トヨタは、プログラマティック購入の関係企業に対し、同社のブロックチェーンを採用するよう強く求めていく。広告主であるトヨタのブロックチェーンにデータを共有するアドテクベンダー、パブリッシャー、アプリのオーナー、エージェンシーが増えると、各社のデータがほかと矛盾していないかを確かめるのは容易になる。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
トヨタは、プログラマティック購入の関係企業に対し、各社が広告入札を扱うなかで不整合が生じていないかを突き止めるため、同社のブロックチェーンを採用するよう強く求めていく。
広告主であるトヨタのブロックチェーンにデータを共有するアドテクベンダー、パブリッシャー、アプリのオーナー、エージェンシーが増えると、各社のデータがほかと矛盾していないかを確かめるのは容易になる。サプライチェーンのすべてのパートナーによって裏付けがされないデータがあれば、オークションのその時点で何らかの操作がされたということなのかもしれず、ドメインのスプーフィングやボットトラフィックと行った不正行為が行われたかもしれないということになる。
トヨタが用いるブロックチェーンのデータベース、つまり台帳は、トランザクションやビューアビリティ(可視性)などのデータを時系列で記録し、その情報をオークションの参加者全員に公開する。たとえばインベントリー(在庫)を売るパブリッシャーや、それを購入するアドテク企業のアップネクサス(AppNexus)。このプロジェクトを舵取りするサーチ&サーチ(Saatchi & Saatchi)のようなトヨタのエージェンシーや、トヨタが広告を出している最大手パブリッシャーも、一部がこのブロックチェーンに参加している。
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サイト訪問が21%増加
トヨタの北米メディアディレクターのナンシー・イノウエ氏は、「ブロックチェーンによって、検証された統一的なデータが見えるようになり、サプライチェーンで不正や破損があった可能性のあるインプレッションやクリックについて理解を深められる」と語る。
しかし、参加者全員が同じデータベースにアクセスできるようにしても、同じ方法で情報を測定するモチベーションが参加者になければ意味がない。イノウエ氏によると、トヨタが採用するテクノロジーには強制的な規格があり、サプライチェーンの各パートナーは同じ方法でキャンペーンを測定している。「サプライチェーン全体の統一規格によって、ビッドキャッシングのようなオークションにおける企みやボットトラフィックといった不正が明るみに出る」と、同氏は語った。
最近、このアプローチをキャンペーンでテストしたところ、不正の減少につながった。インプレッション1000万件のキャンペーンにブロックチェーンを使ったところ、使わなかった同様のキャンペーンと比べて、トヨタのサイトへの訪問が21%増加したのだ。今回のテスト期間は3週間だったが、トヨタはテストキャンペーンの数と期間の拡大を計画している。
不正は恒常的な問題に
参加者については、まず1回目と同様のパートナーでテストを重ね、それから数を増やす可能性が高い。今回のテストキャンペーンのインプレッションは、デマンドサイドプラットフォームのアップネクサス(AppNexus)を通じてサーチ&サーチが購入した。その後、ブロックチェーン企業のルシディティー(Lucidity)がこのオークションに関わったすべてのパートナーからログレベルのデータを集め、不正の尺度となる矛盾を確認できるようにした。
不正は広告主にとって恒常的な問題になっており、特に、プログラマティック広告のお金をどこに使うべきかという問題に取り組んでいるトヨタのような広告主には大きな問題だ。調査会社のジュニパー・リサーチ(Juniper Research)によると、アドフラウドによる広告主のコストは2018年、190億ドル(約2.1兆円)になると予測されている。
トヨタは、これまでデジタルマーケティング戦略に成功してきたが、無駄があることも認識している。「ブロックチェーン技術は、こうした無駄を持続的に削減し、透明性を高め、広告主、パブリッシャー、そしてそのあいだのすべてといったサプライチェーン全体に恩恵があるインセンティブを生み出す機会をもたらすと、我々は確信している」と、イノウエ氏は語る。
冷めた見方をするところも
とはいえ、ブロックチェーンの可能性を確信している広告主ばかりではない。パブリッシャーに至るまでに入札に起きていることについて意味のある知見を得るのに苦戦した結果、ブロックチェーンに冷めた見方をしているところもある。しかし、エージェンシー側は、ブロックチェーンのことを、パブリッシャーとのあいだに入るアドテク企業の数を減らせというクライアントからの高まるプレッシャーを緩和する方法になると見ている。エージェンシーのマインドシェア(Mindshare)が追随してブロックチェーンのアライアンスを作っており、すでにアドテク企業のメディアマス(MediaMath)、ルビコン・プロジェクト(The Rubicon Project)、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)などが加わっている。
Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)