デュオポリーの支配と、それに対するマーケターの過度な依存は長年の課題だった。実際、パンデミックとそれによる不況の前から、この問題があったことを思い出すのも昨今では難しい。しかしいま、米国でTikTok(ティックトック)の利用が禁止される可能性が出てきたことで、再びこの問題が顕在化してきている。
マーケターはまたしても、FacebookとGoogleへの依存に不平不満を漏らしている。
デュオポリーの支配と、それに対するマーケターの過度な依存は長年の課題だった。実際、パンデミックとそれによる不況の前から、この問題があったことを思い出すのも昨今では難しい。しかしいま、米国でTikTokの利用が禁止される可能性が出てきたことで、再びこの問題が顕在化してきている。
では、なぜ以前からの不満が再燃したのか。それは、これまでマーケターたちが取り組んできた、FacebookとGoogle以外のメディアチャネルの開拓作業が水の泡になってしまう可能性があるからだ。実際、最近では多くのマーケターがTikTokを有効な選択肢であると考えおり、7月のFacebook広告のボイコット期間には、多数のマーケターがTikTok広告に進出していた。ただし、現時点でどの程度の広告費がTikTokに振り分けられたのかについて、現段階で確かなことはいえない。というのもTikTokは、この7月に全世界のマーケターが利用可能な、セルフサービス広告プラットフォームをオープンしたばかりだからだ。
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TikTokで成果が出ていた最中…
ヒーローコスメティックス(Hero Cosmetics)は、チャネルの多様化を推進してきたマーケターの典型例だ。「我々はいまもなお、事業の成長をGoogleとFacebookに大きく依存している」と、同社の共同創業者でありCEOを務めるジュ・リュー氏はいう。「最近、TikTokをメディアとして利用しはじめたのだが、ROAS(広告費用回収率)も良好だった。我々はTikTokは第3のプラットフォームになると考えており、GoogleとFacebookだけに頼らないための、メディアの多様化に貢献してくれると期待していたのだ。ところが、いまや禁止の可能性が出てきている」。
もちろん、TikTokはマーケターにとって唯一の選択肢ではない。しかし、安価なCPMと多くのブランドが望むオーディエンスという強みを兼ね備えており、とくにeコマースブランドにとって魅力的だ。さらに最近では、Facebook広告のボイコットが広まるなか、多くのマーケターが本格的にTikTokの可能性を試しはじめ、良い成果も見られていたという。しかしいま、彼らはまたしてもデュオポリー依存を強いられる可能性に直面しており、業界全体からため息が漏れ聞こえている。
「TikTokは素晴らしい盛り上がりを見せていたのに、それが完全に消し去られてしまうかもしれない」と、フリーランスのメディアバイヤーで、ソーシャルサバンナ(The Social Savannah)の創業者、サバンナ・サンチェス氏はいう。同氏によれば、Facebookへの依存度が高い小規模ブランドは、とりわけ第4四半期に問題を抱えがちで、これはブラックフライデーなどのホリデーセールの時期に、CPMが高騰するためだという。
これ以上依存したくない
ブランドがプラットフォームの多様化を目指す理由は、CPMだけではない。あるメディアバイヤー数名によれば、若いオーディエンス、とくにZ世代はFacebookの利用率が低く、TikTokはこうした消費者にリーチする手段としても優れていたという。また、もしTikTokが米国で禁止されれば、投入されていた広告費はFacebookとGoogleに戻る可能性が高いと、このバイヤーたちは語る。その理由は、両者とも効果が実証されたチャネルだからだ。しかし同時に、Z世代のオーディエンスを失うことも懸念される。また、TikTokは世界に8億人のアクティブユーザーを抱えており、失われるオーディエンスの規模も懸念材料のひとつだ。
Z世代の関心を惹きたいブランドの成長には、TikTokのインフルエンサーがひと役買ったが、彼らの多くはトリラー(Triller)やインスタグラムなどの競合にアカウントを持っていない。マーケターたちからは、TikTokでは概して、クリエイターツールを使ってインフルエンサーが制作したコンテンツの方が、プロが作った広告よりも成功しているという声が聞かれている。
TikTokに何が起こるかはさておき、マーケターはこれ以上デュオポリーに依存したくないと考えているのだ。
「広告業界に新しい勢力が進出するほど、広告主がGoogleやFacebookに対抗する力は増す」と、前出のヒーローコスメティックスのCEO、リュー氏はいう。「GoogleやFacebookに借りを作って、これ以上依存しすぎるのは避けたい」と、同氏は述べた。
[原文:‘Too beholden’: Why the TikTok ban has marketers griping about their reliance on Facebook and Google]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:村上莞)