうした長きに渡る投資活動の結実だといえる」。

透明かつ中立的な立場で

また、米DIGIDAYが報じているように、中国のアドテク市場のユニークな点として、BATをはじめとしたメディア企業が、DSPとSSPの両方を独自で構築しているケースが多いことが挙げられる。

広告在庫の所有者と、DSP、SSPの所有者が独自に紐づいている状況下では、アクセスできる在庫に限りがあるだけでなく、広告の透明性を担保することも難しい。事実一部のメディア企業のなかには、余った広告在庫を高値で広告主に売りつけるといった企業も存在するという。

こうした状況に関してチョイ氏は「だからこそ、我々の戦略が生きてくる」と意気込みを見せる。TTDはデマンドサイドに特化した独立系のDSP企業で、データ測定やブランドセーフティのソリューションも提供。「我々は、グローバルマーケターに対し、より透明かつ中立な立場で、BATそれぞれが持つ広告在庫の活用をサポートすることができる」。

“Focused on Asia”

昨年の6月に、同社CEOのジェフ・グリーンがブルームバーグ(BLOOMBERG)のインタビューで明かした通り、同社は中国だけでなく、アジア全体を注力市場として見ている。現に同社は中国に注力するだけでなく、昨年にはシドニーと香港、そして日本と、アジアの拠点を自社オフィスに変更している。日本オフィスに関しては、GINZA SIXに移転。TTDの本社がある、米国カリフォルニア州のビーチタウン、ベンチュラをイメージしたリラックスした雰囲気が印象的だ。

新しい日本オフィスの様子

新しい日本オフィスの様子

   

「これだけ広い場所にオフィス移転を決めたのは、アジアが我々にとって非常に重要な市場だからだ。優秀な人材を集めるためには、オフィス投資も重要だと考えている」と新谷氏は語る。現在、日本オフィスのスタッフは18名。2019年は採用を強化していくという。

「2018年6月に、デジタル広告プラットフォーム『NEXT WAVE(ネクストウェーブ)」』をローンチしてから、国内のブランド企業からの問い合わせがより多くなり、手応えを感じることができた」と、新谷氏。「2019年は、データ活用やブランドセーフティ、アドフラウド対策など、国内マーケターへのサポートを一層さらに強化していきたい」。

Written by Kan Murakami
Photo by courtesy of The Trade Desk