コロナ禍以降、商品パッケージや店舗、屋外広告などでQRコードを見かける機会が増えた。 2010年代前半、米国でも多くの企業がQRコードを採用していた。だが消費者側の受け入れが遅々として進まず、徐々にその姿を消していく形に […]
コロナ禍以降、商品パッケージや店舗、屋外広告などでQRコードを見かける機会が増えた。
2010年代前半、米国でも多くの企業がQRコードを採用していた。だが消費者側の受け入れが遅々として進まず、徐々にその姿を消していく形に追い込まれた。そんなQRコードが、2020年以来復活の兆しを見せている。広告主やエージェンシーは「コロナ禍で採用が進んだ」と口をそろえる。たとえば多くのレストランやバーなどが、2020年の早い段階でQRコードを導入した。タッチレス化が求められるなか、QRコードを使った注文方法はうってつけだった。
さらに消費者側の抵抗感がなくなったことで、商品パッケージや売り場、広告などでQRコードが使われるケースが増えている。アメリカの朝のニュース番組「トゥデイ(Today)」では、2月下旬にQRコードが取り上げられ、スキンケアブランドのヒーローコスメティックス(Hero Cosmetics) が紹介された。CEO兼共同創業者のジュー・リュー氏は、(具体的な売上は明かせないものの)放送後に売上が7割増加したと語る。
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「トゥデイで当社が紹介されたのは初めてではないが、これほど売上が伸びたのは初めてだ。現在、QRコードのさらなる活用方法を検討している」とリュー氏は期待をこめる。「商品パッケージや売り場の展示に使うかもしれない。また屋外広告にQRコードを載せておくことで、消費者はその場で購入できるようになる。販売面でこれほどの効果があるのが分かった以上、活用しないのはもったいない」。
D2Cにとって夢のようなツール
実際、たとえばD2Cの家具ブランドのコアラ(Koala)や、カンナビジオールを使ったペット向け商品を販売しているゼンパプ(ZenPup)は、商品パッケージにQRコードを載せたことで売上が伸びている。とりわけD2Cブランドの場合、QRコードの「付加価値」は見逃せない。「オンライン以外で消費者とブランドがどのようにコンタクトしたかがつかめる。これはD2Cにとっては魅力的なはずだ」と語るのが、QRコード技術企業のフローコード(Flowcode)のCRO(最高収益責任者)、ジム・ノートン氏だ。フローコードは、最近JLOビューティ(JLo Beauty)とコラボしてニューヨークでQRコードを使った屋外キャンペーンを実施している。
コアラのCMO(最高マーケティング責任者)のピーター・スロッターダイク氏は、「QRコードであれば情報やサービス、デジタル体験を消費者に手軽に届けられるし、新型コロナウイルスの感染防止にもつながる」と語る。コアラはQRコードで製品の保管方法や使い方、カスタマーサービスなどを提供しているほか、キャンペーンのエンゲージメント追跡も行っているという。
「商品カタログにも使えるし、マニュアル、パーソナライズしたオンラインサービスなども考えられる。マーケターにとっては夢のようなツールだ。普及が進んでいる今、参入のハードルもかつてないほど低い」。
ほかにも、QRコードで消費者にさまざまなコンテンツを提供し、その反応を試している企業もある。「普及に伴い、斬新なアイデアでQRコードを採用する企業も出てきた」と語るのがゼンパプのCEO兼共同創業者のジェン・ウェザーヘッド氏だ。ゼンパプも、カンナビジオールの取り扱いに関する認証書をQRコードで提供している。
ほかにも、QRコードを使ったアトリビューション追跡を検討している企業は多数ある。インフルエンサーマーケティングエージェンシーのソーシャルスタディーズ(Social Studies)のCEO兼創業者のブランドン・パールマン氏は、「消費者がコンタクトした場所や時間といった情報が得られる」と語る。「たとえばインフルエンサーがレストランやホテルを紹介したとする。QRコードを施設内に配置すればユニークなサービスも提供できるし、施設側の想定通りに来館者が行動したのか否か追跡できる」。
「QRは時代を先取りし過ぎていた」
小売におけるタッチレス需要が続くなか、少なくとも2021年内はQRコードブームが続くと予測するエージェンシーは多い。たしかにワクチンの接種が進み、コロナ禍は終息へと向かうかもしれない。だがスマホのカメラでQRコードを読み取ることはもはや習慣として根付きつつあり、その「簡単さ」は消費者に周知されつつある。
ウェーブメーカー(Wavemaker)のイノベーション&コンシューマーテクノロジー担当マネージングパートナーのホイットニー・フィッシュマン氏は、「かつてのQRコードは時代を先取りし過ぎていた」と指摘する。「2021年になってようやく、非接触でシームレスなこのツールの良さが認識されるようになった。今や商品パッケージだけでなくメニューや壁に貼られた広告などにもQRコードを見かけるようになった。スマホで簡単に読み取り、アクセスできるのは強みだ。ストーリーテリングのツールとして、QRコードは独特な魅力を放っている」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU