ブロックチェーン は、いかに世界をリプレイスするのか?:「社会は分散化されるべき」

ブロックチェーンの力によって、ダイバーシティは実現できるのかもしれない。

ベルリン発のテックカンファレンス「TOA(Tech Open Air)」のスピンオフイベント、「ワールドツアー東京(WTT)」が4月25日、amana海外スタジオで開催された。東京での開催は、今回で2度目となる。このTOA WTTの目玉セッションのひとつが、「Blockchain×LIFE:ブロックチェーンが変えるビジネスと社会」だ。

このセッションには、グラネコの藤本真衣氏がモデレーターとして、ホタルの篠原ヒロ氏、クーガーの石井敦氏、ガバメント・ブロックチェーン・アソシエーション東京チャプターの栗原宏平氏がパネラーとして登壇。金融業界に偏らない、初の業界横断型ブロックチェーン公開セッションとなった。

「ブロックチェーンで世界が変わるなんて思ってない。それ以上に、世界がリプレイスされる。すべてがゼロからリセットされて、新しい世界が創造されると思っている」と、ホタルの篠原氏は口火を切る。「ブロックチェーンを社会実装するなんて、生ぬるい。いまの社会は間違っていて、破壊されるべき。金融システムから会社の仕組みまで、いまの社会は置き換えられるべきだ」。

篠原氏は、ブロックチェーンを活用して、3年以内に社会破壊を本気で実現しようとしている。金融庁や企業との取り組みも進め、内部から社会をディスラプトし、新たな価値観に置き換えたいという。「エボリューションではなく、レボリューション。絶滅からの再生を目指す」。

左から、栗原宏平氏、石井敦氏、篠原ヒロ氏、藤本真衣氏

左から、栗原宏平氏、石井敦氏、篠原ヒロ氏、藤本真衣氏

価値共存による、フラットな世界

クーガーの石井氏も、「これまでは、勝者がすべてを勝ち取るという仕組みしかなかった。分散型システムにより、ゼロサムゲームではなくなり、さまざまな価値観が共存し、バランスが保たれる世界になる」と追随。その発言を受け、篠原氏も「分散化社会とは、何が正しいのかが定義されているのではなく、無数の価値観が許されることで、均衡し、価値の共感が行われる社会だ」と、同調した。

そこで、ビットコインのように分裂・分散化した価値観に基づいてコミュニティが形成され、コミュニティ同士がブロックチェーンにより繋がる。さらに、その価値の交換がスマートコンタクトにより行われれば、そこに詐欺を行う余地はなくなるというわけだ。

「だからこそ、社会は分散化されるべき」と、篠原氏は畳み掛ける。「これまでの中央集権の社会を破壊して、ブロックチェーンの技術で当たり前に、人々が享受するべき価値が直接届けられる、P2P(Peer to Peer:個人間)のマーケットを実現したい。これこそ、本当にフラットな世界だ」。

フラットな世界とはいえ、まったく不平等が存在しないわけではない。ただ、これまでの人が管理する世界ではなく、人類よりはるかに数の多いデバイスが管理し、そのうえでAIがデータをコントロールするような世界になるという。

会場は常に満席の状態で、活気に溢れていた

会場は常に満席の状態で、熱気に溢れた

重要さ増す、データの価値

さらに、AIやIoTを専門とする石井氏は、「モノとモノが直接繋がるM2M(Machine to Machine:機械間)の世界は、確実にくる。そこでやり取りされるデータやAIの信頼性を確保するために、ブロックチェーンは活用できる」と、その可能性を指摘した。

M2MやP2Pの世界になれば、これまでGoogleやFacebookなど、大手プラットフォームや事業者が占有していた個人のデータを取り戻せる。個人が保有し、個人の判断で、データを共有したり売買できるようになるのだ。

「これまで国が管理していたデータを個人が管理できるようになることで、持つ者持たざる者のあいだに生じる社会的な不平等も解消できるのではないか」と、ガバメント・ブロックチェーン・アソシエーションの栗原氏も語る。当然、このような世界では、データの価値がますます重要になってくるはずだ。

データという観点から、「企業はブロックチェーンを活用したいというが、その資産となるデータをきちんと管理することをまずは考えるべきじゃないか」と、篠原氏は強調する。データの流出や改ざん問題で、企業が地位と信用を失う例は後をたたない。データを安全に管理するために、まずそこでブロックチェーンを活用すべきというわけだ。

また、石井氏は、エストニアやイスラエルの例を上げ、これらの国でブロックチェーンの活用が進んでいるのは、国が不安定で、職や人の流動性も非常に高いため、人や国家に依存せず、安定した仕組みが必要だからだと指摘。日本も、今後確実に流動性が高まるなかで、信頼性を担保するためにブロックチェーンを活用できると話した。

最後に、モデレーターを務めた、「ミス・ビットコイン」の愛称で知られるグラコネの藤本氏は、「ブロックチェーンに関わっている人たちは、お金儲けより、人を幸せにしたり、社会の課題を解決したいという意識がとても高い。日本でも、もっとこの業界が盛り上がってほしい」と語った。

ブロックチェーンの聖地へ

TOAの発祥の地であるベルリンは、世界のなかでもブロックチェーンのハブとして注目されている都市だ。世界的にも有名なブロックチェーンのスタートアップが拠点を置くだけでなく、同領域を盛り上げようと、ブロックチェーンに特化したコミュニティやコワーキングスペースが生まれている。

今回のTOAワールドツアー東京に続いて、6月19日から22日、ベルリンでTOAが開催される。DIGIDAY[日本版]の関連会社、株式会社インフォバーンでは、TOA本国開催に合わせて、TOAとベルリンのエコシステムを体感してもらえる視察ツアーを実施する。詳細は、TOAの公式サイトより、確認してほしい。

Written by 亀山愛
Photo by インフォバーン