D2C の新トレンドは、他ブランドとの「提携」サービス: 典型的なのはマーケットプレイス構築

デジタルネイティブの消費者向けブランド各社のあいだで、持続的に成長していくために主力商品以外のラインナップを販売する取り組みが行われている。

最新の例が寝具のオンライン販売を行うブルックリネン(Brooklinen)だ。同社は「スペイシーズ(Spaces)」という、紹介した商品をユーザーが購入できる新たなサイトを発表した。同サイトではブルックリネンだけでなく、フロイド(Floyd)のベッドフレームやボンババード・セラミックス(Bombabird Ceramics)の花瓶など、10を超えるほかのD2C企業の製品も扱っている。これによってブルックリネンは研究やデザインに投資せずとも商品ラインナップを増やすことができる。ほかのブランドにとっては、成長を続ける人気企業と提携するチャンスとなっている。

デジタル企業の買収コストは高騰を続けているものの、D2C企業の成長が頭打ちになるケースもまた少なくない。そんななか、ブランド間の提携と、マージンのより小さいサービスを模索しつつ、これまで力を注いできた製品からの脱却を目指すD2C企業がにわかに増えている。

たとえば、化粧品ブランドのグロッシアー(Glossier)は犬専門のペットサービス企業バーク(Bark & Co.)と提携を、洗濯用品を扱うフレイ(Frey)は寝具ブランドのバフィ(Buffy)と提携中だ。極端な場合、レジデント(Resident)のようにホールディングカンパニー的なアプローチを取る場合もある。同社が傘下に収めるブランドはネクタースリープ(Nectar Sleep)やドリームクラウド(DreamCloud)、アワラ(Awara)、レベルスリープ(Level Sleep)、ウーブンリー(Wovenly)、バンドル(Bundle)など、多数に及ぶ

ブランド間提携の好機

ブルックリネンは2019年について黒字および1億ドル(約108億円)の収益達成の見込みであると発表しており、いまを実験的な企業間提携を行う好機と捉えている。スペイシーズの収益はブランド間で分配される。CEOのリッチ・ファロップ氏は、「在庫さえあれば必ず購入でき、独自の包装で発送する」と語っている。ベッドフレームなどの大型商品は提携ブランドから直送される。購入プロセスはすべてブルックリネンのウェブサイトで行われる。「会計まですべてを同サイトで行う」と、ファロップ氏は語る。

コマースエージェンシーのBVアクセル(BVAccel)のCEOマイケル・キャシディ氏は、クライアントとともに来年もっとも力を注いでいくのがブランド間提携だと明かしている。同氏は米DIGIDAYの兄弟サイトのモダンリテール(Modern Retail)に対し、「合理的な選択だ」と述べている。「クライアントの多くが野心的になるあまり、取り扱う商品を掘り下げることなく手を広げていったケースをたくさん目にしている。重要なのは自分たちが得意にしていることを深く掘り下げて、そこから冷静な洞察と優れた創造性を発揮してどう手を広げるかを見出すことだ」。

キャシディ氏はブランド間でより簡単に提携できるようなサービスの提供をはじめている。BVアクセルはShopify Plus(ショッピファイプラス)のクライアントを抱えており、「ブランド間提携を促進する方法を把握するためAPIの制作をはじめた」という。

単独成長が難しくなった

モダンリテールが9月に報じた通り、グロッシアーはペット商品企業のバークと提携を発表した。また寝具商品を扱うエイトスリープ(Eight Sleep)とグラビティプロダクト(Gravity Product)は共同販売を発表している。こういった例から汲み取れるのは、D2C企業が単独では成長できないという現状認識だ。特にデジタルのカスタマー獲得ツールに依存しているブランドに、この傾向が顕著となっている。

ベンチャーキャピタル、レアラー・ヒプー(Lerer Hippeau)でプリンシパルを務めるアンドレア・ヒプー氏は「Facebookを使えば3000万ドル(約33億円)から5000万ドル(約54億円)に売上を伸ばすことはできる」と語る。「だが、巨大で持続可能な企業は、デジタルだけに依存していては作り上げられない」。多くの場合、ここで求められるのが実店舗を展開することによる確固としたプレゼンスの発揮だ。だが小規模ブランドのなかにも、戦略的提携によって少しずつデジタル収益を増やそうと試みる企業が存在する。

ブルックリネンのファロップ氏は、これについてD2Cブランド各社が台頭してきたことで必要となった大きなトレンドと位置づけている。「D2Cブランド全社が成功するのは不可能だ」と、同氏は語る。「そこで志を同じくするブランド間で、こういった統合が行われるのだ」。

D2Cブランドとしての矛盾

スペイシーズにおける各ブランドの提携は、カスタマーからのフィードバックを取り入れつつ、大規模な投資なしに新たなコンテンツを作り上げるという一例だ。ブルックリネンはオンラインのレビューに加え、ポップアップストアでカスタマーから直接話を聞くことでベッドと関連した商品の需要を確認できたという。「『このヘッドボードが大好き』であるとか『この目覚まし時計は素晴らしい』といったご意見をたくさん伺えた」と、ファロップ氏は語る。こうして「志を同じくするブランド」の商品を取り揃えるというスペイシーズの構想が出来上がったという。

ここで皮肉なのが、D2Cブランドはカスタマーへ直接届けることが特色の企業であることだ。D2Cとは小売チャネルを避ける企業を指す用語であり、消費者と1対1の関係を築く企業だ(そしてファーストパーティデータが豊富な企業でもある)。スペイシーズはブルックリネンのブランドイメージを保つように作り上げられており、全体的な見た目は同社のイメージを崩さないものだが、D2C企業のあり方から外れたモデルであることは興味深い点といえる。

ブルックリネンにとって、こういった見た目やカスタマー1人ひとりとの繋がりはスペイシーズの核となる要素だ。「基盤となっているのはブランドである」と、ファロップ氏は語った。「マーケットプレイスはブランドの上にこそ成り立つ」。つまりブルックリネンは寝具会社の枠にとどまるつもりはなく、カスタマーにもただの寝具会社ではないというイメージを植え付けたいのだ。

「カスタマー獲得こそ問題だ」

もちろんこういった取り組みがリスクになりうるブランドもある。「企業にとって、他社に自分たちの商品やサービスを販売させるというのは大きな挑戦だ」と、キャシディ氏は語る。

だが、ヒプー氏は、ブランドが協力してお互いを活気づけ合うことは、スタートアップを悩ますより大きな問題への解決策になりうると分析している。確かに商品ラインナップの幅を広げることは重要だが、それによって新規カスタマーがすぐさま自分たちの商品を買ってくれるとは限らない。ヒプー氏は次のように指摘している。「いま問題となっているのは商品の問題というよりカスタマー獲得の問題だ」。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)